第182話 李儒(理樹)と内気な姫殿下【乱】(6)

「わぁ、あああっ!」


「フフフ……」と絶叫、笑みを漏らしながら仲良く、【一向一揆】により破壊されつつあるオアシス内を逃げ惑う李儒(理樹)と女神さまの様子をまた、ではないが。曹操孟徳達の密談? 盗み聞きしていた時のように、闇に隠れて、可愛い大きな笹耳で密かに聞く耳を立てる二人の影……ではないようだ。今回、この度は……。



 そう、李儒(理樹)と女神さまとの会話、やりとりと、言う奴を、己の、自分達にも降りかかる災い。自身が魔法スキル【扇動】で召喚、呼び出した。匪賊、平民達の【一向一揆】仕様の埴輪のおチビな兵隊達を、自身の持つ武器、偃月刀と三尖刀とで。


〈ガン!〉


〈バン!〉


〈ザク!〉と。


 自分達二人に降りかかる厄災を最小限の動きで、風を、空を切り。切り裂きながら。己の元主と、女神さまの様子を窺っている二人のエルフと大鬼(オーガ)の美女、御二人の様子なのだが。


「(何故、あの方がこんな場所、このような場所にいる。いるのでしょうか?)」と。


 エルフな名家の美女お姫さま、お嬢さまが困惑した表情で、こんなことを脳裏で思えば。


「姫様、どうするのですか? このままだと、姫様の大事な李儒(理樹)殿が危なくなりますよ?」と。


「……李儒(理樹)殿と一緒にいるエルフの娘は誰なのでしょうかね? ……と、言うか? また姫様は、自身の殿様を他の女性(ひと)に盗られたようですね。お可哀想に……」と。


 相変わらずやる気の無い様子、口調と、言うか? 自身が使える主の面倒な我儘に巻き込まれて嫌気が差し、やる気の無い。見せない。朱霊将軍が、自身の主である我儘お嬢さまへと尋ね、問えば。


「煩いですね。朱霊は」と不満を漏らし。「そんな事はわかっています。いますよ。貴女に言われなくても」と。


 今度はエルフな我儘お嬢さまは、自身の臣下である朱霊将軍へと不満と。


「いきますよ! 朱霊! あのひとを助ける為! 恩を売る為に」と、言葉を漏らす。下知を下すと。


 一向一揆から逃げ惑う。李儒(理樹)と女神さま二人の後を追い始めるのだ。袁術嬢と紀霊の二人はね。自分達二人の前に立ちはだかる。道を塞ぐ。一向一揆衆的な埴輪のおチビな兵達を。


「チッ! 邪魔!」、


「邪魔ですから、退きなさい。貴方達」と。


 袁術嬢が荒々しく叫び──!


「ハイ! ハァ!」と、己に気合を入れ掛け声あげながら、自身の所持する偃月刀を振るい。剣舞の如く、蝶のように美しく舞えばね。


「うぉ、おおおっ! 邪魔だ! 邪魔だ! そこを退けぇえええっ!」、


「退けと言うのが分らぬ! 分らぬのかぁあああっ! 我が家の姫様の御通りだぁあああっ! お通りだぞぉおおおっ! おチビ共──!」と。





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