第148話 お門違いな悲憤慷慨 7

「お嬢様方ーーー!!」


 教えられていた寮の部屋のドアをノックし、応えがある。

 ドアを開いてくれたレティシアづきの侍女、カティアが驚いた顔で二人共揃っていると教えてくれたのでスサーナはぴゃーっと声を上げながらお嬢様達のところに走った。


「スサーナさん!?」「スサーナ!?」


 二人共くつろいだ室内着を身に着け、何か大判の本を読んでいたらしい。

 驚いた顔で二人立ち上がり、椅子を一つ引いてスサーナに勧める。


「うーっ、実は折り入ってご相談がありまして……もう本当にどうしたものか!」

「どうかなさったの? 貴族寮の中に来るなんてよほどなにか大変なことが?」

「マリ、お話を聞くのは少し待って、カティア、なにか飲むものを用意して頂戴」


 レティシアの指示ですぐにカティアがお茶を淹れてくれる。

 硬水のせいか飲み慣れた味とは違ったが、スサーナ的に気分を落ち着ける力の強いベニト茶を啜ってスサーナは少し和み、それから実はと今日あったことを話しだした。



 話をひとしきり聞いて、レティシアもマリアネラもなんとも言い難い顔をしている。


「それで、その、えーとガラント公令嬢様がどうしても私をお雇いになるつもりらしくて……」


 池に落ちた猫みたいなしょぼくれた顔をしたスサーナにマリアネラがううんと声を上げる。


「落ち着いて、スサーナ。とりあえず整理してみましょう。ええと、ガラント公令嬢は、スサーナを庇ってくれるつもりでお雇いくださるというのですね」

「はい。」

「それは、スサーナさんが下級貴族のあの面倒くさい方々にいじめられていると思っているから、と」


 レティシアが指を折りながら確認する。


「多分大体は、はい。そうだと思います。」


 面倒くさい方々、という言い方に実感が籠もっているようで、あっ厄介なファン、という感想がスサーナの脳裏を過ったが、とりあえずそれは後においておくことにする。


「それはそれとして、実際の事の元凶は商家の男子生徒で、ウーリ公ご令息がお目を掛けられているそのミアさんに懸想していて、スサーナが彼女をいじめていると勘違いしたせいだ、と。」

「はい、そうです。」

「スサーナさん、お聞きしますけど、そのクラスの男子の仕業だということは申し上げられないのですの? それをご説明してお気にかけていただくようなことはありませんと言えばそれで済むのではないかしら」

「考えてみたんですけど、なんだかそういうことに厳しそうな方のような気がするんですけど……すごい処罰とかされちゃったりしませんか」

「それは……そうですわね。ガラント公ご令嬢はお父上譲りの心ばせをお持ちだと、ええ……」


 言ってお嬢様達はもにゃもにゃと目を見合わせた。どうやら噂の数々が脳裏をよぎっているようだった。

 あっやっぱり正義!って感じの人なんだ。とスサーナは思う。


「……そこまで庇ってあげることはないのではないかしら。理由はどうあれスサーナさんに酷いことをしたのは間違いないのですから、もう首一つ程度は自業自得と割り切って……」

「首……! うう、でも、彼のやったことももとを正せばファンクラ、いえ。見守る会だかという集まりの方々がミアさんを制裁しなければ起こらなかったことのわけで……ことの穏便さには差がありますけど、立ち位置としてはそう離れたところに居たわけでもないと言いますか……」

「ああ、いじめた方々のことをウーリ公令息に言いつけようと考えていたから立場は似たようなものだと?」

「マリ、今のでよくわかりましたね」

「合ってますマリアネラ様。ええと、私ももっと怒っていたらあの人達の足を引っ掛けるぐらいはしていたかもしれませんので……。ですのでいきなり制裁されて退学とかもっと酷いこととかは可哀想かなと思うんですよね……。ご実家もきっと多額の入学金を払って入学してきたのに、そんな事で退学……もしかしたら実家は貴族に睨まれて……なんてことになったら正直その後まともに生きていける気がしませんもん。嫌です、私そんな他人の人生を背負って生きて行きたくないです!」


