38話 水族館デート


 時刻は午前十時。

 この時間に羽根牧駅から一つ隣駅にある水冨波みなとば水族館が開館する。

 この水族館は東京ドーム二つ分の広さがあり、海の近くに接して建てられているため、入り口にいるだけでも潮の香りを嗅ぐことができる。


 ゴールデンウィークというだけあって区内外から来る来場者の数は相応に多い。

 今回も現地集合の俺達は周囲の羨望と嫉妬の視線を浴びながらも入館の列に並んでいた。


「ずいぶん人が多いですね、司君」

「ゴールデンウィークとか連休シーズンは大体こんな感じに混むみたいだからな……イルカショーは昼の二時からだから、それまでは館内の魚を見て回る予定だ」


 そんな会話を交わしていると、俺たちの順番がきた。


「おはようございます! 本日はご来館ありがとうございます……あ、カップルですか!? 彼女さんすごく可愛いですね!」

「はぁ……ありがとうございます」

「じ、自慢の彼女……ですよ? あはは、あはは……」


 受付嬢さんが余計な勘違いをしていくが、本当の関係を説明するわけにもいかないため、特に否定せず笑って誤魔化した。


 館内に入って改めてゆずの服装を見てみる。


 今日のゆずの装いは鈴花がコーデしたものだ。

 フリルが段重ねになっている白のホルターネックタイプのタンクトップの上に、薄緑のバルーンスリーブのボレロを着ている。

 橙色のスカートはバルーンスカートと呼ばれる形状のもので、全体が風船のような形状になるように裾の部分を絞ったデザインになっていて、全体的にふんわりとした印象を受ける。


 女子の服の事はよく知らないが、鈴花がゆず自身にコーデポイントを説明しており、それを俺に説明するという形になった。


 組み合わせの説明を受ける前に全体的にふんわりしてると印象そのままを伝えたのだが……。


「評価のほうがふんわりしていて伝わりにくいですね……似合うか似合わないかの二択でお願いします」


 つまり、まどろっこしい言い方より、単純でいいということだ。


「あはは、まあそっちの方が分かりやすいよな……ゆずに似合ってるよ」


 俺がそういうとゆずは頬を緩めて朗らかに笑い……。


「ありがとうございます」


 と言った。

 

 歓迎会の時からたまにこうしてはっきりと笑うことが増えて来た。

 これが普段の日常指導の賜物なのだとしたら、これほど嬉しいことはない。


 美少女のゆずが笑うということは、当然周囲の視線が微笑ましいものに変わり……。


 ――スパァーン! 

 ――ドスッ! 

 ――パンパーンッ!


 なんか穏やかじゃない音が聞こえたのでそちらに目を向けてみると、どうやらほかのカップルの彼氏側が微笑んだゆずに見惚れて彼女を怒らせたみたいだ……。


 ……確かに恋人が隣にいるのに他の女に見惚れるのはダメだよな……反面教師として学ばせてもらおう……。

 ゆずが美少女だから仕方ないけどな……。



 館内を看板通りに進むと、水槽に様々な海水魚が泳いでいた。


「あ、このオレンジと黒の小さな魚、可愛いですね」

「(ボソッ)君の方が可愛いよ」


 おいこら定番のセリフを呟いた外野は誰だ。

 邪魔するなよ……。


「えっと、このプレートに解説が載ってるな、〝クマノミはクマノミ亜科に属する海水魚の一種です。約十種のイソギンチャクと共生できます〟か……」


 某ファイティングな映画で初めて知ったが、クマノミはイソギンチャクに身の安全を守ってもらうかわりに、イソギンチャクの餌となる魚を誘導したり、天敵を追い払ったりする。

 

 互いの利点のために共生している。

 この関係性は利害関係の象徴として有名な話だ。


「……なんだか不思議ですね」

「……だな」


 ちょっとセンチな感じになったが、次はショーでもみるイルカの水槽の前にきた。


 水槽は全面水で埋まっておらず、三分の二ほどの水しかない。

 

