第234話 李儒(理樹)と内気な姫殿下【反撃】(5)
「……えっ? えぇえええっ! えぇえええっ! 嘘ぉおおおっ! 劉弁皇女殿下ってぇえええっ! 姫殿下ではないですかぁあああっ⁉」
于禁は荀彧の諫めを聞き驚愕──。
自身の目が飛び出る程、瞼を大きく開け、不快感を募らせながらこちら。自分自身の目を細めながら睨みつけてくる弁姫殿下を見詰める。
『汗! 汗!』と、于禁は額と背に冷や汗をかきながら。
(不味い。不味い。どうしよう? 姫殿下を怒らせちゃった)と。
自身の脳内で呟き。
(何で、洛陽の宮廷内、最奥部の部屋にいる筈の弁姫殿下がこんな場所。こんな所に、李儒(理樹)殿と一緒にいるのだろう?)とも思う。
だから于禁は、劉弁殿下に尋ねたい。問いかけたい衝動に駆れるのだが。
于禁が姫殿下を見る限りは、自分が先程弁姫殿下へと告げて無礼極まり台詞で。彼女が不快感を募らせ、怒りをあらわにしていること間違い無いと、誰が傍から見ても思う程の険しい顔をしていらっしゃるから。
そんなことを安易に問う、尋ねることなどできない立場の于禁。
と、なれば彼女は、沙紀に弁姫殿下の御機嫌取りをしなくてはいけないと思う
だから于禁はその場に慌てて座り込むのだ。
彼女は平に、平にと、弁姫殿下へと謝罪。許しを乞う為に、土下座を始める。
でっ、始めれば、于禁はこの通りだ。
「す、すいません。弁姫殿下様ぁあああっ! 弁姫殿下さまとは知らずにー! この于禁ー! 大変に失礼極まりない言葉、台詞を、弁姫殿下へと告げてしまいましたぁあああっ! 大変に申し訳御座いませんー! 何卒ぉおおおっ! 何卒お許しください。弁姫殿下ぁあああっ!」
于禁は声を大にして叫びながら命乞い。弁姫殿下へと許しを。お慈悲をくださいと嘆願を、己の頭を何度も下げ、平伏しながら。弁姫殿下へと命乞い。許しを乞うてくる。
流石に姫さまの正面でその様子を凝視している何処かの誰かさん、こと李儒(理樹)は、于禁の様子を凝視すれば胸が痛む。憐れんでしまう。
「弁姫さま……」
だから彼は、自身の胸に頭を、頬を当てながら険しい顔で、于禁を睨む弁姫殿下へと、困った顔で声をかけてしまう。
「わかっています。あなた」
弁姫殿下が「はぁ」と、溜息を漏らしながら李儒(理樹)へと言葉を返した。
だから二人の様子を傍から窺っていた李儒(理樹)と、妖艶な郭嘉お姉さま御二人は、仲良く『ホッ』と安堵する。
「ありがとう。于禁……。そして、郭嘉さんや荀彧さんもすいません。僕はどうやら皆さんに大変に御迷惑をかけたみたいで、本当に申し訳ございません……」
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