エピローグ ふしぎの次元《くに》のアリス
Q†=√エイチバーωac†~unitarity 神はサイコロを振らない
私はAIスジャータ。
クオーリア博士は大人になり、身寄りの無いドーラ人の少年を引き取りアスーと名前をつけて育てました。
アスーはクオーリア博士の助手として
研究も手伝いました。
クオーリア博士達の研究で
いつの日かキラルの病気がなくなるかもしれません。
まもなく、チルダさんが抱いていた
夢が現実のものとなろうとしています。
科学と宗教から生まれ、
ドーラ人に恐れられてきたゲートが、
全ての人々に夢と希望を与える道具へと変わろうとしているんです。
イケニエの撤廃については、最初は誰にも見向きもされなかったそうですが、
チルダのお母さん、クオーリア博士のお母さんが始めたチャリティー活動によって少しずつ認知され
ボランティアや寄付も増えるようになりました。
次第に資金も増えていき
アース人の国会も国の予算で
援助して貰えるようになりました。
また、現在アース国会の野党から
人権教育の強化や、
イケニエの儀式の廃止が議論され初めています。
今、私達の星は着実に未来へ進もうとしています。
そうそう、チルダさんのお母さんの話もしておかないと。
チルダさんのお母さんは、
娘に愛理栖と書いて本当はアイリスと読む名前をつけていました。
つまり、ひかるさんが公園で初めて会った愛理栖さんは、
実はチルダとしてクオーリアさん達が住む鏡宇宙に行く前の改変前のアイリスさんだったんです。
「あたしアイリスっていうの!」
「グラグラグラグラ!」
「地震だ! 激しいぞ!」
突然の地震は次元震だったんです。
「アイリスが消えちゃった!
どうして?」
ひかるさんはアイリスさんを必死に探し回りましたが見つかりませんでした。
ひかるさんから娘さんの失踪を聞いたお母さんは、
警察とご近所の人達総出でアイリスさんを探しました。
次の日、お母さんの元に記憶を無くした改変後の愛理栖さんが帰ってきました。
彼女は迷子になる前と性格が変わっていました。
お母さんは娘に少し違和感を感じましたが、
それでもお母さんは変わらず娘を愛していました。
翌日、ナビゲーションAIの私スジャータはお母さんの目の前に現れて、お母さんに事情を説明したんです。
そして、お母さんに、娘さんの本当の名前を伝え、そして本当の名前は隠すようにお願いしました。
娘さんが成長して、昔の記憶を全て思い出すと姿が見えなくなることを説明したんです。
愛理栖さんのお母さんは、娘に後で辛い思いをさせない為にあえて娘本人の前だけは嫌われるように冷たく接するようになりました。
愛理栖さんが小学校の高学年になり
お母さん自身が旦那さんと離婚した後、
お母さんは、アイリスを愛理栖という名前だと自分の母親に伝えあずけ行方をくらまし生活していました。
片親で生活しているお母さんの弟兄弟の娘の育児の手伝いをして。
お母さんの母が病気でなくなり
失踪したお母さん以外に身寄りの無い
愛理栖さんは親戚夫婦の子供になりました。
そして、親戚夫婦から愛理栖さんをひきとった愛理栖さんの今のおばさんはお母さんの居場所を探しだし、
親権をもらいました。
そしてあるとき、愛理栖さんのお母さんの様子を見に行った私はお母さんに一つだけお願いをされました。
そして、そのお願いを叶える為に私スジャータはひかるさんに
メッセージを送りました。
「あの子のこと、お願いしますね」
2020年 地球
※ひかる視点
愛理栖は科学者になるためにアメリカに留学し、飛び級で大学生になっていた。
そして今日、久しぶりにアメリカの大学から、帰って来たんだ。
「なあ、愛理栖?」
「どうしました?」
「この前の記念日に見せてくれたノートあるだろ?
あのノートをもう一度じっくり読み返していて思い出したんだ」
「え……?」
「あのさ、なんとなく恥ずかしくて
言いそびれたんだけどさ、
おかえり……」
『おかえりチルダ 』
「ア、ア………」
「あれ?愛理栖お前もしかして、
今泣いてる?」
「え?何も無いのに突然泣いたりしませんよ!」
「鏡みてみ」
僕がそう言うと、愛理栖は
手鏡で自分の顔を確認した。
「本当ですね。
私ったらどうしちゃったんでしょうか?」
「大丈夫か?」
「はい」
愛理栖はハンカチで涙を拭うと、
満面の笑みで
僕にそう言ってくれたんだ。
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