冬休みの章
代田真登美の焦り
と、周囲からは認識されている。
が、本人はまったくそのつもりはなく、普通にしているだけなのだ。
しかし人間というものは、個人の思う<普通>がほんの少し自分達のそれと違っているだけで異端視し、時に虐げ、排除しようとする。
自分はそれによって嫌な思いをしていても、自分がそういう目に遭えば被害者ぶることはあっても、他人が同じ目に遭うのは構わないと思うのだ。
例えば、少女に興味のある者の中には、そのことによって他人から蔑まれればそれを嘆くのにも拘らず、その一方で同性愛に興味を持つ者を蔑み、罵倒する者がいたりもする。
逆もまた然り。
自分がされて嫌だったことを他人にやらないのではなく、
『自分が嫌な思いをしたんだから、自分もそれを誰かにやるのは当然の権利』
と考えるのである。
これによって負の連鎖が生まれ、より一層、自分が嫌な思いをする状況を錬成していくにも拘らずその事実に目を瞑り、目先の憂さを晴らす為に罵る相手を見付けては罵倒を繰り返すのだ。
だが、稀に、それを是としない人間もいる。たとえ自分は罵られても、だからといって他の誰かを罵ろうとは考えない者だ。
代田真登美は、そういう人間だった。自分が嫌な思いをしたからといってそのストレスを他人に転嫁しようとはしない。
生まれた時から両親に愛され、嫌なことがあれば両親の下に帰って『あのね…』と打ち明ければ、
「そうか…それは辛かったね……」
と全て受け止めてもらえることで癒され、他人に転嫁する必要がなくなるのだ。
だがそれでも、やはり辛いことは辛いし、嫌なことは嫌だった。オカルトに傾倒したのは、中学に上がったばかりの頃に陰湿なイジメを受けたことが原因だっただろう。並の者なら不登校になってもおかしくないレベルのそれですら受け流して見せたが、決して平気だった訳でも実はなかった。
しかしそれも、仲間に恵まれたこともあっていつしか癒されていったようだ。
だから最近は、透視の真似事もしなくなっていた。する必要がなくなったからだろう。
とは言え、自然科学部の部長としての責務は果たさなければいけないと思うし、そんな責任感以上に自分のことを<部長>と慕ってくれる仲間達の居場所を守りたいと思っていた。
『一年生の部員を増やさないと、山下さんの代で部が消滅してしまうかもしれない……』
その想いが彼女を突き動かしていたと言える。
故に一年生に勧誘を行っているところなのだが、正直、手応えとしては芳しくない。
「お疲れ。でもあんまり無理するなよ」
二学期最終日も心当たりを当たっていたものの目に見える成果もなかったことで少し疲れた表情をしていた彼女に、声が掛けられた。
そちらに視線を向けた彼女の目に、これといって特徴のない、<凡庸>という言葉をそのまま形にしたような男子生徒の姿が捉えられる。
「
<代田真登美と付き合っている変わり者>と周囲では評判の、
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