「これではイルカが見えにくいのでは……?」

「このままなら見えにくいけど、ちょっとしたパフォーマンスがあるんだよ」

「……?」

「まあ見てみな」


 そうガラス越しに見える水の量が少ないことにはちゃんと理由があるのだ。

 

 一匹のイルカが水中で大きな宙返りをして、水面に向かって勢いをつけて泳ぎ出し……


「あ、イルカが飛んでいます」


 空中に飛び出す。


 これが理由だ。

 イルカのジャンプを観れるように水槽の高さをずらしていたのだ。


「すごいですね、あんなに飛ぶなんて……」

「水中で約三十三キロの速度が出てるみたいだな、イルカは最高で四十~五十キロの速度が出るんだ」


 世界最高の水泳選手が出した世界記録は時速七.五キロメートルの速さなので、イルカの遊泳速度がどれだけとびぬけているのかよくわかる。


 そうして一通り館内を見て回った俺たちは、海を眺めることのできる飲食用のフードコートにて昼食を摂ることにした。


「いらっしゃいませー、ご注文は?」


 店員さんが挨拶をしてくれる。

 

「えっと、ビッグフィッシュバーガー二つとドリンク二つでお願いします」


 今回は既に食べるメニューを決めてあった。

 こういった施設では注文できる食べ物の種類があまり多くない。

 そのため、あっさり決まったのだ。


「かしこました、ドリンクの種類はどうされますか?」

「ゆずはどれにする?」

「そうですね……ウーロン茶でお願いします」

「わかった、俺はコーラで」

「かしこまりました、少々お待ちください」


 食事代の代金を払ったあと、昼食となる食べ物を受け取った俺達は、近くのテーブルに座った。ペンギン達の行進隊を眺めて食べられるいい席だ。


「あ、ペンギン達が並んで歩いていますね」

「あのよちよちって歩き方、愛嬌があって可愛いよな……」


 フィッシュバーガーの味に舌鼓を打ちつつ、ペンギンたちを眺めていると、ゆずから声を掛けられた。


「あの、司君。お話しておきたいことがあります」

「ん? なんだ?」


 なんだか神妙な面持ちだったため、真剣に耳を傾けてみた。


「先日鈴花ちゃんと服を買いに行った際、彼女と話し合って、これを買いました」


 鈴花と話し合って選んだ?

 一体何のことなのかと考えていると、ゆずはカバンに手を入れ、手の平に乗る程の小さな包みを取り出した。


「初デートの時にファミレスやアミューズメント施設でのお返しに、なにかプレゼントを渡してもらえたらって言っていましたよね?」

「ああ、確かに言った」


 奢られるのは申し訳ないと言っていたゆずに貸し借りがないようにと提案したことだったが、今それを切り出すということは、今手に持っている物を渡すつもりなのだろう。


「改めまして、初デートのお礼です」


 そしてそれを俺に向けて差し出し……。

 

「もちろん、普段からお世話になっているお礼も兼ねてですが……」

「――」

「……司君?」

「ぁあ、いや、嬉しいよ……開けてみていいか?」

「はい」 


 俺はゆずから手渡された包みを開いて、中身を出してみた。


 中からスマホに付けるストラップが出て来た。


 別にアニメキャラのストラップじゃない、青紫色で出来た二十面体のカクカクしたガラス球を紐でくくっていて、ちょっとオシャレな感じがするものだった。


「竜胆の花の色が青紫色だと知ったので、その色のストラップを鈴花ちゃんと一緒に探したんです」


 うおお、鈴花のやつ、妙にいいセンスしてやがる……。

 

 ゆずが少しでも俺に喜んでもらおうと、鈴花から俺の好みを聞いて選んだろうな。

 そうなら好みでなくともゆずから貰い物なんて、嬉しいに決まっている。


「ありがとうゆず。大事に使うよ」


 俺がそう言うとゆずはぱぁっと微笑む。


「ふふ、喜んでもらえてよかったです」

「タイミングが被っちゃったけど、俺からゆずに渡しておきたいものがあったんだ。


 俺はゆずに手を出すよう促して、彼女の手の平にプレゼントを渡した。


「……司君、これは……」


 俺がゆずに渡したのは黄色と緑の糸……ゆずの髪と目をイメージした色で編んだミサンガだ。

 

