ところでどのぐらい強いんですか?

「父上。今日もありがとうございました」


「あぁグリント。しっかりと休むように」



 ハイム王国王都、新ラウンドハート邸……グリントとローガスが朝の訓練を終えた。

 オリビアとの件での罰は領地没収に実質的な子爵への格下げ。おかげでグリントの縁談も消えるかと思われた。

 だが縁談相手アノンの父、エイドが娘の婚約を取り下げることは無かった。



 朝の訓練を終えたグリント。

 彼にとっては毎日のステータス確認は日課だった。




 グリント・ラウンドハート


[ジョブ] 無・ラウンドハート家次期当主


[レベル] 5



[体 力] 220


[魔 力] 124


[攻撃力] 125


[防御力] 90


[敏捷性] 41


[スキル] 聖騎士、防御力成長率UP




「父上。また少しステータスが上がりました」


「素晴らしい。そのまま継続して天騎士を目指すのだぞ」


「はいっ!……ところで一つお願いしてもよいでしょうか」


「なんだ?」



 グリントがローガスへと、少し期待したような顔をする。



「父上のステータスを見せて頂きたいのです」


「ほう、確かに今まで見せたことは無かったな」


「はい!父上のようなハイムでも指折りの騎士のステータスが気になって仕方がないのです」


「ならば見せてやるとしよう。私ぐらい超えなければ天騎士にはなれぬだろうからな」




 ローガス・ラウンドハート


[ジョブ] 大将軍


[レベル] 55



[体 力] 1490


[魔 力] 811


[攻撃力] 653


[防御力] 421


[敏捷性] 317


[スキル] 大剣技,肉体強化,指揮



 そうしてローガスは自らのステータスを初めてグリントへと公開した。

 ハイムにおいて最強格の騎士、それは大陸でも指折りの強さを持つ者ということだ。

 そんなローガスのステータスを見たグリントは、父への尊敬の念を更に持つこととなる。



「すごいです父上!こんな高いステータス……これは俺ももっと頑張らなければなりませんね!逃げたアインお兄様なんか相手にならないほどに」


「あぁそうだな。お前がもっと頑張ることで天騎士への道も開けてくる。いずれ聖騎士にもつけるだろう、そうすればグリントの本当の力が発揮される。私はそうなることを待っているぞ」


「はいっ!」




 *




「お義母様。お義母様が仰る通りあちらは仕掛けてこないのですね」


「そうよ。あまり外では言えないけれど最初から馬鹿な話だわ。態々あの国の力を借りなくとも、私たちはすでにこの大陸の王だというのに」



 会話をしているのはアルマにイシス。そのテーマはオリビア達、イシュタリカについてだった。



「ですが万が一のことがあって、戦争を仕掛けてくるというのは」


「ないでしょうね。あの国では初代統一王の言葉はそれこそ神の声の如き重さがあるの。あの国とハイムは経済的な取引はしていない、だからこそできることと言えば、入港を禁止するとかそういうことぐらいよ」



 アルマはオリビアの件を聞かされていなかった。アルマは男爵家の二女で、第二婦人として送り込まれてきた身であったため、密約などが漏洩することを考え伝えられていなかった。

 ラウンドハート家でオリビアの件を知っていたのは、イシスとローガスの二名だけだったのだ。



 そのためアルマとしては、オリビアのことを知った時自分は死刑にでもなるのではないかと恐怖していた。



「ですがお義母様。入港禁止にされるのでは我々としてもいずれ不利益がでるのでは……」



 アルマはラウンドハート家の中では、最も危機感を感じていた。自分もオリビア達に冷たくしていた人間であり、そしてイシュタリカと言えばハイムでは相手にならぬほどの強国。ローガスやイシスの前では口にすることはできないし、自分の目でイシュタリカを見たことがあるわけではない。

 だが今まで学んできた知識から考えると、ハイムなんて数日あれば滅ぼされるだろうと考えていた。



「確かにそうね。否定はできません……けれどどのような結果であったにしろ。アインをラウンドハートの次期当主にあてることはできませんでした。なにせ産まれ持ったのがあれだったのだから」



 毒素分解。その能力はハイムでは林などに居る蛇からの毒を解毒したり、軽い食あたりを治すのによく使われていた。そのためEXとついていようとも、イシスとにとってはそんなものかとしか考えられなかった。