 背中の毛を逆立てたスサーナにはい落ち着いてとマリアネラが砂糖菓子マサパンを差し出す。

 もくもくと齧ってお茶を飲み込んだスサーナのカップに、即座にカティアによってお茶のおかわりが注がれた。

 一気飲みしたスサーナははあっと息を吐く。


「それにクラスメートがそういう事で罪になったらその後のクラスも絶対大変なことになりますし、私だって居づらいですよう。ミアさんだって絶対責任を感じるに決まってますし……」

「なるほど。じゃあその理由でお断りは出来ませんのね」


 レティシアがゆっくりと繰り返し、おっとりと頷いた。


「スサーナさんは事を表沙汰にしたくないのですわね。その男子の事は穏便に済ませたい?」


話の論点が少しずれた気はしたが、目先の悩み事に呻いているスサーナはそれを看過する。


「はい、正直なんとか誤解を解いて何もなかったことにして済ませたいです。でも、あの方に雇っていただくと、それも叶わなさそうというか……」

「何故ですの? ガラント公令嬢は確かに苛烈な方ですけど、スサーナさんが教えなければ関わっては来ないのではなくて?」

「えっ? それはええと、こっちの問題、と言うか、雇われたとわかったら彼のほうに貴族のいじめっ子とは無関係って言っても信じてもらえなくなりそうだから……?」


 返答したスサーナにマリアネラが首を傾げる。


わたくし達にスサーナが雇われていると言うだけでそんな勘違いをする方が、貴族のどういう方にスサーナが雇われているか気にするかしら」

「ううん……あの方は制裁しようとした方々に呼ばれてきたので関係ある、という立場で……でも、お嬢様達はあの人達と関係は無いわけですよね。それで、お嬢様達は関係ないから、で押せるかと思っていたんですけど……」

「スサーナ、その方、そう言われて信じるでしょうか。わたくし達も彼らと同じ教室で学んでいるのですわ。接点がないと思っていただけるかしら……。」

「スサーナさん、落ち着いて。ガラント公ご息女が制裁しようという時に呼ばれてきた、ということもその方にはわかって? それはあの時スサーナさんが連れて行かれたところに居る方にしかわからないのではない?」

「あ」


 スサーナは目をパチクリした。

 そういえばそうだ。

 お嬢様達は、ああ、この子実はいっぱいいっぱいなんだな、と察したような目をしてスサーナの前の皿に砂糖菓子をザラザラと足した。


「ええと、そう言われてみればそうですね……あとで調べたらガラント公ご令嬢のことは解るかもしれませんけど、今解っているかって言うと解ってないかもしれません。貴族の女子の知り合いがいるとは思えませんし。……ええと、あと、お嬢様達が関わっていない、っていうのはあの子が信じるかどうかに掛かってますね……」


 悪魔の証明、というやつだ。スサーナはお嬢様達がファンクラブ的なものに関わっていないとわかればそれでいいのではないか、と思ってはいたが、よく考えたら普段貴族に接点がない平民生徒の視点からすると全然未知の団体だ。女子ならまだ感覚でわかるかもしれないが、男子だ。彼にしてみたら判断材料が足りない。言われたことを信じるかどうか、みたいな話になるのかもしれない。

 最初から勘ぐっている相手がそれで信じてくれるかと言うと、NOである気がする。


「となると、ガラント公令嬢に雇っていただく話は、今は少し置いておいたほうが話がわかりやすいですわね」

「そう……ですね。」


 スサーナは頷いて砂糖菓子を齧った。

 そういえば寄宿舎では習慣的に朝食を食べず、今日はミアと一緒ではなかったし、お嬢様達がお嬢様達でヒソヒソするのに忙しかったせいで昼も一緒に取らず、放課後はあんな始末でおやつも食べず、当然夕食も今まで口にしていない。

