第53話 『決戦』 その3

 巨大な空間スクリーンに浮かび上がったのは、モールの戦闘場面そのものだったのです。


「こっちが、最高級のロボット機動警察隊に属する攻撃ロボットですな。」


 あまったるおじさんが言いました。


「この連中は、撤退という指令が出るか、自分が壊れるまで戦い続けるのですな。人間を殺害してよいかどうかは、指令ロボットを通じて、常時中央警察に問い合わせが行くのです。ほら、こいつが指令ロボット。わかりやすく言うと、ほらこの背中、ここのランプが赤く点滅してるでしょう。殺害許可が出てる印しだよ。」


「むむむ・・・・・」


「ほら、キューさんがいた。彼も、現在最上級の戦闘モードになってる。まあ服を着てるから見えないけど。本来なら、人間を粛正するはずなのに、どこでどう狂ったのか、自分で、敵はロボットである、と定義づけてしまったんだ。まあ、壊れたと言えば壊れたんだが。」


「ひえ。じゃあ、やはり、あのとき・・・・あのお店で襲われた時に壊れたのかな。」


 ぼくは、思い出しながら言いました。


「ああ、あんたが言ってるのはわかるよ。ここで見てたから。」


 地主さんが言いました。


「でも、あれは設定モードを、一つ上げることになっただけだ。キューさんは、それより大分前からすでに壊れていた。作られた時から問題があった。だから廃棄処分になるはずだったのに、民間に横流しされた。つまり、まあ早い話が、僕が買った訳ね。」


「はあ~~~~??!!」


「まあ、当時は、ぼくも海外にいたし・・いや、居たつもりだったし、ロボット政府打倒の計画を、すでに立てていたんだ。キューさんには、家庭教師やら、護身術の師範やら、パルチザンの教育やら、いろいろやってもらった。」


「ちょっとまってください。じゃあ、キューさんのことは、最初から知っていた?」


「もちろん。そうだよ。」


「あああ、この人の前で言っても大丈夫?」


「ああ、彼らは、別に、常時ロボット政府の味方をしてるわけじゃあないからね。作っただけ。さっきも言ってたけど。」


「まあそうです。我々は、結局のところ、地球の資源活用が出来ればそれでよいのですな。最終的に、人間でもロボットでも、どっちが勝っても別に構わないから。で、まあ、さっきも言ったように、その最終時期が近付いてきたということです。」


 キューさんが、腕から火を噴きながら、猛烈な攻撃をしました。


 ロボット警官が3体ほど、ばらんばらんになって、すっとびました。


 しかし、人間、ロボットが入り乱れて戦っていて、特にロボットさんたちは、どっちが敵か味方か、というのは、警察官のスタイルをしているかどうかでしか区別は出来ません。


 でも、モールのロボット店員さんたちは、当然ロボット派と、なぜか人間派に分かれていて、激しい闘いになっています。


 本人たちは、区別がつくようですが、人間側は、その様子を見ていないと即座には判断できません。


 そこで、人間の味方の振りして人に近づいて、にこやかに相手をローストにすると言う風景も見られました。


「あやややややあ。こりゃあ大変だあ。」


「あなた、『じゃまいやラーメン』、食べたでしょう?」


 地主さんが言いました。


「はい、確かに。」


「もう、効果が出てくるころだ。さあて、では、予行演習しよう!」


「うむ。よかろう。」


 地主さんとあまったるおじさんが、なんだか、勝手に合意しました。


 そうして、この展望台に、突然、高級警察ロボットさんが、たくさん現われたのです。


 まさに、正義の人造人間(ぼくです)の周囲を、黒と白のまだらスタイルの、悪の改造人間が、ぐるっと取り囲んだと言う雰囲気になりました。

 

 でも相手はロボット警官さんたちなのです。


 悪者は、ぼくだけかもしれません。



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