エピローグ

 青い目の老人が目を覚ましたのはホテルの自分の部屋だった。

 

 窓から差し込む光から朝であることを確認すると体を起こす。

 昨日は船に1時間ほど乗っていた以外は気ままに散歩しただけだというのにあの日のように疲れたからだろう。今回来ることができて本当に良かった。次の機会はきっとないだろうから。

 

 着替えを済ませた老人は立ったまま目を静かに閉じる。

 雲海のゼロは今日も1枚の写真として記憶の中で輝きを放っていた。

 老人はゆっくりと部屋を後にする。


 老人が雲海でゼロ戦を見てから長い月日が経った。


 雲海のゼロ戦について知る者は、もう誰もいない。


 

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