第48話「終(つい)の天使」前編(改訂版)
第八話「
――ヒュヒュ!ヒュオン!
暗闇の中で白い閃光が二度、いや、三度閃く!
「あ……が……が……」
「いった……い……なに……が……」
「ぐはぁぁっ!」
ドサッ!ドサッ!ドサリッ!
そして、その光の軌跡の線上で、間を置いて三人の黒い影が地面に崩れ落ちた。
「……」
――白い刀身
プラチナブロンドの美少女が携える”
中々に見事な一品であった。
細みの刀身に
天を彩る星々の瞬きを
鈴原
――
そういう表現が脳裏に浮かぶ、
スチャ
プラチナブロンドの美少女は、その芸術品とまで言えるような出来映えの片手剣を
少女の腰に下げられた名刀に相応しい精巧な飾り細工の施された、白漆の鞘が艶っぽく輝いている。
「うん……やっぱり……”良い
そして、星光と夜闇の只中に佇む、
ともすれば、表情の乏しいと感じる整った容姿の少女は、この瞬間は、口元を僅かに
白磁のようなきめ細かい白い肌。
整った輪郭に、それに応じる以上の美しい
白い肌を少し紅葉させた頬と控えめな桜色の唇。
――そして特筆するべきはその
プラチナブロンドの美少女の瞳は、輝く銀河を再現したような
小高い丘の上から独り占めできる
それは
「く、
自らの剣の柄に手を添えたまま固まった兵士が、唖然とした表情で少女を見て名を呼ぶ。
「……全部?」
そこに佇んだ、プラチナの髪と瞳で
全身が輝くように
「は、はいっ!……し、周囲にもう刺客は見当たりません……これで全てかと……」
少女と数人の兵士達の周りには、斬り伏せられたばかりの黒い影が十人ほど……
兵士は全く出る幕の無かった自分たちの状況と、その
「…………さいかの言った通りだったわ」
プラチナブロンドの美少女、
「合図……さいかに合図して」
「はっ!……はいっ!」
結局、戦闘では全く出る幕の無かった
――
―
「ぬぉぉぉーーっ!!」
絶叫しながら、筋肉質の小男が血の滴る腕を押さえて後方に跳び退いた。
「どうした?
俺は主座前で立ち、抜き身の愛刀を壇下の
「はっ!」
筋肉達磨の前で刀を構えた俺の腹心の部下、
シュオンッ!
斬られた腕を押さえた男に追い打ちの二撃目を打ち込む!
「く!何故だぁぁーー!何故、俺の鋼鉄の
今までのように余裕で刃を弾き返す仕草は見せずに、大きく仰け反って無様に避ける筋肉達磨こと
「ふ、
傍らで同じく、俺の腹心である鈴原
「
「はい!我が君」
シュタッ!
俺の声に即応して、
「ぬぉっ!……こ、小癪な!」
黒笠男……
「小娘っ!我が”黒き雨”の餌食となれいぃっ!!」
そして
バシュッ!バシュッ!バシュッ!バシュッ!
バシュッ!バシュッ!バシュッ!バシュッ!……
無数の黒い鉄球が、最短距離で直進する
前面に構えた両手の特殊短剣の……その持ち手にある輪っか状の柄に人差し指を差し込んだ特異な握りで――
「はっ!」
ギュルルルルゥゥゥゥーーー!
ギュルルルルゥゥゥゥーーー!
――それを手首の返しで勢いよく弾いた!
途端に
”
ギィーン!ギィーン!ギィーン!ギィーン!
ギィーン!ギィーン!ギィーン!ギィーン!……
翳した二振りの刃、
「なっ!なんだとぉぉ!?」
ダッ!
至近まで近づく事に成功した
ガッ!
ガッ!
一息に相手の肩に両の足で着地する。
「さ、させぬぅっ!!」
そして、
パシィィッ!
今度は両肩を蹴って、二段目の飛翔で宙に舞う小柄な
ヒュン!
空中で両足を抱え込むように折り曲げて……
「こ、こむす……」
バキィィィィーー!!
落下速度と両足を伸ばす反動で、黒笠男の無防備な顔面に両足蹴りを入れた!!
「がっがはぁぁっ!」
両足蹴り……というより、空中で畳んだ両足を勢いよく伸ばして相手の顔面を地面に突き刺す打撃は、
「が……が……ぁぁ……」
地べたに自らの
雨の
「……」
――相変わらず敵には容赦が無いな……
そんな感想を浮かべ、自身の顔面も少々ムズムズとしていた俺に黒髪ショートカットの少女はいつものように
「最嘉さま、処理が終わりました!」
そして、遅ればせながらも……
「そ、そうだな、ご苦労だった」
俺は少しだけ引き攣った笑顔で頷いていた。
「…………」
因みに彼女の足下には、未だ台座の様に”雨の
「は……はは」
敵ながら……中々に同情に値する状態だ。
俺はもう一度苦笑いをした後、視線を別の戦場に移した。
「何故だぁぁーー!何故、俺の
――一方、
全身に斬り傷を受けた小柄な筋肉質の男が不満を叫びながら、床をのたうち回っている。
「……」
――こっちも……勝負あったな
俺は、刀を構えたまま油断無く、
こちらも俺の腹心である、
チャキ!
愛刀の”
「く……ぐぅぅ」
「な……何故だ……」
――ふぅ……
俺はその様子を主座前から眺めながら、内心ため息を一つ……
そして、無口な部下に代わって、納得いかないままの相手に答えてやる事にする。
「どんな鍛錬でそんな異常な
「……っ!」
――たく、なんだその目は……知らぬまま終わるのは不憫だと、教えてやっているのに態度悪いな……
そんな感想を抱きながらも、俺は一度口にした以上は途中で止めるのは俺的に気持ちが悪いので
「……つまりな、どんなに堅かろうと、鍛え抜こうと、物質的に人の肉や骨である以上は断つことができるんだよっ!解るだろ?」
そう、筋肉は筋……
筋組織の向きや、躍動する瞬間の弛緩によって斬れる瞬間は必ず存在するのだ。
「……そ……そんな……それを見極めて……刃を振るうというのか……この
眼球を見開いて、対峙する
「なにも特殊な技能ではあるまい……剣を極めんとする者ならば基本の範疇だ」
「……うっ」
平然とした
――まぁ、その通りなんだが……
それは少なくとも実戦では達人レベルで無いと無理だろう。
俺や
つまり、相手が”そういう手合い”なら、こういう対応も出来るって事だ。
「くっ……入れ替えたのは、俺の相手に小娘では分が悪いと踏んで……」
「えーと、一応言っておくけどなぁ、
「ぬっ……ぬぅぅ……」
俺の言葉を受けて、
そう、効率を重視した。
最初は問答をして水攻めへの時間稼ぎをしたが……もう必要ないからな。
そしてこういう事を細やかに教えるのは、最初に
――単純に”
集団戦闘でも、策の上でも、個人戦闘でも……
そう再認識させて、このまま降伏に持ち込めれば……なにかと楽だ。
そしてそれが功を奏したのだろう。
「…………鈴原殿……この戦はもう……終いだ……
壇下で白髪を束ねた男……
第八話「
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