第三話「出発」
朝四時。まだ外は真っ暗である。もうそろそろ空が白んできてもいいころなのかもしれないが、まだその兆しは見せない。
駅のコンコースにこんな時間に少し大きめな荷物をもってつったっているのも、僕一人である。まだ、集合時間の少し前だ。
女子三人は一緒に合流してから来ると言っていた。おそらく杉原と村田もそうなるだろう。あと一人は知らない。おそらく一人だろう。そもそも、この駅集合となっているのかすら、僕は知らない。
中途半端な時間が過ぎ、僕は近くにあったコンビニに足を踏み入れた。そろそろ朝食をとってもいいかもしれない。おなかもすいてきた。
適当にサンドイッチと水、それからカロメを手にとり、眠そうな店員さんに手渡す。
会計を済ませ、適当にまたコンコースをぶらついていると、
「お、居る居る。」
聞き覚えのある声が聞こえてきた。杉原と村田だろう。
「おはよう。」
「おはよー。」
「おっはー。」
適当に挨拶を交わしたりしながら、また三人で中途半端な時間を過ごす。僕はそこで朝食をとった。
さらに暫くすると、
「やっほー。」
と高井さんが声をあげながら入ってきた。それに続いて鳥海さん、それから小向さんもコンコースに足を踏み入れた。
「お、そろってるね。妙ちゃんとは新幹線に乗る駅で待ち合わせてるから、次の電車にのっちゃおっか。」
高井さんがそう言ったので、男子勢も懐から財布を取り出し、自動改札機にあててホームへ降りた。
ようやく空が白んできており、僕が駅に来たときよりだいぶ明るくなっていた。
電車に乗っていると、ふと外の景色を眺めたくなるものだ。
たとえ毎日乗っている列車だとしても、沿線風景のちょっとした差異に気付くことができると、少しうれしくなる。
ロングシートの車内に六人の男女が座っていて、端っこに僕、その隣に鳥海さん、杉原、高井さん、小向さん、反対の端に村田という席順で座っている。
いつも鳥海さんが隣な気がするが、まあ、何かしら事情でもあるのだろう。
電車を降りて通勤の時間帯となった駅のホームを歩く。高井さんはスマートフォンを操作しながら駅の中を進んでいく。
ふと、高井さんはスマートフォンから目を離し前を見た。僕も釣られてそっちを見ると、見慣れた国語教師が突っ立っていた。
その見慣れた国語教師と合流してから、新幹線のホームに移動する。
時々テレビで見る流線型の車体がホームに滑り込み、静かに停車した。
この時期の切符を取るのには苦労したのだろうな、なんて思いながら新幹線に乗り込み、自分の持っている指定券に書かれた座席に座る。
七人とは中途半端だが、生徒を固めて教師のほうは二人がけの席の片方に座った。
誰もシートの向きを替えないで座ろうとしていたので、僕はそれを制止し、片方のシートを回転させて六人で向かい合って座れるようにした。
僕が座った側に座ったのが僕側から鳥海さん、高井さん。
向かい側僕の正面から杉田村田、端が小向さんだ。
なんだかんだべちゃくちゃ世間話をしつつも窓の外の景色はどんどん変わっていく。
新幹線を降りると夏の厳しい日差しが六人+一人を突き刺してきた。
旅館へのチェックインにはだいぶ時間があるらしい。計画表には三時と書いてある。今は十一時なのでまだまだ時間がある。
どうやら海に行く、ということなので、僕たちは駅の改札から出て、海のある方向へ歩き出した。
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