第21話 『革命』 その2
「中央警察が来たね。」
キューさんが映像を確認しながら告げました。
「やなやつらだ。」
お嬢が唾を吐き捨てるように言いました。
中央警察の警官は、見た目からもロボットそのものです。
まあ、あえていえば、ロボットであることを、カモフラージュする必要性と言うものが、彼らには無いのです。
人間3原則を思い出してください。
彼らは、もっとも正当に、人間に命令する存在なのです。
基本的に言えば、その命令は絶対です。
彼らは、人は殺しません。
どこかに連れ去るのみです。
それが、いったいどこで、その先どうなるのかは、普通、誰も知りません。
もちろん知っている存在は、いるはずなのですけれども。
それは、おそらく、中央警察の『中央幹部』です。
この『中央幹部』というのが、どこにいる、どのような存在なのかも、人間たちにはわかっておりません。
ロボット政府の、中枢に入っていることは、確かなのです。
しかし、その本体は、人間政府の閣僚でさえ、知らないらしいのです。
そんなのありか?
と言うでしょうけれど、人間政府の閣僚は、あくまでも、人間です。
この国の人間政府の首相でさえ、最末端のロボット一体にも、実は歯が立たないのです。
ただ、それでは人間の自尊心を損ない、かえって支配しにくいので、それなりの配慮はされているようです。
形だけです。
ぼくたち一般人などは、ただ黙々と、意味もなく、この世で生かされているだけなのです。
しかし、今回のこの事件を見ても、ロボット内にも人間の側に立とうとするものが、キューさんの他にも結構いるらしい、と言う事が、おぼろげながら分かってきた気もするのです。
ロボットが『神様!』と叫ぶのは、初めて見ました。
「むむむ。あいつら、人間の店員を拉致したね。残ったのは、ロボットだけね。むむむむ。店や周辺の録画を、電子頭脳内で再生して確認してるね。ロボット店員の、記憶も、確認してるね。」
「キューさん、わかるんだ。」
ぼくが、ちょっと驚いたように、言いました。
「こいつらは、大量生産の下っ端だからね。ガードが甘い。上級警官になると、こうは行かないからね。でも、・・・まずいね。ぼくら、気にされてるね。探そうとしてる。・・・データを混乱させるね。時間はかなり稼げるね。」
「どのくらい?」
「まあ、3時間か4時間か、くらいかな。」
「それじゃあ、明け方にはわかってしまうかな?」
「いまいましい、ロボットだねぇ。粉砕してやりたいけど、手が出せないねぇ。」
お嬢が、実際、いまいましそうに、うなっています。
「どうするぞな、もし。」
「ここは、ちょっと、10階ほど上の階に逃走するね。彼らは、3階分しか管理できないね。時間は、相当稼げる。まあ、1日くらいは。」
「たった、かな、もし?」
「まあね。でも、それを繰り返したら、かなり稼げるね。」
「じゃあ、地主さんを探せないよ。」
ぼくが、疑問を呈しました。
「まあ、どこから探しても、同じことね。」
「はあ・・・・キューさんって、好い加減なところもあるんだなあ。」
「とにかく、上がるね。」
ぼくらは、エレベーターで一気に上の階に、昇りました。
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