「ゆずはいつも無茶をするから、その……怪我しないようにって気持ちを込めたお守りだ」


 ちょっと照れ臭くなる。

 正直、ミサンガを編むなんて初めてだったからうまく出来たか微妙だが、ゆずはしばらくミサンガをまじまじと眺めたあと、右手首に巻き付けてみせてくれた。


 どうやら喜んでくれたようだ。


 そんなやり取りをしていると気づけば時刻は午後一時四十分だった。

 あと二十分でイルカショーが始まる。


 俺達はイルカショーが開かれるスタジアムに向かった。

 スタジアムは海の上に作られており、会場は三百人ほどの客席がある。

 俺たちは最前列の席をチケットで予約しているので、その席に座った。


「このショーでもイルカはジャンプしたりするんでしょうか?」

「ジャンプだけじゃないぞ?まあ、見てのお楽しみってことだ」


 いつもの無表情ながらゆずは期待を胸に躍らせている状態だ。

 ……正直とうと過ぎて直視できません。

 誰か彼女を直視出来るサングラスください。


 そうしていると、ついにイルカショーが始まった。


『みなさーん!! こんにちわー! 今日は水冨波水族館のイルカショーに来てくださり、ありがとうございます!可愛くて賢いイルカ達のパフォーマンスをお楽しみください!』


 トレーナーのお姉さんが元気よく挨拶を述べている。

 

『それではイルカ達の入場です! 今日のショーを担当するのは男の子のハリー君と、女の子のエリーちゃんです!』


 トレーナーさんの呼びかけに答えるように二匹のイルカが水中からプールサイドに乗り上げた。


 ――ワアアアアアア!!


 会場が歓声で盛り上がる。


「わあ」


 ゆずも興奮が抑えきれなくなっている。

 トレーナーさんが腕を振るうと、二匹のイルカが水中に戻り、他のトレーナーさんが釣り竿でリングを空中につらす。


『ここで手を振り上げると、ハリー君とエリーちゃんが空中のリングに目掛けてジャンプします! 皆さん、一緒にカウントダウンをお願いします!』

『「「3! 2! 1! 0!」」』 


 トレーナーのお姉さんと観客達が一斉にカウントダウンをし、0になるとお姉さんが手を振り上げると、二匹のイルカが同時に水中から飛び出して掠ることなく空中のリングをくぐった。


 ―-ワアアアアアア!!!


 会場が熱狂に包まれる。

 

「あんなに綺麗にくぐれるなんてすごいですね」


 まだ表情微妙に固いが、声音からゆずも大はしゃぎなのは確実だ。

 ゆずをここまで楽しませるイルカに軽く嫉妬を覚えつつ、ショーは続いていく。


 後ろに反るようにして飛ぶバックジャンプ、空中で一回前に回転するスピンジャンプなどをこなしていく。


『続いてはこちらのボールを使います! まずはハリー君とキャッチボールをします!』


 そう言ってトレーナーさんがハリー君に向かってバルーンボールを投げる。

 ハリー君はそれを水中で一回転して器用に尾ひれで打ち返した。


 トレーナーさんがボールをキャッチすると、再び歓声が沸き上がる。


 ハリー君とエリーちゃんによるボールのラリーを繰り出した次は……。


『次は本日お越し頂いたお客様の中から、イルカ達に合図を送ってもらいたいと思います!』


 イルカショーのなかにはイルカと触れ合う機会がある。

 この水冨波水族館ではトレーナーさんが選んだお客さんにイルカと触れ合ったあと、イルカに合図を送ってジャンプをさせるというサービスがある(公式サイトに記載あり)


『それでは、今日はこちらのカップルにイルカ達に触れ合って頂きましょう!』


 そう言ってトレーナーのお姉さんは俺とゆずに手を向けた。


 えっ!? もしかして俺達が選ばれたのか!?


