笑む、かな

紺藤 香純

はじめの一句

 小生・紺藤香純は、普段は介護施設の介護職員として働いています。

 世間では良いイメージのない介護業界ですが、悪いことばかりではありません。……その話は別の機会に。



 私の勤める介護施設には、俳句の先生をしていたというご利用者様がいらっしゃいます。

 そのご利用者様を、便宜上“先生”とお呼びすることにします。

 個人情報でもあるため詳しくは書けませんが……

 先生は、90歳になる男性。車椅子で過ごされ、認知症が進行していますが、俳句をよむことに関しては大変クリアーなかたです。

 先生がせっせと俳句をよまれる様子を見守りしていましたが、私が俳句をよむことはありませんでした。

 そんな俳句素人の私が最初に読んだ句を、先生の誕生日に贈りました。



「郭公の声で目が覚め筆を執る」



 ところが先生は、首をひねります。

「俳句の言葉じゃないねえ」

 先生の手直しを受けた句は、このようになりました。



「郭公の歌で梅くりやに立てり」



 “声”“目が覚め”“執る”という表現は直接的であり、俳句には合わない、というのが先生の考えでした。

「またできたら持って来るといいよ。できれば、一回に3句」

 そのように仰る先生は、私がそれまで見た中で一番生き生きとしていました。

 それから、私は俳句を先生に添削してもらうようになります。

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