第226話 李儒(理樹)と内気な姫殿下【援軍】(7)

「(力が欲しい。欲しいんだ。僕の目の先に立つ。そびえ立つ巨大な埴輪の巨人兵を倒す。倒すための……。それも、完全に粉砕、粉々。塵や灰にできる力……。仲間、仲間がもっと欲しい。欲しいよ。……このままだと、この場にいる戦姫(みんな)の魔力がつきて、遅かれ早かれ尽きてしまい。みんながこの世界から消去、デリートすることになってしまう。だから。もっと! もっとだ! 仲間達が欲しいのだ!)」


 彼が、李儒(理樹)が、こんなことを脳裏で思い呟けば。


〈ドン!〉


〈ガシャン!〉と。


 鈍い音──。


 そう。李儒(理樹)の耳元へ、だけではなく。この場に居合わせる者達。戦姫達の大きな笹耳に鈍い衝撃音と〈ピリピリ〉と亀裂が入る音が聞こえてきたのだ。


 だからこの場に居合わせる者達皆が、己の瞳だけを動かし。音の出どころを探索すると、言っても。一人の戦姫の碧眼の瞳は動かいないのだ。自身と対峙する埴輪の巨人兵を、己の気を張り。気勢を上げ。凛と勇んで睨みつけ。抵抗──。


 この場にいる仲間達を守る。守護する。援護し。助けようと防御壁を張り。隙あれば、彼女の金色に輝く。美しい髪色と良く似た黄金色の魔法弾を左の掌から打ち。放ち。抗う。抗って見せていた。美しいエルフのお嬢さまなのだが。彼女の艶やかに光り輝く。唇が開いた。開いたと思えば。


「きゃ、あああっ!」だ。


 でっ、その後は、敵の。埴輪の巨人兵が振り下ろした鍬型の戟が彼女に頭上に、そのまま落ち。落下──。


 美しい彼女の容姿を無残に押しつぶしていく悲惨な容姿と様子が、この場に居合わせる者達皆の瞳に映ると、言うことはないのが。高貴で美しい容姿を持つエルフのお嬢さまの、せめてもの救いと情け。元々この世界が、三國オンライン戦記と呼ばれるゲームの世界だったお陰で、鮮血や肉片。臓物を見ることがないのがせめても救いであった。


 だって大変に美しく煌びやかエルフの容姿を持つ、袁術お嬢さまの鮮血、血糊。肉片。臓物と。美しい袁術お嬢さまが、醜く潰れた容姿を李儒(理樹)を含めて、この場に居合わせる戦姫達の目に瞳に映ることも無く澄んだ。終わったのだ。


 ……でも、美しい袁術お嬢さまの容姿は、おチビな埴輪の兵達のようにテレビの画面にノイズが入り消えるかの如く。『ザッ、ザザ」と、音を立てながら消えていくのだ。


 それも、自身の主の様子を寂しそう。悲しそうな碧眼の瞳で見詰めながらだ。


 そう、まるで李儒(理樹)に、『あなた。また。お互いが転生をした時に何処かで逢いましょう』と、でも言いたい顔、様子で。『ふっ』と、李儒(理樹)に女神の微笑み投げかけてきたのだ。


 だから李儒(理樹)は慌てて袁術お嬢さまへと駆け寄ろうと試みるのだ。


「袁術ー!」と。


 彼は声を大にして彼女の名を呼び。消去しかかっている袁術お嬢さまへと素早く詰め寄ろうと試みるのだ。


「殿ぉおおおっ! いってはいけません。近寄っては。また敵の攻撃を今度は殿が受けてしまいます。だから袁術へは近寄ってはいけません」と。


 李儒(理樹)自身の後方、背から取り押さえようと試みる。弁姫殿下の華奢な両腕。自身に絡みつく両腕を強引に振り払いながら李儒(理樹)は、消えかかっている元俺嫁さまへと素早く。詰め寄るのだ。


 でも、李儒(理樹)は消えかかっている袁術お嬢さまを力強く抱き締め。彼女の美しい容姿が消去。デリートされるのを防ぐことができなかった。


 だから李儒(理樹)は、その場に力無くへたり込んでしまう。


「くそくそ」と、涙を流しながら愚痴を漏らすように呟きながら。


「僕に。僕にもっと力が。力があれば。君を。袁術を死なせるようなことはしなくてすんだのに。ちくしょうー! ちくしょうー!」と。


 彼は天を仰ぎ涙! 絶叫! 叫びながら悔し涙と嘆くのだった。と、同時に。


「貴様ぁあああっ! 貴様ぁあああっ! 家の姫さまをー! 私の姫さまをー! 絶対にぶっ殺してやるー! うわぁあああっ!」と。


 いつもやる気のない紀霊将軍が憤怒! 怒気を含んだ大きな声で埴輪の巨人兵へと罵声を放つと憤怒──。


 三尖刀を振り上げ、そのままの状況確認もしないまま、猪突猛進を、なりふり構わずおこなってしまうほど。彼女の心は主。袁術お嬢さまの死で乱れてしまうから。紀霊将軍は完全に埴輪の巨人兵から後れをとる愚策をしてしまうのだ。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る