 そしてそのアインが武の名家ラウンドハート家の当主になる、そんなことはあり得なかったのだ。



「そう、ですね」



 産まれ持ったスキルが重要視されるハイム。だからしょうがなかったのだと自分を納得させようとするアルマ。

 不安だったからこそ、グリントが立派な聖騎士……天騎士になることをアルマも強く応援していた。




 *




「はぁ……はぁ……で、殿下っお相手ありがとうございましたっ」


「あぁありがとう。疲れたでしょう、横になってくれていいよ」


「失礼っ……お言葉に甘えさせていただきます」



 アインは城内にある騎士の詰め所、そこに隣接している訓練所でイシュタリカの騎士と訓練をしていた。

 これはロイドが最初に始めさせたことで、最初はアインは転がされてばっかりだった。



「お疲れ様でございますアイン様。もう一般の騎士では相手になりませんね」



 試合が終わったアインにクリスが声をかける。この形式の訓練はロイドが始めたことだったが、クリスも指南役やアインの安全を守るために参加していた。



「俺ももうすぐ父上に勝てますかね?」



 本当ならアインは、ローガスのことを呼び捨てにしたかった。だがなんとなく呼び捨てをするには抵抗がある。

 アインがこんなことを考えられるようになったのも、イシュタリカへ来てこちらの家族と生活しているうちに、ラウンドハートへの思いの多くが吹っ切れていたからだ。



「さぁどうでしょう?やはり実際に戦わなければわからないですからね。ステータスが高ければ勝てるというわけでもありませんし」


「そうでしたね。とはいえもうあの人たちと会うことがあるとは思えませんが」


「何があるかわからないものですよアイン様。さぁこれで汗を拭いてください」



 ふわふわに乾いたタオルを手渡す。ハーブのような爽やかな香りがアインの疲れを癒した。



「ありがとうクリスさん。そういえばクリスさんは父上に勝てる……のかな?」


「それを聞いちゃいますか」



 少しだけばつの悪そうな顔をしてクリスが返事をする。



「聞いちゃいけなかったですか」


「あぁいえ駄目という訳ではないのですがなんと説明すればよいのかと思いまして」


「……どういうこと?」


「うーん。それじゃ私のステータスお見せしますね?お見せしたことなかったですよね?」


「はい。俺がステータス公開しただけで、今までずっと見せてくれませんでしたよね」



 アインが恨めしそうな顔をするが、クリスは苦笑いをする。

 見せる気がなかったのではなく、純粋にその機会を見失っていたのだ。


「良い機会ですから。是非ごらんになってください」



 クリスティーナ・ヴェルンシュタイン


[ジョブ] 聖騎士


[レベル] 81



[体 力] 2290


[魔 力] 3110


[攻撃力] 574


[防御力] 299


[敏捷性] 813


[スキル] 聖剣術,風魔法,精霊魔法,



「やだ強い」



 ついつい変な口調になってしまったアイン。だがそうなるのも仕方がないステータスのクリスだった。



「私が勝っている部分もありますが、ロイド様は総合でならもっと高いですよ」


「化け物ですか」



 クリスがくすくす笑いながら話し続ける。



「ふふ……そう思われても仕方がないですよね。あの方は恐らくイシュタリカでは一番努力して強くなった方ですから」


「たしかにそうでしたね。それで実際父上相手に勝てるんでしょうか」


「っと失礼しました。私のステータスは見て頂いたと思いますが。おそらく攻撃力とか防御といった肉体の強さでは負けてます。とはいえ私には素早い動きや風魔法があるので……はっきりいうと、勝負らしい勝負にならないのです」



 アインはクリスのステータスを見て驚いていたが、一言に素早さと風魔法があるからといわれても納得はできない。



「たぶんローガス殿では、私を目で追うのがやっとじゃないかなって……だから簡単に倒せると思いますよ」


「随分と適当な」



 答えは割と適当な内容だった。決してポンコツというほどではないが、クリスもだんだんとその本性がアインの前でも出てくるようになっていた。前ならば今回のことも、もう少し言葉を加えて説明したと思う。

