巨大JK

巨大JKとロヴォネ=レムゥセヘエは、真っ向からぶつかり合った。


震度五クラスの揺れが絶え間なく続き、辛うじて建っていただけの破壊された建物が次々と崩れ落ちる。この状態だから周囲数十キロ、数百キロの範囲にわたって地震のような揺れが感知されているに違いない。この辺りはそれほど地震が多い地域ではないらしいから、人間共はさぞ恐怖に慄いているだろう。


私達としても、これだけの振動の中ではいささか動くのに苦労するので、皆、宙に浮き上がっていた。ナハトムも私が浮かせている。


地上を這うしかできん化生共はなすすべなく翻弄されるだけだが、宙を飛べる奴らは私達に襲い掛かってくる。とは言え有象無象などもはや雑魚でしかない。片手間でそいつらの相手をしながら、藤波沙代里とロヴォネ=レムゥセヘエの巨人プロレスを観戦した。


奴の拳を頭を下げて躱しながら体を回転させての胴回し蹴り、地面に着地してタックル。五十メートルもの巨体が地面に倒れ伏した瞬間は、震度七はあったかも知れん。爆発のように瓦礫と土埃が舞い上がり、視界が遮られる。それを突風で掃ってやると、ロヴォネ=レムゥセヘエの体に馬乗りになっている藤波沙代里の姿があった。マウントポジションというやつだ。


本来ならもっとプロレスらしいプロレスが好きなのだが、そういうのに乗ってきてくれる相手ではないし、リングもロープもないので、総合格闘技系のガチなやつになってしまうのが少し残念だろう。


と言うか、あの手のドタバタするプロレスをやっていてはそれこそこの辺りの地盤そのものが滅茶苦茶になるわ! 


巻き戻せばいいのだが、手間がかかって仕方ない。


「手加減は要らん! 潰せ!!」


藤波沙代里も私なのだから別に声に出して言う必要もなかったものの、つい、な。


しかし私の言葉と共に、マウントポジションからの容赦ない打撃がロヴォネ=レムゥセヘエに浴びせられた。


が、人間同士ならほぼ決まったも同然なのだが、さすがに化生が相手ではそう上手くはいかなかった。ぼこぼこに殴られて殻が破壊されて頭がぐちゃぐちゃになりながらも奴は反撃してきたのだ。勝利を確信した藤波沙代里の隙をついて。


ロヴォネ=レムゥセヘエの殻の一部が開き、それが藤波沙代里の腕を薙いだ。その瞬間、巨大な腕が地面に落ち、切断面から噴水のように血が噴き出す。瓦礫などを集めて作ったとはいえ、きちんと体の構造は再現されていたのだ。さらに奴は殻をナイフのように使って今度は藤波沙代里の腹を裂いた。腹圧で押し出された内臓が辺りを埋め尽くす。


動きが鈍ったところを、ロヴォネ=レムゥセヘエが太刀のように鋭くした自らの腕を振るうと、藤波沙代里の頭が地響きを立てて地面に転がったのであった。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る