第8話 デスゲームのマスターと願い
目の前に居る漆黒のマントを羽織った骸骨は口を動かしてはいるがその声は脳内に直接響いていた。
『いや、お見事としか言うことがないよ』
(死神?)
竜一がイメージする死神の姿にしか見えない骸骨に疑問を持つとそいつは笑いながら答える。
『カカカカ!そう思うのも無理はない、だが…おっと来客のようだ』
骸骨がそう告げると病室に医師と思われる白衣を着た男性が看護師数人と部屋へ入ってきた。
俺は動かない体で目だけ動かしてその人達の動向を見詰める。
「信じられん…だがこれは…」
眼球にライトを当てられたりして色々調べられるがまるで物扱いでもあった。
テレビとかで見た瞬きとかで意志疎通を行ってくれれば返事をすることが出来るのに…
必死に意識があることを訴えようと目で医師だけでなく看護師にも知らせようとするが…
「ふむ、どうやら夢遊病に近い状態のようだ。脳波も安定してないし残念だが…」
そう言って病室を出ていく…
『カカカカ…仕方ないさ、君は今私の力で一時的に意識を戻しているだけで本来は植物人間状態で後は死を待つだけだから』
(そ…そんな…)
『クカカカカ、そんな君に朗報だ。君はあのデスゲームのマスターを倒した。いや違うな、語弊があるな、あのデスゲームのマスターが死んで君は生き残った。デスゲームのマスターが死んで生き残った者にはボーナスがあるのだよ』
(ぼ、ボーナス?)
『そう、どんな願いでも1つだけ叶えるというボーナスが…』
どんな願いでも…
もしそれが本当なら…
『ただし!願いを叶えたら君は次のデスゲームのマスターになってもらう、これが条件だ』
その言葉で坂上竜一は全てを悟った。
だが声に出すように考えると目の前の骸骨に伝わってしまうのを理解した。
『悩む気持ちは分かるよ、でもね君にはゆっくり選択している時間は無いよ。その体はもうすぐ死ぬんだからね』
徐々に馴れ馴れしくなっていく骸骨の言葉遣いは分かるものには分かる胡散臭さであった。
元々推理ゲームも得意としている竜一はそれを感じとり、骸骨に向けて声を発するように願いを伝える…
(分かった。俺の願いは…)
骸骨は笑っていた。
全てのパズルのピースはハマっているのだ。
この骸骨の常套手段でもある流れは全てここに収束される。
デスゲームの内容が何としても生き残ろうと自身の後の事を考えない方法でしか生き残れない内容である。
つまり何がなんでも死にたくないという生存本能の強い者を選別する。
デスゲームのマスターと言う何か自身が有利になれる形に聞こえるポジションを提示する。
それにより次のデスゲームも生き残れる可能性が高くなると考えさせる。
最後に生きる意思が強くこのままでは死が待つ者へ…死ぬか、生きてデスゲームのマスターになるかの2択を提示する。
全ては骸骨の思い通りに進んでいた。
だが…
(俺の願いは…白根さんを生き返らせてくれ)
『………………はっ?』
竜一の答えは骸骨の予想できないモノであった。
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