 彼女が今口にしたのは、『やっとじゃないかなって』いう言葉。なんとかなるよという気持ちが表に出すぎていた。

 実際戦わないと分からないと口にしていた癖に、自分は倒せるという所にクリスのちょっとした自信を感じた。



「ロイド様みたいな強さがあれば目で追えますから。対応されちゃいますけどね」


「なるほど。ところで聖剣術っていうのを初めてみたんだけどこれって聖騎士とは違うんですか?」


「あぁ私聖剣使えるんですよ。使い方になれてきたらスキル頂戴してたんです。魔剣とか別の系統でも、使い方が上級であれば恐らく手に入るはずです」



 あっさりというが、聖剣があるらしい。クリスが言うには聖剣の強さを引き出せる者、扱える者の証であり、その力を引き出しやすくなるという。決してこれがなければ聖剣を手に取れないという訳ではなく、ただ持っているだけの切れ味が良い剣となるだけ。



「俺もいずれ何か自分の武器が欲しいですね」


「そうですね。暗黒騎士という希少な……いえ、人に宿るはずのないスキルなのですから、それに合わせて武器を考えてもいいと思います」


「やっぱり魔剣とかそういうのですか?」


「聖剣持っていたデュラハンも居たらしいですよ。本で読んだことがあります」



 なんでもありじゃねえか。




 *




 所変わってカティマの研究室。

 城の地下にあるこの部屋では、アインとカティマの研究や議論が行われる。



「つまり魔石からスキルを吸収できるケースは、稀といってもよいと?」


「そう思うニャ。アインこないだグリーンワイバーンの魔石も食ってたニャろ?」


「あの不味いやつね。ちゃんと食べきったよ。ステータスもHPがちょろっとあがってた」


「ステータスの上昇についても仮説があるニャ。合わせて説明していいかニャ?」


「いいニャ」



 魔石から吸収できるスキルやステータスについて、大きな隔たりがあった。

 スキルに関して結論を言えば、デュラハン以降1つも取得はできていない。

 ステータスの上昇値に関してもやはり上下が激しかった。



「真似するんじゃニャい。ほいじゃスキルから。グリーンワイバーンはワイバーンの中では確かに雑魚ニャけど、それでも腐ってもワイバーン種ニャ。飛行とかブレスとか、いろんなスキルもってるニャ」


「でも一つも手に入っていないと」


「うむ。だからこそ考えるのは、魔石の魔力量と生命力ニャ!」


「どういうことそれ」



 カティマがニャーニャー仮説を打ち立てる。



「デュラハンの魔石に込められていた魔力量と生命力は膨大ニャ。だからこそスキルが取得できたと予想するニャ」


「つまりそれって、弱い魔物の魔石吸ってもスキルはとれないってことじゃ……」


「というわけではいこちらニャ!ポケットマネーでブラックフオルンの魔石を10個用意したニャ!」


「ところでそのブラックフオルンとはなんですかね」



 猫が取り出したのはブラックフオルンという魔物の魔石。こげ茶色をしたそれを10個ほど取り出した。



「フオルンっていうのは言葉話す木の魔物ニャ、頭良くて人に害はニャいから倒さニャいけど、ブラックフオルンは人を騙して栄養にして食べちゃうニャ」


「なるほど。悪いフオルンってことか」



 カティマが説明するには、ブラックフオルンもフオルンも、移動する際に霧を発生させて移動するという。

 広い場所や森のような場所で発生させればかく乱の効果はあるが、近場で目に見える場所でやっても大した効果ではないという。



 そのブラックフオルンの魔石からは、芳醇なクルミを思い出させる香りがアインには感じられた。

 匂いだけでも濃厚で、旨味が感じられる香りだったが、ただ一つだけ問題があった。



「カティマさんちょっといい?」


「ニャ?」


「ブラックフオルンの魔石、クルミの香りがしてくるんだけど……俺クルミ好きじゃないんだけど」



 アインはクルミが好きではなかった。むしろ嫌いよりといっていい。触感と香りがどうしても受け入れがたかったのだ。アーモンドとかは好きだからこれはもう好みです。



「ドライアドのハーフのくせになに言ってるニャ……」


「いやあドライアドだって木の実ばかりを食べているわけじゃ……」



 水を吸えば土から栄養も取る。そして人型となれば普通の食事も食べる。そう考えると別に特別ではなかった。



「それなりにお金かかったニャ。無駄になるから食え」


「ちなみにおいくらかなって」


「ブラックフオルンの魔石は高いニャ。一個9万Gするから全部で90万Gニャ」



 アインがマジョリカの魔石店で買った魔石は、3万Gと5万2千G。そして謎の魔石30万G。謎の魔石はひとまずおいておくとして、ホワイトバイソンとグリーンワイバーンの魔石では太刀打ちできない値段だ。



