史上最強の5次元少女 アイラ

◇……◇


「ん?」

何て言っているかはわからないけれど、

低くぼやけた声が聴こえた気がするわ。


◇……!◇


「まただわ。

よく聞こえないんだけど!

あなたは誰?」


◇ねえ!?◇


「え!?

もしかして、さっきから私に呼びかけているってこと?」

ネイピアに呼びかけていると思われるその声は、最初は低すぎて聴き取れなかったが、

耳は次第になれ、それと同時に聴こえる声も高く、そして聴き取りやすくなったきた。

まるで暗所に慣れた目がいきなり明るい場所に行ったらしばらく順応出来ないときに似ている、ネイピアはそう思った。


「ネイピア、さっきからアタシの話にうわの空で一人柄でもなくものおもいにふけって黄昏れていたみたいだけど大丈夫?」


「ラジアナ、あなたね。

それにしても、柄でも無くは余計よ!

私は脳内食欲と性欲しかないどこかの誰かさんと違っていつも頭を使って行動しているから、ものおもいにふける事だってあるわ」


「ちょっ!

アタシが食欲と性欲しかないってどういう意味よ!!」


「あら、私がそれがラジアナのことだっていつ言ったかしら?」


「うう……」


「あら可愛い!

今のあなた、賢い主人の正論に口答え出来ない頭の悪い負け飼い犬みたいww

それにね、あなたが自分のことだって思い込んだっていうことは、

あなた自身に心当たりがあるってことじゃない?」


「ち、チゲーし!」


「はいはい、読者もあなたの話題飽きたみたいだから、この話はおしまいよ」


「ちょい待ちー!

なにしれ〜とメタな事言ってんのさ!」




「しー!」

ネイピアのその突然の一言であたりの雰囲気は一変した。

「え? ……うん」

ネイピアは真剣な表情でラジアナに沈黙を促した。


「どうやら、既に私はアイラに心の中で考えていることを見抜かれてしまって、弱点を調べられていたのね」


「心の中を見抜く?」


「そうよ。当時5次元少女最強と言われた私がたった一度だけ彼女とサシで闘って、

そして負けたの」


「ネイピアの能力のほうが強そうなのにね……」


「確かに、誰でも一見そう思うかもしれない。

だけどね、私の能力は必ず勝つ為の作戦を平均値から計算して高確率で予想することしかできないの。

ラジアナ? 私は雑魚のあなたと闘う事があったとしてもハンデがあっても勝てる自身があるわ。それに、仮にあなたが私の弱みを他の5次元少女に力説したとしても、あなたの日頃のだらしなくハタ迷惑な言動からきっと信じてはもらえないでしょう。

だからもう私の弱点話題にしちゃうけど、

誤差によるカオス的な結果に対しては策が打てないのよ」


「はー? 雑魚? だらしなくハタ迷惑? アタシがー??」


「そう言えばこの間、利子払うからどうしてもって泣きつかれたから貸してあげたお金、返済期限とっくに切れているわよね?」


「えー、そんなことあったですかね……でへへ」


『ギロ!!』


「悪かったよ、悪かったから、その鬼の面のような目で刺し殺すように睨むのやめて〜ぐすん」


「フンッ!……」



「ところで、その誤……」


「カオスはカオス理論のことよ。

最初に決める初期条件がほんの少しでも違うと予想結果が大きく違ってしまうってことを言うの。

身近なもので言うと、天気予報や交通機関の遅延、、衛星やシャトルの打ち上げとかにも関係しているわ」


「でもさ、どうしてアイラのその心の中を覗く能力がそのカオスと関係あるわけ?」


「アイラの能力は心の中を覗くことそれ自体じゃ無いの」


「え、違うの?」


「私はアイラに直接心の中を覗かれたわけじゃないんだけどね。

アイラには実数平面と虚数平面と複素平面が交わる概念上の仮想空間内を螺旋状に移動する能力があるの。

そしてその能力を使って、数学的ないくつもの解法から間接的に私が取り得る行動パターンを導き出されてしまったの」


「説明難過ぎー!!

じゃあさ、聞くよ。

ネイピアには何か策はあんの?」


「策はあるわ。

私はアイラとのバトルに敗れた後、

入念に分析をしてアイラ《かのじょ》の弱点を知ったわ。


「弱点!?」














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