 糖分が脳にじわっと効いて、ようやく頭が回りだした気がして、そういえば今日はちょっといつにも増して糖分が足りていなかったなあ、とスサーナは実感した。


「とりあえずスサーナさん、一番気になっているのはお話してくださった中でどの事ですの?」

「はい、ええと。その男子の誤解を解く、という問題ですね。ええと、誤解を解いて和解したらその後悪いこともないと思いますし、口裏を合わせて事故だったってことにも出来るんじゃないかと。ええと。事件にしないのは私だけでも出来るかなと思うんですけど、やっぱり軽挙妄動自体は反省はしてもらいたいですし。先輩とかの彼が素直にお話を聞きやすい相手を探すか、クロエさん経由で偉い教授の方々に諌めてもらうとか、を最初考えていたんですけど」

「ねえスサーナ、わたくし考えたのですけれど、誰か探すまでもなくそのミアさんに手伝ってもらう訳にはいきませんの?」

「ううん、ミアさんに説得してもらうということですよね。事の次第を話すとミアさんが責任を感じそうで……」

「なにも全部話すことはないのではなくて? そういう勘違いをされたので解消する手伝いをして、と言えば十分ではないかしら」

「……あ。」


 スサーナは本日二度目のあ、を呟いた。


「そ、そう……でしょうか。でも、今このタイミングで彼が勘違いしていて、なんて話を振ると花瓶のこととかも察されてしまいませんか」

「それは運ですけれど、もし察しても、さきほどスサーナさんが言ったように、その方が罪に問われて、自分のせいだったのかもしれない、って知るのと、これから酷いことにならないようにするために知るのだと辛さも違うのではないかしら」

「そういえばそうですね……」


 やることがあって知るのとまったく事が済んだ後に知るのでは確かにだいぶ気分も違う。

 未然に防ぐ、というような使命感は結構前向きな感情を誘発するのは確かだ。

 そのあたり、全く頭が働いていなかったなあ、とスサーナはしみじみと述懐する。

 最近自分で食事の面倒を見るようになった所為でものを食べることを忘れがちだが、あまり食べずにいるとそれはそれで良くないという事を実感したスサーナだ。


「その方、騎士になりたかったのでしょ? それは姫にお言葉を頂くのが一番ですわ。それで細かいことはきっと構わなくなるでしょう。ふふ、大抵の恋愛物語では姫君の言葉が何よりの財宝ですわ」

「ええレティ様。ただ、そのミアさんはその方の姫君になると決まったわけではないのですから、そこはいい具合に節度を持ってごまかしていただくのですわね」


 レティシアがうふふと悪い顔をする。

 それを受けてもともとそういう企みが好きな――去年の夏、その手のたくらみの結果スサーナを雇うというある意味蛮行を果敢に大実行したのが彼女だ――マリアネラが目を輝かせた。



 明日ミアと引き合わせてそのあたりの計画を練ろう、とお嬢様達と同意する。




 レティシアが椅子に座り直し、卓上で指を組んでさて、と声を上げた。

 そうするとなんとなく父親のセルカ伯に印象が似るなあ、とスサーナはなんとなく思う。


「じゃあ、あと半分。ガラント公ご令嬢に雇って頂く、という話ですわね。スサーナさん、さっきはすごくお嫌そうでしたけど、その男子に説明が難しくなる、というのはこの際問題にならなくなりましたわ。そうするとどうでしょう」

「どう、といいますと……」

「なにかお嫌なことはあって?」


 スサーナは目を瞬いた。


「ええと……偉い貴族の方に仕えられるとは思いませんけど、礼儀作法……お仕えの仕方……それは問題ないと言われてしまって……ええと。あ、そちらにお仕えするとお嬢様達と関わる時間が無くなりそうなのは嫌ですね。あと、自由時間がなさそうなのも嫌です。お偉い貴族の皆さんと同じ教室に行くのもちょっと……」