「さすがにそれは悪いから吸うことにします」


「一気に行くニャ」



 覚悟を決めた。味わう暇がないほどの速度で吸ってやると考えたのだ。

 そしてアインは魔石に手を伸ばし吸収をはじめる。



「すっごい濃い味……俺じゃなかったら喜ぶのにっ」



 アインが感じたのはクルミの濃厚な香り。

 これでケーキなどのお菓子を作れば評判だろうなと思うが、クルミが苦手なアインにとってはそんなこと全く関係ない。




 *




 そうしてすべての魔石を吸い終わったアインは、少し元気を失ってしまっていた。好きじゃない味をたくさん吸ってしまったからだ。



「グリーンワイバーンの魔石も、なんか臭みありすぎて美味しくなかったけど。苦手な味をこんなに吸うのは苦痛でしかなかった……」


「お疲れ様ニャ。ほいリプルモドキ」



 カティマに渡されたリプルモドキの魔石で口直しをする。一先ずの実験は終了した。



「はぁ癒される。美味しい」



 アインはリプルモドキの魔石が一番のお気に入りだった。味がよいのに値段も安価で、手に入れやすいのも高評価。



「アイン、ステータス確認するニャ。スキル増えてるかニャ?」



 アインはそう言われてステータスを確認する。HPが100増えて1355になっていた、ステータスの上昇はそれだけだったが、濃霧というスキルが増えているのを確認する。



「濃霧っていうのが追加されてる。成功だね」


「それがブラックフオルンのスキル、用途としては目くらましニャ。どうやらスキルもステータスも実験は成功だったようだニャ。中庭にでも使って悪戯してやるといいニャ」



 カティマはアインのステータス、スキルを聞いて予想通りだったといった。今まで不思議だったことだが、ようやく魔石吸収の内容が少し明らかになる。



「もしかしてスキルだけじゃなくて、ステータスも魔石の魔力量と生命力が関係するってこと?」


「今の実験でわかったのは、一定の魔力量か生命力が用意されてないとスキルもステータスも構築しきれないってことニャ。一定のラインまでこの二つを用意できニャいと、ただの栄養補給みたいなものニャ」


「ただのグルメか」


「そうニャ。とはいえアインのステータスも関係あると思うニャ。ステータスが上がれば上がるほど、必要な量もあがるニャろうし。今まで吸えた魔石も、いずれはスキルとステータスを吸収できニャくなると思うニャ」



 カティマがこう説明した。

 つまり魔力量や生命力が多くない魔石なら、同じ魔石の数を増やして疑似的に魔力量を増やす。そうしなければステータスにもスキルにも吸収した効果がでないということ。

 また、アインが成長するにつれて、多くの弱い魔物やそれまで吸収できていた魔物たちのスキルやステータスも吸収ができなくなるだろうとのこと。



「意外とコスパ悪い部分あるんだねこれって」


「そりゃアッサリなんでもかんでも吸収出来たら本当の化け物ニャ」



 アインはカティマが言うことに納得した。アインはデュラハンの魔石を吸収したため、人間離れした能力を得ている。だがずっとこんな風に無限にステータスやスキルを増やすのは話が良すぎた。



「じゃあ逆に多めに魔石を吸ったら、その分吸い取れるスキルとかステータスも増えるのかな?」


「うーむ……ステータスの伸びは大きくなると思うニャ。でもスキルは……あまり期待しない方がいいニャ。龍種みたいな強い種族たちなら複数スキル得ることもあると思うニャ。前はリプルモドキの魔石とかを吸っててステータスは向上したニャろ?でもスキルはない。だからこそスキルのほうが構成に必要な要素が多いと思うニャ」


「じゃあすぐにはわからないね」



 とりあえずこの件に関しては後ほど機会があれば実験してみることとした。

 ドラゴンなんて言われても、そんな種族の魔石をいくつも用意できるわけもなく、今結論を出すのは断念した。



 コンコンコン。



「クリスです。王妃様とオリビア様より、お茶へのご招待でございます」


「ちょっと疲れて来たし俺は休憩しようかな。カティマさんはどうする?」


「私はもうちょっと考えるニャ。アインが買ってきたこの魔石も調べたいしニャ」



 そういってカティマが見るのは、アインが買ってきたケースに入った赤黒い魔石。

 買ってきた日以来、アインは声のようなものを耳にすることは無かった。

 カティマとしても研究意欲を揺さぶられるようで、とりあえずこの魔石はカティマの研究室に置いて管理していた。



 アインはカティマへとわかったと返事をして、クリスについて王妃とオリビアが待つ場所へと向かった。




 *




 アインが去った後の研究室。カティマは本を広げ調べごとをしていた。

 あれでもないこれでもない……魔石の特徴を調べていた。確かに似ている魔石は発見できた、だがそれは巨大な龍種のもので、子供の魔石だろうともこのサイズではあまりにも小さすぎるため除外する。



