第38話 『元祖』 その3

「ぼくの来客者に関する動向調査によれば、このモールの大きな特徴として、だいたい同じ人が行く階は、常に同じ階である傾向が非常に強いのね。つまり、1階から5階くらいまでに行く人は、概ね85%の確率で、同じ階に出入りするのね。まあ、これだけの大規模店舗だから、そうなることは、それなりに、うなづけるのね。滞在時間は限られることが普通だからね。あなたのような、『準難民』や、あなたがたのような、『難民』は、まあ別として。でも、このカテゴリーの人たちも、一定の階に定住することが多いのだから、そう言う意味では、結局あまり、変わらないのね。」


「だから?」


「『うんじゃあ まいやら』のフレーズが、上層階と下層階で、相対的に、いくらか違ってきていても、おかしくはないのね。」


「そうかあ・・・・・????」


「そう、だから、あの集会で聞いた情報は、確からしいと言う事なのね。しかも、下の方が古くからあった。そう仮定して、話しを聞いてみましょうよ。」


「まあ、いいけどね。」 


 まるで、『ももたろう』のように、ぼくは、キューさん、お嬢、スワン、を引き連れてモールの中を歩きました。


「ああ、『91階の主様』だあ!」


「主様あ、うんじゃあ まいやら~~。」


 またまた、高校生位の女学生さんです。


「なんのことやら~~!」


「ロボット政府をぶっ壊せ~~~、主様あ! うんじゃあ  まいやら~~~~!!」


 若者が叫びました。


「ロボット政府をぶっ壊せ~~~!!」


 大合唱が起こりました。


「これって、まずく、ないかい?」


「そりゃあ、まずいですな。」


「しかし、ロボット警備員が出てくる気配もない。なんか、変だなあ。」


「確かに。」


 キューさんは、なぜか、いい加減に、言ってるような感じがしました。



 中には座り込んで、手を合わせて、ぼくにお祈りしている老夫婦も現れました。


「おお、主様じゃあ・・・ありがたや、ありがたや・・・」


「あの、何か、勘違いされてませんか?」


 ぼくは、キューさんに言いました。


「こうした現象は、良く起こるのね。既存の宗教的観念と、あたらしい偶像であるあなたが、深く共鳴してるのね。」


「こあ~~~~~!!」


「いい加減、覚悟した方がいいね。」


「そんなあ~~~~~・・・・」


「じゃあ、手分けして、このあたりのお見せに聞き込みしましょう。」


 お嬢がそう発言すると・・


「了解ぞなもし。」


 とスワンが応じ、すぐに二人とも、パッと両脇の店の中に消えてしまいました。


「ぼくらもここで、聞きましょう。ああ、もしもし、あなた・・・」


 キューさんは、メイン・ストリートで聞き込みを始めたのです。




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