「まあ」


 自分たちと関わる時間が無くなると言われた所でお嬢様達は嬉しそうに顔をほころばせ、それからなんとも言い難い表情をしてお互いの目を見合わせた。


 レティシアが顎に指を当ててしばらく何か考えてからお茶を一口飲み、それから口を開く。


「ねえスサーナさん、お断りがし辛いお話なのでしょう。その男子生徒の制裁を避けたいならお断りが出来ない、そうですわね? じゃあ逆に考えてみませんこと? そのお話自体はとてもいいお話ではなくて?」

「ふえ」


 スサーナは情けない顔をして鳴き声を上げた。


「いえ、だって、お家のために色々な方と繋がりコネクションを作ると言ってらしたでしょう。上位貴族と知り合うのは手っ取り早い手段だと思うのだわ。普通は知り合おうとして知り合えるものではない方々ですもの。機会を逃すのは勿体無いのではなくて?」

「うっ……確かに言いました……。」


「上位貴族にお仕えして礼儀を仕込んでもらうのは、仕えびとになるなら一番いい手段ではありますわ。そういうお勤めの経験があればどこでもお仕え出来ると言いますの。……わたくしもそうしてどこか行儀見習いの先を探したこともありましたけれど、うまく行かなくて。」


 そう言ったのはマリアネラだ。

 下級貴族の家を継がない、結婚の口もない子女は上位貴族の使用人になるものもいる。それはそれで確かな勤め先を得れば堅実な生き方だ。

 もし学者の道が閉ざされても今了承しておけばどこにでも勤められる技能を仕込んでもらえる、というのはいい話では、とマリアネラはおっとりと解説する。


 スサーナはしおしおとなったが、言われてみれば確かにそのとおり。

 条件だけを考えるととても、はっきり言って破格に、スサーナが普通に考えれば望むべくもない好条件なのだ。

 ただ、えらいきぞくは怖く、自由時間は欲しく、平民生徒たちと仲良くしたくて、更に言えば現状、それなりに落ち着き出した環境を変えたくないだけである。


「自由時間は、流石に雇い人の契約をする時にお願いすれば考えてもらえるのではないかしら。下働きを雇うのとは違って、同じ学院の生徒だとわかっておいでなのですから。そういうお願いも出来ないような条件なのですの?」

「お願い……出来るんでしょうか」


 スサーナは考えても見なかった、という顔で目を瞬いた。

 そういえばこれまで自分で雇用条件を決めたことはないが、それは働いていたのがおばあちゃんのお店と、雇用条件を厳密に締結することもない、ふんわりと柔軟に日割りで行っただけお金を払ってくれたセルカ伯のお宅という場所だったせいだ。


「流石にご令嬢との口約束ではなくて、四人五人とはいえ大人の使用人がいるのでしょう? 使用人頭の役割の方もいるのではないかしら。ガラント公にお仕えしている方々ですもの。そこは抜かり無いはずでしてよ。学生身分の者を雇おうというのですから学院から苦情が来るようなやり方はしないはず。」


 お嬢様達の言葉にスサーナははたと気づく。そういえば大人は居るし、大人が居るのならそれは通常の雇用の形にしてくれるはずだ。

 なにしろあの大人の使用人たちはご令嬢個人に仕えているわけではなく、その親のガラント公の使用人のはず。ということはフリーダムなはずがない。

 エレオノーラがあまりにつよかった所為でそのあたりを完全に失念していたが、周りの大人は普通の常識的雇い人のはずなのだ。……多分。


「そう言われてみればそうですね……なんとなく生きていく希望が湧いてきました」

「生きていく希望とまで。 ……まあ、スサーナさんが一体何を一番重視するか、ということで考えてもいいのではないかと思うのだわ。」


 レティシアの言葉にスサーナは考える。一番何を重視するか。それは当然おうちと関わりなくおうちの人に心配されないように独り立ちして、同時におうちもいい具合に繁盛することだ。