「むむむ……」



 もう一つ、人を呪うかのような行動をとる魔石なんて記録はなかった。

 だからこその一つの仮説を打ち立てる。



「……デュラハンと同等クラスの魔物で、魔法に特化?呪いのようなものならばアンデッド系……?」



 魔法に長けて自らの意思を保てるほどの力があれば、心のようなものを少し残せる可能性があるのではないか?そう考えていた。

 とはいえ結局のところ魔石は死んだ魔物や異人から取り出されたもの。それに心が残るという仮説も、研究を生業としているカティマにとってもあまり信じられなかった。





 *




 クリスに案内され、お茶をしている場所へと来たアイン。



「お邪魔しますね」


「あらアインいらっしゃい」


「ようこそアイン君」



 お茶をどうか?と誘われ、着いた先に居たのはアインの母オリビアと祖母のララルア。

 ララルアはシルヴァードの妻、つまり王妃であり種族はダークエルフのハーフだった。

 今だ若々しく美しい、シルヴァードの唯一の妻だった。



「お誘いありがとうございます」


「こっちにどうぞアイン君」


「では失礼しますね」



 そう言われ、アインはララルアの隣に座った。ララルアが居る場合は、アインは隣に座ることが良く多い。

 彼女としても初孫であり、アインのような子は彼女にとっても好ましかった。



「アインは訓練の後何をしていたのかしら?」


「カティマさんのところで実験のようなものを。俺の吸収についていろいろとわかりましたよ」


「あら本当アイン君?よかったら私たちにも教えてくれないかしら」



 ララルアにそう言われ、アインは先ほどわかった事柄を説明する。

 オリビア達にとっても珍しい事実だったため、会話は盛り上がった。



「そうなの……それじゃあ、欲しいスキルがあったとしたら、その魔石をたくさん用意しないといけないのね」


「ねぇアイン。必要な数はわからないのかしら?」


「多くの実験をすれば分かると思います。でもやっぱり実験にも魔石がたくさん必要となりますので」


「そう簡単にできることではないのね」



 今回一度の実験でも90万Gという金がかかったのだ。仮に同じ金額で10回やれば900万G、毎回どの程度の量を吸えたかを調べたとしても、スキルやステータスを構築するための"一定のライン"は簡単には見つからないだろう。

 アインが強くなるたびに調べなおすのも非現実的だ。



「こればかりは自分で経験してなんとなくのラインを学ぶしかない気がします」


「そうね。ステータスで分からないことなんていくらでもあるし、頑張ってねアイン」


「そうよステータスだわ、アイン君いい話があるの」



 ララルアがいい話があるといい、アインのほうを見て笑顔で話しかける。



「いい話、ですか?」


「アイン君も大きくなってきたもの。きちんとした武器を持たせてもいいってロイドから聞きましたよ」


「本当ですか?ずっと木剣だったので次の段階に行けるなら嬉しいです!」



 アインはまだ年齢が低いため、その分身長も決して高くない。そのため今使っているのは木でできた剣だった。

 そんな中、きちんとした武器で練習してもいいと言われて嬉しくないわけがない。



「とはいえまだ体も小さいですし、短剣とかからですかね?」


「そうね。まだ普通の剣だとアイン君は持つだけで精いっぱいだと思うわ。だから……宝物庫で丁度いいものがあったの、楽しみにしていてね?」


「お母様にも剣を持ったカッコいい姿を見せてくださいね?」



 唐突な話だったがアインは嬉しかった。

 木剣からきちんとした武器を許してもらえたのが、自分の成長を認めてもらえたようで嬉しかったのだ。



 ララルアから今度その短剣をあげると言われ、アインはその日が待ち遠しくて仕方がない。

 だがまずは、短剣を探してくれた祖母にお礼を言うことにした。



「ありがとうございますお婆様。お母様にも私の成長をしっかりと見てもらいますからね!」




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