第222話 李儒(理樹)と内気な姫殿下【援軍】(3)
「ふぅ」
哀愁漂う様子で窓の外を見詰める。この世界の魔王と呼ばれた、銀髪の髪色をしたダークエルフの少女。その少女の、艶やかに光り輝く唇の隙間から溜息が漏れる。
「中々帰還。帰ってこぬなぁ、李儒(理樹)の奴は……」と。
魔王な少女、董卓は、自身の彼に対して不満もついでに漏らしながら窓の外を見詰める。見詰め続けるのだ。
この後も麗しい少女は、何度も「はぁ」と溜息を追加しながら。木馬の騎乗訓練だと偽り。城郭外の外近辺を小さな冒険、散歩へと出掛けた彼、主。魔王な彼女の夫だと申してもよい立場の少年の身を案じ、無事な帰還を、屋敷内で夫の帰りを待つ、妻の如き振る舞いで、椅子に座ったまま、窓から外をボォ~と、見詰め続けていると『キラリ』だ──!
魔王な少女、董卓仲頴が持つ、美しい紅玉色の瞳に、何か光り輝く物が、遙か遠くの空中。青い空の中で見えたような気がするから。
「……ん? 今の儂の両目に光り輝く物が見えたような気がするが。気のせいだろうか?」
魔王な少女、董卓閣下は、自身の首を傾げながら。独り言を漏らす。漏らせば彼女は、自身の瞼を静かに閉じ、念を込め。瞑想へと入り。ある者の気を……。
そう。過保護な魔王さまの、我儘な主。李儒(理樹)の気を注意深く探索し始めるのだ。
只今魔王さまの彼が、自身の両目で何を見て感動、歓喜、畏怖など。どんなことを思い。脳裏で描き浸っているのかを読む為に探索を始めるのだ。
あれでも、もしや? 魔王な少女の大事な主が何者かに襲われているかも知れぬと。魔王な閣下は、我儘な主、李儒(理樹)の脳内を、自身の魔力を使用して探索をするのだ。
先程の光り。自身の疲労、疲れからくる目の錯覚、気のせいかも知れぬが。魔王な董卓閣下は、いくら若かりし頃の容姿で転生しようとも、愛する者への妙な、過保護なところは中々治る訳ではなくやはり。彼女の愛する彼、李儒(理樹)のことが気になるから。彼の浮気心まで一発で発見。悟ることができる。赤い糸で繋がれた糸電話のように、李儒(理樹)の意思、脳内を探索し始める。
主の無事を確認するのには、これを使用するのが一番手っ取り早いと、彼女。魔王な董卓閣下は思っているから探索を続けるのだが。
(……ん? 可笑しい? 李儒(理樹)の意士が、脳内が、見えぬ。悟る事が、何故か出来ぬ。どうやっても……。可笑しい。可笑しいぞ? もしかして家のひとに何か? 何か大変な事。予期せぬこと。不測の事態が起きたのかも知れぬ?)と。
魔王な董卓閣下は、自身の脳内で思い呟く。呟けば。
〈ドーン!〉と。
自身の座っていた椅子が、床に倒れ、大きな音を出すぐらい。彼女は勢い良く立ち上がる。
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