四月二十一日

 田の手直しをする。苗のわりが悪いところや、流されて席の空いたところへ手を入れていく。

 アメンボ、ゲンゴロウに失礼をしてなかみずなかの仕事。コジュケイがどこからかしきりに呼ぶ。


 なえが風にゆれて言う。「村の水田には、それこそいろんなものが遊ぶよ、わたしたち聞きました。ご存じ、月星つきほしいっけんちょうに虫に。魚だって他じゃないよ。ほらあそこ、こいしきも泳ぐでしょう」……


 山が明るい。落葉したあとさみしく禿げていた一帯に、春の御手みてやわらかな継布つぎをあてた。はじめ未熟みるい早緑だったのが、次第に磨かれて色を深めている。

 そこへ珊瑚さんごいろが広がるのは、じゅこうのあるキリシマツツジ。見ごろそうなのでしたまでいく。

 二頭のアゲハがたわむれている。なびく羽衣はつやの黒。みつ美味うまかろ、うれしかろ。


 わらびをったのをいただく。あく抜きまでしてあって味をつけるばかり。薄めのつゆにひたして、山菜の風味のまま食卓にのぼる。

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