ケモケモ合流

「月城さんと…そちらは?」


いきなり現れた月城こよみと私に動じるでもなく、玖島楓恋くじまかれんは平然とそう尋ねてきた。


「あ、ああ、従妹です。夏休みだからうちに遊びに来てて、それで」


などと本当に適当な口から出まかせを。


もちろん<力>も使って認識を誘導、これまで従妹がいるなどと言ってもいなかったことを気にさせないようにした。


「こんにちは」


私もその茶番に乗ってやる。正直どうでもよかったしな。


もっとも、そんなことをしなくても玖島楓恋は気にしたりしないだろう。こいつはそういう奴だ。


しかしまあとにかく、今のままだと何かと大変なので、すぐ脇の空き教室へと三人で入った。カギはかかっていたが、そんなことは何の問題にもならん。当たり前のように<力>を使って開けてしまう。


そこはしばらくの間、換気すらされていなかったのだろう。暑いだけでなく埃っぽい臭いが充満していた。窓を開けることで外の空気と入れ替えた後、エアコンを作動させ―――――たていで、実際には<力>によって教室内の熱を自分のエネルギーに変換して取り入れた。それによって気温を下げたのだ。そういうこともできるようになっていた。


メヒェネレニィカを始末した時にエネルギーを使い果たして幼女化し、ハイヤーの運転手に回転寿司を奢らせた時の失敗を反省し、あらゆるものをエネルギーに変換できるようにしたのである。


もっとも、それだと変換効率は非常に悪くて、やはり食事や化生どもを食う方が手っ取り早いんだがな。熱エネルギーを人間の体で使える形に変換する為にもエネルギーが必要なので、熱エネルギーの九割方はそっちに使われてしまうのだ。


そんなことをしなくてもただエアコンを動かせばいいのだが、根が生真面目でお人好しなこいつは、勝手にエアコンまで使ってしまうのには気が引けたのだろう。


まあそれは余談だから今は置くとする。


三人で教室内の椅子に座り、窓に鈴なりになって中を覗き込んでいる生徒達のことは取り敢えず無視して、話をする。


「先輩も、ミッションに参加してるんですか?」


そう尋ねる月城こよみに、玖島楓恋は、


「そうなのよ。いつの間に誰が企画したのか知らないけど、すごいよね」


などと、相変わらず細かいことは気にしない奴だ。空中にステータスやコントロールパネルが表示されるなど今の技術では容易ではないというのに、その辺りを気にしてる様子が全くない。


なので敢えてそういう部分については関知せず、ミッションだけに集中することにする。


「本当は手分けして探した方が早いと思うんですけど、ボスの正体も分からないじゃ危険ですから、三人でまとまって行動するようにしましょう」


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