第221話 李儒(理樹)と内気な姫殿下【援軍】(2)

 曹操孟徳の懐刀、軍師──。


 あの魏の覇王曹操孟徳に、『ああ、私の張子房よ』と、謳わせ。『我は張子房を手に入れ夢が叶う』と、覇王曹操孟徳の舌を唸らせ。絶賛。歓喜させた。三国志を代表する軍師さまである少女。荀彧が曹洪嬢の問いかけに対してやはり稀代の天才軍師さまを持ってしてもわからぬと困惑をしながら言葉を返す。


「まあ、荀彧殿がわからぬ、のならば、我等はもっとわかりはしませんね。ふふっ」と、妖艶に微笑──。


「まあ、余り皆様も悩まずに、取り敢えず現地に行く。行って着いて。到着して。その場の状況を見ながら臨機応変に対処すればどうでしょうか? 曹仁殿、荀彧殿……。その他の将軍様達も取り敢えずは現地へと行くだけ。行きましょうよ」


 荀彧と曹洪嬢の会話に急に割って入った。魔王、悪魔のような角。ミノタウロスのような天空へと伸びた角ではなく。前方。対面する相手に向けて生えている二つの角を持つ、妖艶、艶やかな容姿、仕草、甘ったるい声音、口調を漏らす女性。お姉さまであるサキュバスの彼女なのだが。この方も三國志演技の世界では大変に有名な御方。魏の覇王曹操を支えた稀代の軍師である郭嘉(かくか)お姉さまが。皆が何故、そこにあるのかわからない。今迄はなかった筈の物……。


 そう。弁姫殿下が造りたもぅた。荒れて廃墟と化しているオアシスを、遠目から凝視して困惑、動揺。騒めき。喧騒の最中にいる諸将。戦姫達へと、各自各々が気を落ち着かせ、早く援軍に。進軍をしようと、この軍を姉の曹操孟徳に代わり取り纏めている妹の曹仁嬢と荀彧城へと促す。催促をするのだ。


「ええぇ、そうですね。郭嘉(かくか)殿の言う通りで御座います……。ここでみなが取り乱しては、ことを損じるは必然的……。曹仁殿、取り敢えずは。郭嘉(かくか)殿の言われる通りで、廃墟と化したオアシスへと向かいましょう。今直ぐに」


 郭嘉(かくか)お姉さまの艶やか口調の要請。催促に賛同した荀彧嬢が、軍の総大将である曹仁に、直ぐさま進軍するようにと進言をするのだ。


「はい。分りました。荀彧殿……。そして郭嘉(かくか)殿」と。


 曹仁嬢が荀彧嬢と郭嘉(かくか)お姉さま、二人の進言を直ぐに聞き入れれば。


「直ちに全軍進軍ー! 惇と姉上の、殿の救助へと直ちに向かうー! 進めぇえええっ! 行くぞぉおおおっ!」と。


 曹仁嬢が声を大にして叫びながら下知──!


 自身の後方へと控える。覇王曹操孟徳の覇道を支えた優秀な戦姫達と、おチビな埴輪の兵達へと下知を下せば。


「「「おぉ、おおおっ!」」」


「「「行くぞぉおおおっ!」」」


「「「ピィイイイッ!」」」


「「「キャアアアッ!」」」と。


 覇気のある声。咆哮が辺り一面に響いたらしい。



 ◇◇◇◇◇


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