3-6【すぐにあなたの横に並びますわ】
☆ガードナー
さて。
(考察をしようか。何か答えが見つかるかもしれんからな)
ガードナーは戦局を見ようと一歩後ろに下がる。今起きてるのは文字だけ書き起こすと5対2だ。明らかに五人の方のこちらの方が有利に見える。
が、現実はそうではない。戦えるのはブレイカーとセイバーのみ。あとは結界を張ってもヒーローに効果はないガードナーと手負いのランサー。そしてよくわからないパペッターだ。
つまり実質2対2ということになる。だが、どういう原理か知らないがキャスターとヒーローはみょうな信頼関係が生まれている。故に二人は安心して背を任せられる。
しかしこちらは違う。ブレイカーガードナーにそのつもりはなくても、セイバーはまだこちらを疑っている。スキルもとき、戦闘に助太刀してるのにとは怒ることはできない。
突然後ろからバッサリということもあり得る世界なのだ。お互いが強い信頼をしてない今。お互いの関係をまとめると1対1対1対1対1対2ともとれる。と、なると途端にこちらが不利だ。
どうにか信頼を築くべきか。いやしかし、1日もたってないのにそこまで築けるわけがない。そもそもこちらはあって5分かそこらだ。
さて。
そう考えるとヒーローこそキャスターとそこまで長くいるとは思えない。さらに言えばヒーローは確かかなり錯乱していた。そんな人間と信頼関係なんてそうやすやすと築けるわけがない。
つまり二人をつなぐ絆には何かがある。それは何か?おそらくどちらかのスキルだろう。いや、ここは確定でキャスターといいきろう。
彼女のスキルによりヒーローはキャスターを無条件で信頼しているといってもいい。ならば、攻めるべきはキャスターか。
いやしかし。なぜかキャスターを襲おうというかは湧いてこない。わかっているのだが、あんな善意の塊のような人間を殴ろうなどと考えられないのだ。
さて。
となると厄介だ。彼女はおそらく今もスキルを発動しているのだろう。距離が遠いので大きな効果はないが最低分の能力は出ているらしい。
おそらく洗脳に近い能力か。この距離なら声によって発動するものなのだろう。耳を塞げと進言してもいいが、そしたら誰も戦えないか。
さて。
「……ふむ。ならばこうするか……」
ガードナーはニヤリと笑う。そして、ようやく見つけた道筋を見つけてやはり自分は天才だと誰に言われるまでもなく呟いたのだった。
周りを見てパペッターたちに念のため耳打ちをする。そして、なるべく音を立てないようにゆっくりと動き始めたのだった。
◇◇◇◇◇
☆キャスター
「みなさま、私たちは正義の存在なのです!」
ヒーローの戦いを見ながら、キャスターは声を出す。こうすることによりヒーローは自分を正義の味方になると思い込み、さらに相手は自分たちが相手にしているのは正義の味方を相手にしてると思い込む。
つまりバフとデバフをかけているのだが、そんなことキャスターは考えてない。ただ自分の思っていることを叫んでいるだけだ。
彼女は自分たちが正しいことをしていると信じて疑わないのだから。
(……やはり私たちは正義の行いをしている。だから、神は私を守ってくれるのですね……ふふ。すぐにあなたの横に並びますわ)
キャクターはくすくすと笑う。ヒーローの戦闘力はかなり眼を見張るものがあり、このままいけば勝てるだろう。
その後、私たちの詐欺の犠牲になってもらう。そう考えてニヤニヤが止まらない。さて、ならばさらに正義の味方だと主張しておこう。
「私達は正義の味方!攻撃の手をやめ——」
「口を閉じろ。次にあげる言葉は叫び声なら許す」
何だ?と思った瞬間、キャスターは誰かに殴り飛ばされていた。皆が何が起こったかと驚いている中。殴り飛ばした本人。ガードナーはニヤニヤと笑っていた。
「か、は……な。なにを……!?」
「さて、さっさと始末をつけるか……どうする?爆死がオススメだぞ」
「質問に答えてください……!!」
「さしたら君のような腐った体が辺りに広がることがないのだからな。個人的にかなりオススメだ」
「だから質問に!」
「あぁ、もし僕に何か語りかけてるならすまない」
そういい、彼女は耳をコツンと叩く。軽いものを叩いたような音が聞こえ、キャスターは異変に気付く。
「僕の耳にはいま結界を張ってるからな。君の声は聞こえない」
「な、なななな……!!」
「さて……」
パチンと指を鳴らし、彼女は何か言葉を繰り返す。すると、キャスターの周りに何か硬いものが張り巡らされた。
「この!出しなさい!私は……私は!!」
「何か言ってるな……さて、皆」
ガードナーの言葉はここからはよく聞こえなくなってきた。だが、なんとなくなんと言ってるか把握できた。おそらく彼女はこう言ったはずだ——
◇◇◇◇◇
☆ガードナー
「反撃開始だ」
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