第9話 「最嘉と不確かな約束」(改訂版)
↓最嘉と壱と真琴、スリーショットです↓
https://kakuyomu.jp/users/hirosukehoo/news/1177354054892613288
第九話 「
「どうやら……本当に手中に収めてしまったみたいだな……あの食わせ者め」
仰々しい
「相手の混乱に乗じたとは言え、僅か数名の手練れのみでの城奪取!いや、見事としか言い様がありませんなぁ!」
隣で興奮気味な配下の言葉に、その偉丈夫はそちらをジロリと見る。
「っ!……そ、その、ほんの数日前までの宿敵の協力を得ての策など以ての外ではありますが……その……」
「……」
鋭い眼光に睨まれて焦る部下を眺めながらその偉丈夫……
熊のような体格の男は、”ふん”と鼻を鳴らす。
「そこは……まあいい、別に俺個人としては
この時、熊男の岩石の如き
上背のある偉丈夫、体格の良い熊の様な大男……
小国群がひとつ、
「ふん、良いだろう……あの”食わせ者”のお手並み拝見といこうか」
ーー
ー
「おまえなぁ、だから何でそうなるんだよ」
俺は呆れた顔で聞き返していた。
「だって!……だって、さいかは何でも条件を飲むと言った……」
目の前の
「言ったか?……いいや、似たようなことは言った様な気がするが、そんな万能な言葉は使ってない。俺は”学校生活に困るようなことがあれば協力する”と言っただけだ!」
ーーそうだ、俺は確かにそう言ったはずだ
俺の記憶が確かなら……
というより間違いない!
それは先週の金曜日、ほんの六日ほど前の話だからだ。
俺は、少しの間、彼女と一緒に行動してみて解ったのだが、彼女はどうも少し風変わりしているというか、”一般常識”というものが欠けている気がする。
”
たとえば……ファミレス、コンビニ、果ては自動販売機に至るまで……
誰もが馴れ親しんで久しい、珍しくともなんとも無い環境に、彼女はまるで初めて体験するような
「……」
そう、有り体に言えば、
少しばかり浮き世離れしているのだ。
ーー
大体、コンビニどころか自動販売機さえ無いって、田舎を通り越して未開の地だろう。
「でもでもっ!困ったときに助けてくれるって!……それは、困ったわたしのお願いすることを聞いてくれるってことだよ?」
少しの間、黙って考え事をしていた俺の顔を覗き込むようにして彼女は訴えて来る。
ーー美しい白い銀河……
「……そ……そう……なのか?」
ーーいやいやいやいやっ!そんな訳がないっ!!
彼女と密約を交わした時、それとは別にこっちでは無く向こうの世界……私立
当面は、取りあえず”
だったら……と、俺はそう約束したのだ。
それは、こんな”
なんだかんだ言っても、
「…………わかったよ、
様々な思考の末、俺は自論は一時彼女に譲ることにした。
渋々と、そう応えた俺の言葉に、
「ほんと?やった!」
普段は殆ど表情を変えない人形姫の桜色の唇が柔らかく綻んでいた。
「…………」
ーーうっ……な、なかなかに愛らしいな……
つい、だらしなく顔が緩む俺。
まぁな……善く善く考えれば大した事では無いし、この表情を見ていたらそれ位の譲歩は良いかなぁと……
「さいかは何でもわたしの条件を飲むんだよね!ねっ!ふふっ……わたしの”下僕”みたいなモノだよね?ねっ!」
「そこまで譲歩はしていないっ!!」
バシッ!
「あうっ!」
可愛らしい笑顔で調子に乗るお嬢様の白いおでこに、俺は
「ひ、酷いよ……花も恥じらう可憐な乙女の顔を……」
「花も恥じらう可憐な乙女は下僕なんて必要としないっ!!」
俺は毅然とした態度で涙目の美少女に言い放つ。
「…………うぅ……」
「ふふんっ!」
どうだ!!
決意した一線級の男の顔には、
俺は両腕を腰に当て、何故か必要以上に誇らしげに立っていたのだった。
「あ、あの……
「っ!?」
聞き慣れた声に俺はハッとなる。
「…………」
「…………」
不毛なやり取りを繰り広げていた俺と
というか、彼はずっと
「
それほど筋肉質では無いが、締まった
その人物の姓名は、
俺にとって、ひとつ年上の従兄であり、絶対の信頼を置く腹心の部下。
「あぁ、悪い悪い……この”わがまま天然白色美少女”が絡んでくるんで、ついな……続けてくれ」
「
という事に表向きはなっているが、本当はこうして俺の手元に残っていた。
撤収した
今回出兵した
つまり、手元に
「
俺は
そうだ、明日は金曜日、世界が”近代国家世界”に切り替わる日だ。
”戦国世界”での情報は、向こうでは”ほぼ”筒抜けになる。
平和で不可侵な上、情報技術環境の整った”近代国家世界”では情報交換が容易だからだ。
つまり……だ、俺が生きている事も、
一応、
だが、俺が”
当然、
つまり、出来るだけ短期間でこっちも準備万端、対応できるようにしておかなければならない。
その為には取りあえず
「
進言に対する俺の応えに
「そのためには、今の兵力では……」
「それは、手は打ってある。そろそろだとは思うが……」
ーーダダダダダッ!
慌ただしい足音と共に一人の兵士が駆け込んで来る。
「報告!ただいま、
ーーおぉ、タイミング良いな……
俺は頷いてから、目の前の
「これで
「
そう応えた
「わたしはどちらでもいい……さいかがそう言うなら攻め落とすだけ」
「わるいな
ほぼ全軍を
「……べつに……そういう約定だから……それより明日は数学を……」
相変わらずの無表情ではあるが、どうやら……
「…………」
多少照れているのだろうか?
僅かに
「わかってるって、最初に言っておくが俺は中々にスパルタだぞ!」
微かに何かを感じ取った俺の冗談めかした言葉に……
少女が所持する桜色の唇がほんの少しだけ綻んでいた。
第九話 「
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