逃走潜伏
事件が明るみになったことで、
なにしろ人相までほとんど分かってしまったのだ。後は逃走経路となりそうな場所が移っていると思しき防犯カメラを片っ端から調べて似た人間をピックアップすると、いくつものカメラに男の姿はしっかりと捉えられていたのだった。
それは、貴志騨一成に撃退されたことで焦ってしまったというのもあるだろう。いつもは防犯カメラを避けるようにして移動していたはずが、つい失念してしまったのだ。
加えて、男の知らぬ間に設置された防犯カメラもあった。
そうして、男の姿がカメラにまったく捉えられなくなった辺りに写真を持った刑事が重点的に聞き込みをかけた。
さらには、ネット上で捜索を行う担当者が画像検索をかけることで引っかかってきた画像を念入りに調べると、あるイベントに参加した人物がSNS上にアップした写真がヒット。
その人物のサークルのメンバーであった、男によく似た人物が捜査線上に浮かび上がった。
こうなればもう、それが別人かどうかを確認するだけである。
だが、なんとその、最優先で確認することになった写真の人物がまさに大正解であり、一週間とかからず男の自宅まで判明してしまったのだ。
これまで男が上手く自身の犯行を隠し通せたのは、たまたま運が良かっただけというのも大きいだろう。だからバレる時には実に呆気なくバレてしまう。
そしてそれは、防犯カメラ映像から捜索を行っていた班が当たりをつけていた地域と見事に合致、周辺の聞き込みから得られた目撃情報とも合わせてもはや十分な根拠となり、逮捕状が請求され、早々に発行された。
捜査員はそれを手に、男の所在確認を行う。
ただ、さすがに男の方も用心してか、自宅には当座の逃走資金を確保する為にキャッシュカードなどを取りに帰っただけで、それ以降は自宅には帰らなかった。
また男は、自分が自宅にいないとなれば遠くに逃走したと警察は睨むだろうと推測し、自宅からさほど離れていないスパや漫画喫茶、ネットカフェなどを転々としてほとぼりが冷めるのを待った。
が、警察も、これまでに無数の犯罪者を相手にしてきてるので、そんなに甘くはなかった。遠くに逃げたことを想定に入れつつも同時に近所に潜伏している可能性も考慮に入れ、潜伏先となりそうな場所を片っ端から調べ上げていった。
男を捕えるための網は、確実に狭められていたのである。
しかしそんな中、男は次の潜伏先への移動中に見付けてしまった。
忘れもしないあの、樽の上に歪な大福を乗せたかのような醜い姿。
コンビニへの買い物に出た
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