第6話 勧誘

 気持ちがいい、この柔らかな感覚が懐かしい。そう思って、目を覚ますと、ベッドの上に寝ていた。起きてその部屋を見ると、少し懐かしい神城家の屋敷を思いだすような部屋だった。そんな思いに浸っていると、部屋に女の子が入ってきた。


「まだ寝てないとだめだよ。痛いけど我慢してね。」


 私をみていうと、私の肩を手でやさしく掴み、横にさせた。


「ちょっとごめんね。」


 私の服をめくりおなかをみる。すると驚いたようで私のお腹を触ってきた。少しくすぐったい。そして、顔が熱くなった。


「うそでしょ。もう傷が治って、なくなっている。」


 そういわれ見ると、確かに傷はなかった。


「まあ、それはいっか。それにしても肌がきれいですべすべしてるね。ちょっといじりたくなっちゃう。」


 口に笑みを浮かべてつぶやくと、指先でおへそのあたりから胸のしたまでなぞる。とっさに私は手で服を抑えてめくられないようにする。心臓がドキドキする。動揺していることがはっきりと伝わったようでニヤリとされる。これはやばい。やられる、と思ったとき、ノックの音がした。ドアがあくと男子が入ってきた。こちらを見ると驚いて、やれやれといった具合に話し出した。


「おい、お前なにやってんだ。いきなりそんなことすんなよ。泣きそうだぞ。」

「なんだ総司か。プライマリーの頭首がなんでこんなところに?」

「なんでって、ここは俺たちのアジトだぞ。頭首がここにいるのはあたりまえだろ。てか、はやくやめてあげろ。」


 そういわれて、私はようやく解放された。女の子は姿勢を正し立つと、総司の横に並んだ。


「傷は治ったのか?」


 私は静かにうなづくと女の子がいう。


「うん、傷痕が残らないほどすっかりきれいにね。」

「ふうん、そうか。ならよかった。治癒能力が高いんだな。お前、見かけない顔だがどこの誰だ?」


 どこのとは言えないけど、とりあえず名前だけ名乗る。


「私は、神城結衣。」

「所属は?」


 所属とは何のことだろうか?よくわからないけど、これだけははっきりしている。


「私は独りだよ。」

「一人?なるほど。お前は人間社会の人間か。けど、魔法が使えて、偶然戦いに巻き込まれたのか。災難だったな。」

「魔法!?あなたたちは魔法使いなの?」


 私以外に魔法が使える人は青山と教団しか知らなかったから、どんな人たちなのか不安になった。


「ああ、そうだ。お前ひとりっていったな。親とかはいないのか?」


 その問いに気持ちが重くなる。


「うん。」

「なら、俺たちと来い。魔法を教えてやる。寝床、三食食事付だ。いいな?」


 私のことを深く追究しないで、しかもお世話までしてくれるとは。まだ信じたわけではないけれど、断わると大変なことになりそうな気がしたのでしぶしぶ答えた。


「うん。わかった。」


 その返答にプライマリーの頭首は笑顔を浮かべた。


「話が早くていい。俺は総司。組織の長だ。こっちは三笠葵。詳しいことはこいつに聞いてくれ。おまえは変なことするなよ。」


 葵のほうを指差していうと、葵は反論する。


「ええ~。自分のものが取られたくないだけでしょ。」

「変なこと言うな。俺は忙しいんだ。頼んだぞ。」


 そういって、総司は部屋から出ていった。そのあとに、葵が軽い返事をする。


「うぃ~す。了解。」


葵はこっち見ると、にこっと笑った。

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