第203話 李儒(理樹)と内気な姫殿下【魔物】(13)

「ギャ、アアアッ!」、


「ギャァオス!」と。


 怒り、咆哮をあげて、己が持つ巨大な農機、鍬を振りおろし、仲慎ましい様子で。


「女神さま、大丈夫?」


「わらわはどうでもよろしいですが、御方さまの方こそ大丈夫~? お疲れではないですか~?」


「うん。僕は大丈夫。大丈夫だよ。女神さまが僕を背から優しく支え、抱擁、癒し、労ってくれるから大丈夫。大丈夫だよ。女神さま……」


「そうですか。それならばよかった。御方さま~」と。


 エルフな女神さまは、『ニコリ』と、女神の笑みを浮かべる。それを李儒(理樹)も、斜め後ろを振り返り凝視すれば。


 彼も笑みを浮かべ。


「うん」と、頷き。


 李儒(理樹)と女神さまへは、またお互いが、熱い眼差しで見詰め合う。二人の前方には、何処かの誰かさまの嫉妬心の憎悪で合体──。巨大化、大〇神化、ボス化した埴輪の巨人兵がいる。佇んでいる。そびえ立ち、えん魔のような顔つきで、二人を見下ろすように睨みつけている物がいるにも関わらず。熱き眼差しで見詰め合う若いアダムとイブは、埴輪の巨人をそっちのけで、唇と唇を交わし、接吻。キスという奴、物をして、更に愛を育み始めるのだ。恋愛小説……。



 いや、アニメやシネマ、マンガにライトノベルと。意を決した主人公(ヒーロー)がヒロインとの別れを惜しむ際に、テンプレ仕様でおこなう。二人の愛を再度確かめあうキス、接吻を、何処かの誰かさんの、嫉妬心の最中に召喚、沸し。今度は合体してボス化をした埴輪の巨人兵の前でするものだから。


 埴輪の巨人兵は、更に大〇神のように恐ろしい顔、怒り顔へと変化させながら、己の持つ巨大な鍬を、愛を再度確かめあい。キスの最中の二人へと振り下ろすのだ。それも嫉妬心と言う物を糧に、だ。


「あっ! あぶない。あぶない御方さま~」


 まあ、何とも気が抜けるというか? 女神さまの声色と口調のリズムは、高貴な御方、やんごとなき御方の娘さまらしい。甘くて緩い口調だから。この場が大変に危険、危うい。緊迫とした状態だと言うことをすっかり忘れてしまいそうになる。


 なるから李儒(理樹)自身も、敵を、埴輪の巨人兵をそっちのけ、放置状態で、女神さまとキス、首へと堪能をし続けてしまうようだ。


 でも、先程も説明をした通りだ。李儒(理樹)もやんごとなきお姫さまである女神さま。


 初期レベル1はもう既にかなりの経験値を稼いでいる状態。状態だからね。李儒(理樹)の初期の頃の、俺嫁さま。袁術お嬢さまの愛のお陰? でね。


 だから直ぐに、女神さまの艶やかに濡れ輝唇が開き。


「はぁ、あああっ! やぁ、あああっ!」なのだよ。


 そう。李儒(理樹)の女神さまは、瞬時に防御壁を展開──。自身の主を金色に光り輝く盾! 障壁でガード! 埴輪の巨人兵のこの程度の攻撃ならば防ぎ弾いてみせる。


「うわぁ、あああっ!」


 そして「ごめん。ごめんなさい。女神さま」と。


 李儒(理樹)は自身を庇うために盾、防御壁を展開、張り。ガードしてくれた女神さまへと謝罪とお礼を順に告げていく。


 自身の握るレトロ調なマスケット拳銃から、己の持つ魔力を挿入。着弾を始め、発射──。


〈ガンガン〉


〈バンバン〉と。


 スキル連撃、乱射を始めながら告げだすのだ。


 女神さまの華奢お体を抱き寄せ、抱え、回避運動をとりながら告げた上に、魔弾を埴輪の巨人兵へと打ち込みもする。してみせる。


 彼の目指す、夢見る主人公(ヒーロー)達のように。




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