五月十日

 無心に花がらみをしていると、飼い猫が寄ってきて延々えんえんわたしを尻尾しっぽでたたく。「可愛い、かわいい」と顔も合わせないででるのに構わないらしい。鉢植えとのあいだに入ってこようとする。

 しかたないので、おやつをあげてみるも二、三口めただけで戻ってくる。根負け。散々でまわしたあとブラッシングする。


 二日ほどらなかった豆類のたなが、右も左もぱちぱちのでいっぱいになった。小さなざるでは入りきらない。

 こうなってくるとおすそ分けの段だけれど、この辺りはみんな畑を持っているので豆には事欠かない。考えつつ広いなべでる。


 日の入りのあと散歩。金星が月のような顔をしている。あの光は天で乱反射しているのだろう。よいかす明るさ。比して、西の山影がずしりと黒く見える。

 歩くうちに星が増えてくる。地上はまだ涼しい風でも、ああして投げ入れられたふっとうせきそらの温度を上げていく。水瓶少年ガニュメデスがくるまでは。

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