死ねない男
トレアが死に、
しかし巻き戻りによって死ぬこともできん上に、巻き戻ることで精神もリセットされることから狂うことすらできず、
ここで記憶も巻き戻るようにしておかない辺りが私の私たる所以だな。
この頃になるとさすがに
「何でだよ……! 何で死ねないんだよ……っ!!」
「お、あんた、生きてたんだな」
すでに何十回目かの生き返りかも分からなくなって幽鬼のように呆然と彷徨う
デインだった。
「う…あ、がぁああぁぁぁああぁぁぁーっっっ!!」
この時点ではもはや兵士と見れば襲い掛かるだけの怪物のようになっていた
「なにすんだ、お前!」
バッサリと袈裟懸けに斬り伏せられ地面に転がった
我ながら実に白々しい
しばらく見ていると、もぞり、と体をよじり、
「……」
さすがに慣れてしまい。何の感慨もなくその場に座る。
「何があった……?」
白々しいついでに問い掛けると、
「……」
デインも黙ってその様子を見守る。
「う…うぁ……うぁああぁぁあぁぁぁ~……!」
兵士の格好をした男の前で、三十も過ぎた男が声を上げて泣いた。巻き戻る度にトレアを喪った時の感覚が改めて鮮明になり、耐えられなかったのだ。
こいつはこれからも、延々とこれを繰り返すことになる。死ぬことはおろか狂うこともできずにな。
いつまでかって? さあ、それは私にも分らん。四~五百年もすれば飽きるかもしれないがな。
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