 いや、最前列の席ならその可能性あるかなとは思ってたけど、こんなドンピシャでくるか!


「えっと、イルカに触れてもよろしいのでしょうか?」

「そういうイベントだしな、せっかく選ばれたんだし、ここは存分に触れ合って行こうか」

「そういうことでしたら、誠意を尽くして触らせて頂きます」

「はは、そうしようか」


 そんなに固くならなくてもいいのに……とは思ったが、ゆずの本気に水を差さないように俺は笑って答えた。


『それではお二人とも、二匹に触れてみてください』


 トレーナーさんが促すままにイルカに手を伸ばして、イルカ達は俺とゆず……ではなく俺を無視してゆずの方だけに顔を向けていた。


「「キュ~♡」」

「わぁ、もちもちしてますね」


 ゆずはイルカ達に甘えるように二匹の頭に両手を置いていく。

 

 一方イルカ達に無視された俺は完全に周囲に笑いものにされていた。

 こら笑うなよトレーナー……。


『つ、続いてイルカ達に手を上げて合図を送ってあげてください!』


 トレーナーがちょっと笑いを引きずりつつ、次の指示をする。


『お二人は手を重ねて私の掛け声に合わせて手を上げてください!』


 そうして俺は右手をゆずの左手に重ねる。

 

 こうしてゆずと手を繋ぐのは何気に久しぶりだが、相変わらずスベスベだなぁ


 なんて考えを一瞬だけ過らせたあとに合図を待つ。

 

『それでは行きましょう! 3! 2! 1! 0!』


 0の掛け声で手を上げ……ちょ、ゆずさん早い! 

 反射神経鋭い!


 俺の右手はゆずの左手の上に重ねてあったので出遅れることなく、手を上げることが出来た。


 その合図に合わせてイルカ達が大ジャンプする。


「なるほど、私達の合図に合わせて飛ぶというわけですか」


 しっかりと訓練された動きを披露するイルカ達にゆずが感心するなか……。


「あれ、なんかバランス悪くない?」


 え!? 

 トレーナーさん!? 

 今不吉なこと言いませんでした!?


 慌ててイルカの方を見てみると、あ、確かになんかハリー君の姿勢が悪い感じがする………って待て待てこれって!!


 

 ――バッシャアアアアンッ!!!



『きゃああ!? お二人とも、大丈夫ですか!?』


 ……イルカの着水の姿勢が悪かったせいで水しぶきが盛大に掛かった……。


「だ……大丈夫です……」

「けほっ、ちょっと水を飲んじゃいました……」


 最後にトラブルがあったものの、イルカショーは終了した。

 上がりに上がり切っていた場のテンションもすっかり水に流されてしまったようだ。

 本来なら、お客様を濡らすことは極力ないようにしているとトレーナーさんから謝罪をされた。


 お詫びとして売店のTシャツと近くの洋服店から購入したズボンとロングスカートを服弁償代として譲ってもらうこととなった。


「はあ~色々複雑だな……」

「でも、楽しかったです」


 おお、ゆずの口からはっきりと楽しいと言ってもらえた。

 きっと後で今日のことを振り返れば、イルカショーのトラブルも笑って話せるだろう。


「そうだな、俺も水族館には久しぶりに行ったけど、あんなに楽しめるなんて思っても見なかったよ」

「私、また行きたいです、今度は鈴花ちゃんや天坂さん達とも……」


 それもいいな、と思う。

 特に翡翠は今日のゆずと同じか、それ以上にはしゃぎそうである。


「あ、もうすぐ拠点ですね、司君、今日もありがとうございました、明日はどうされるんですか?」

「明日も特に予定なし、射撃訓練くらいだよ」

 

 完成を待つ銃の性能も未だ不明だが、俺自身の射撃能力を上げるために訓練中だ。

 ゆず達魔導少女が頑張っているのだから、俺も頑張ろうと励みになる。


「それでは明日も会えますね、司君、また明日」


 また明日、と言おうとしたらゆずのスマホが鳴り出した。

 

 唖喰が出たわけではない。

 普通にゆず個人に向けた電話だ。


「はい、並木です……初咲さん、お疲れ様です」


 どうやら電話の相手は初咲さんのようだ。

 ゆず個人への電話なら俺が入る必要もないだろう……そう思っていた。


「え? 司君にも関係があるのですか?分かりました」


 え? 