 図書館で本を読むことが目的でもなければ、同級生たちと仲良くするのが目的というわけでもない。もちろん、それが出来ればより良いのだけれど。


「そうですね。ちょっと考えてみます。」

「ええ、ねえスサーナさん、ガラント公令嬢にお仕えすることになってもお勉強は付き合ってくださるでしょう?」

「一緒にごはんを食べるとか、お話をするのでもよろしいのですわ。スサーナにはクラウディオ様のお話を聞いてもらわなくちゃいけませんもの」

「いやそんな決まったことみたいに……あっ、マリアネラ様の大切な方のお話ですね。再会されたんですか!? 是非それは聞かせてください!」


 スサーナは全力で食いついた。




 表情が明るくなったスサーナを送り出して、レティシアとマリアネラは目を見合わせる。


「マリ、これで良かったと思う?」

「正直わかりませんわ。でも、最悪ではなかったと思います」


 レティシアはため息を付いた。


「お父様も性格が悪いのだわ。スサーナさんにはあんなに感謝していたのに、手駒として使おうだなんて。お家に帰ったら一番大事にしているお皿を粉々にしてやらなくちゃいけませんわ」

「伯の一存でどうにか出来ることではありませんもの……。ただ、伯父様もちゃんとスサーナのことは気にかけておいでですわ。嫌だったら逃げられるようにはしておいでですもの。だからどういうおつもりかはスサーナには説明されないんでしょう?」


 先日、王子様のことを書きおくった手紙の返事でスサーナには知らせぬようと注釈された部分を読んでから、多分そう遠くないうちにレティシアたちと共にやって来た少女が上位の貴族にだろうと言うことは彼女たちは予感していた。


 手紙にあったのはレオカディオ殿下が彼女をお望みになるかもしれない、ということ。そうなったらお前たちよりもあの子は上の立場になるだろうから驚かないように、ということ。ミランド公が後援したのはそのためでもあり、もしそうなったら彼の息のかかった貴族の誰か――中位以上の――が、彼女を養女にとあの子の実家に申し出るだろう、ということ。


 まさか女子であるガラント公の息女がスサーナを召使いにと言うとは思っていなかったし、王子様が后宮に求めるでもなくお友達と言い出すとは予想外ではあったが、レティシアもマリアネラも、上位貴族たちとスサーナを側近く過ごさせることは既定路線だと認識していた。


 国外への対外交渉を担うミランド公と、国内の秩序を保つガラント公はそれぞれ立場もそれなりに違い、利益の衝突もないでもないが、宮廷において協調路線を敷く家柄だ。派閥が大きく異なるということもなければお互いに思うところがあるというわけでもない。少なくともセルカ伯からは娘たちはその手の話は聞かされていない。

 彼らの手の届く子供世代は最初から幼馴染であり、がっちりと関係は固められている。二家の関係は良いと言えた。


 というわけで、スサーナから話を聞かされたレティシアとマリアネラはこれが予定の路線なのだと考えたのだ。それ故にスサーナに得を説いた。


「わたくしたちでも想像もつかないような玉の輿ではあるのですけれど」

「スサーナがその手の話が全然駄目だというのが心配ですわね。でも、誰かに恋をしているようなことがなくてよかったのかも」

「ねえマリ、王子様が本当にお友達止まりのお気持ちだったらどうします?」

「それならそれでわたくしはいいと思いますわ。そういうことはお二人の気持ちで起こることですもの」


 少女たちは頷き合う。下級とは言え貴族、この手の状況については覚悟をしながらも、友人には――しかもとても苦労をかけた友人だ――意に染まない目には遭ってほしくない。そんな気持ちでそっと共感しあい、しみじみと新しく入れた茶をそれぞれ口にした。


 その実、これがそのあたりに全く感知していないエレオノーラの独走で、いまごろ第四王子が予想外の事態を第五王子に連絡すべく、男子寮の窓をクライミングしているなどというオモシロ寄りの状況だということは彼女たちは知る由もなかったのだった。




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