第11話
すごい音とともにお風呂の壁が破壊され、男が侵入してきた。身長はおそらく2メートル近くあるだろう男が僕の方を向いて壁をぶち破ってきた形だ。学校と言い家と言い、最近流行ってるのだろうか。
「あー......何かのパーティ会場と間違ってないかな」
それでもなんとか一言を絞り出す。
「オマエダ」
人違いを願ったけど間違ってなかったらしい。困ったな。こんな知り合いはいないんだけど。
考えている間に男の手が迫ってくる。避けられないスピードでは無い。しかし僕は今服を着ていない!
「きーくん!」
その時、みー姉が鰹節を片手に現れた。
「誰これ知り合い!? 」
みー姉に聞かれて否定する。
「鰹連斬!!!」
斬りかかるみー姉。しかしまるで金属の様な音がして弾かれてしまった。まさかロボットか何かなのか。まるでダメージの入っていない様子を見てみー姉がこちらを見ずに言ってくる。
「くっ......逃げるよきーくん」
この状態でどうやって逃げるんだろうか。とても逃がしてくれそうには見えない。
「節吹雪!!」
みー姉が言うとみー姉を中心として大量の削られた鰹節が舞った。お好み焼きとかたこ焼きの上にある本当にごく小さな鰹節が視界を覆う。
「こっち!!」
そんな中引っ張られながら逃げた。一旦リビングまで戻ってくる。
「はい、服着て」
いつのまにか僕の服を持っていたみー姉が渡してくれる。その服を着ながら僕はみー姉に聞く。
「どこに逃げるの」
「いったんうちに行くわ。節吹雪をやったせいで鰹節が一気に削れてしまったからスペアの鰹節を取りに行かないと」
服を着た僕の手を握ってみー姉が走り出す。みー姉の家はお隣だから何事もなく行けるはずだ。そう思っていた。
「玄関から出るよりこっちの窓から出た方が近いよみー姉」
「わかった。そっちから出よう」
2人で窓へと向かう。窓を開けるとそこにはさっきの男がいた。
「ニゲルナ」
いや、逃げるだろう。みー姉の手を握って全力で玄関を目指す。窓やら壁を破壊して追ってくる男。逃げ切れるかどうか不安だな。
後ろに迫ってくる男。逃げる僕とみー姉。出口はすぐそこまでと言うところまで来ていた。扉に手をかける。無事開いた。
「きーくん!!!」
みー姉の方を振り向いた時聞こえたのは悲鳴に近い絶叫。そして僕の背中側から腹側に貫通した血まみれの手だった。
「ニゲルカラコウナルノダ......」
やがて僕の体から手を引き抜き、男が遠ざかって行く。遠くにみー姉の声が聞こえる。
「きーくん!ねえ!!やめて!!ダメだよ......」
もう僕の目は何も見えなかった。手を伸ばせばそこにいるはずのみー姉が見えない。言葉を発そうとしても声が出なかった。
「きーくん......」
もう動くことも出来なかった。こうして人は死ぬのか......みー姉が無事で良かった......
僕は死ぬであろうその瞬間、みー姉と別の気配を感じ、そのまま意識を失った。
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