 俺も?

 なんだろうか……。

 

 そう思いながらゆずのスマホを受け取り、耳にあてた。


『ごめんなさい竜胆君、ちょっと拠点の方で停電トラブルが発生して、扉を開くことが出来ないのよ。復旧には丸一日掛かるわ』

「ええ!? ってことはゆずが中に入れないんじゃ……?」


 拠点に入るためにはカード認証のセキュリティを解除する必要があるが、停電していてはそのセキュリティも動かないのだ。


 いや、待てよ……。


「初咲さん、ゆずだけなら転送術式を使えば……」

「ごめんなさい司君、それは出来ません」

「え、なんで!?」

「今日のデートに魔導器は邪魔だろうと、初咲さんに言われて部屋に置いてきてしまったんです」

 

 それなんて負の連鎖?

 じゃあゆずは中に入れないままか……。


 

『そういうことだから今晩だけゆずを竜胆君の家に泊めてあげてもらえないかしら?』



 はい!? 

 今とんでもないこと言ったぞこの人!?


「ちょちょちょ、ちょっと待ってください! ゆずを……竜胆家にですか!?」

『仕方ないでしょう? 鈴花は家族旅行でいない、静も菜々美も大学のサークル活動で羽根牧区に居ないんだから、今のゆずが外で頼れるのは竜胆君だけよ?』


 そう、連休中の間鈴花は家族旅行に、工藤さんと柏木さんは外泊するサークル活動に出かけている。

 ゆずの住んでいる部屋は拠点の中にあるため、停電で中に入ることが出来ない。

 そうなると必然的に俺に頼るしかないのだ。


「あの、私なら大丈夫です、野宿の経験もありますし……」

「それはダメだ! 経験があろうがなかろうが、女の子一人を外に放り出すのは最低な行為だ――あー……」


 ゆずを説き伏せるためとはいえ、自分で退路を断ってしまった。


「……分かりました、親に説明します」


 ゆずを家に泊めるしかなくなってしまった。


『助かるわ、ゆず、こっちは大丈夫だから心配はいらないわ、それじゃ』


 初咲さんがそういって電話を切った。

 俺はもう心臓がバクバクである。

 だってゆずが……家に来るんだぞ?

 緊張して当たり前だ。


「……ええっと、じゃあそういうことだから……家に行こうか…」

「……は、はい、ふつつかものですが、よろしくお願いします」

「それ絶対に俺の親の前で言うなよ!? 期待させて何を言い出すか分からないからな!?」


 それは嫁入りの時に言う言葉だ、断じて友達の家に泊まるときに言っていいものではない。

 ……そもそも美少女を連れてきて期待するな、というほうが無茶ということは棚に上げておく。


 っと、ゆずに重要なことを伝え損ねるところだった。


「なぁ、ゆず」

「何でしょうか?」

「ゴールデンウィークの間は家に俺の両親がいるんだけどさ……」

「それがどうかしましたか?」


 ゆずは俺の言い分にきょとんとしていた。

 ああ、もう可愛いけどそれどころじゃない!


「えっと、一つだけ約束してほしいことがある」

「はぁ……?」


 俺が何を言いたいのか要領を掴めず、頭に?マークが浮かんでいそうなゆずに、俺は約束を持ち出した。



「俺の両親が何を言おうと、絶対に真に受けないでほしい」



「……?」


 それを聞いたゆずは、ますます意味が解らないというよう首を傾げた。


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