最終章

胸糞悪い結末に

胸糞悪い結末に憤るのは勝手だが、元より<邪神>と称されるモノに人間の感覚など求められても『知ったことか』としか言いようがないぞ。


たまたま人間にとって都合の良い振る舞いをしているように見える時があったとて、それ自体が私達にとっても都合が良かったからそうしたに過ぎん。いったん希望を与えておいてから突き落とす方が楽しいではないか。


あと、死ぬこともできずに苦しみ続けるとかも楽しいぞ。


それで言えば、トレアはあっさりと死ねただけ幸運だったともとれるな。


藍繪正真らんかいしょうまにダメージを与えることだけが目的であれば、こいつの目の前でトレアを兵士共に徹底的に嬲らせた上で指を一本ずつ切り落とし、指がなくなれば手足の先から輪切りにしていって、死んだらそこで首を落とし腹を裂いて頭を埋め込んでやるくらいのことはするぞ?


その程度のこともせずに何が<残酷>か。笑わせるな。


単に今の私の興味がそういう方向を向いていないだけで、本質は何も変わっとらん。


そんな訳で、藍繪正真らんかいしょうまについては向こうの私に任せておいて、取り敢えずはこっちの話に戻す。




さて、春休みも終わり、今日からはいよいよ新学期である。


「あ~、別々か~」


クラス分けの掲示を見た月城こよみが声を上げる。それに対して、


『なんだ? 私と別のクラスになって残念か?』


私が意識に直接話し掛けてやると、


『んなわけないでしょ。あんたを見張れないのは不安だけどね』


などと返しおった。


ふん。まあいい。


そんなこともありつつ、私と月城こよみと赤島出姫織あかしまできおりはそれぞれ別々のクラスになってしまったが、肥土透ひどとおる黄三縞亜蓮きみじまあれんは逆に同じクラスになり、ますます距離が縮まりそうだ。


なお、皮肉なことに新伊崎千晶にいざきちあき加見淵緒琥羅かみぶちしょこらが同じクラスとなって、貴志騨一成は私と同じクラスになった。碧空寺由紀嘉へきくうじゆきかは引き続き私と同じクラスだ。


これはまた、やはり因縁からは逃れられんということか。


こうして三年生に進級した私達は、普通の中学生としての毎日を謳歌していた。いや、マジでそうだったのだ。


もちろん今でも化生の者共は存在してるが、どれもこれもすぐさまどうにかしなければいけない程の奴ではなく、まあ精々、ひどく嫉妬深くなるとか疑い深くなるとか無気力になるとか、普通の人間でもありがちな状態になるだけである。そんなものをいちいち相手にしていてもキリがない。


その一方で、赤島出姫織と新伊崎千晶の二人が、魔法使いとして、気付けばそういうのを始末していたものの、ゴキブリ以上にいくらでも湧いてくるそいつらに閉口していたようだった。


とは言え、見えるから気になってしまうのだろう。しかも、赤島出姫織の場合は特に自分もかつてそういうのに憑かれて月城こよみの首を絞めて殺すという行為に及んでしまったという過去もある。それを思い出してしまって放っておけないのだろうな。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る