第10話
襲撃された帰り道。
「でもさー。鰹節振り回すみー姉はかっこよかったよ」
手を繋いで歩きながら隣のみー姉に言う。
「そうかなあ......絶対にただの変な子だと思うんだけど......だって鰹節だよ。いくら強くても食品で戦うって」
それを言うならゴムベラを使っていた相手もだと思うけどそこは黙っておく事にする。話題を変えてみるか。
「そうだ、今度の休みさ、どこか行きたいんだけど」
「行ってらっしゃい...魚臭いクソ女は家で留守番してる......」
ものすごい急速で落ち込んで行っている様だ。これはこれで見てて面白いけど楽しくは無いな。
「だから誰もそんなの思ってないって。一緒に行こうよ。どこがいい」
気をとりなおしてみー姉に聞く。
「本当に? 変な子だって思わない? 一緒のところ見られても平気なの? 」
見た目だけで言えばかなりの美少女に入るし戦うところを見なければ鰹節を使うなんて全くわからないと思うがまあ本人にとっては大きい問題なんだろうな、と思う。
「全部オッケー!」
なんなら親指も立てる。
「じゃあ私あれ観たい!最近話題の映画!」
こうして次の休みはみー姉と一緒に映画を観にいくことになったのだった。
しばらく歩く。今日初めてパティスリーとやらに襲撃されたけどこれからもこんな日々が続くんだろうか。いまいち狙われる原因もよく分かっていないし......ちょっと気が重いな。
「ねえきーくん」
「何みー姉」
「今日お風呂一緒に入ろっか」
みー姉の一言に世界の全てが止まったかと錯覚する。お風呂一緒に入るって言ったのか? そんななんで急に言い出したんだ。実はこの人はみー姉では無いのでは。色々な想像が頭に浮かんで消える。
気づけばもう家の前まで来ていて、僕の口から出た言葉は。
「是非、お願いします」
「正直でよろしい!」
家の扉を開ける。こんなに緊張しているのはいつぶりだろうか。自分の家で緊張するのも変な話だ。
「ご飯とお風呂どっち先にする」
みー姉が聞いてくる。
「どっちでも」
「じゃあご飯先に作っちゃうね」
台所へとみー姉が向かっていく。その後ろ姿を見ながら考える。結局自分の狙われる原因は何なのだろうか。分かった事と言えばコインの表裏を当てられるという事だけだ。
しばらく考えて見たものの、結局わからなかった。あの時言いたくなさそうな雰囲気を感じ取ったし、聞かない方がいいのかも知れない。いつか教えてくれればいいけど......と思う。
そうこうしているうちにみー姉がご飯ができたというので一緒に食べることにする。ハンバーグだった。
「おいしいね」
「良かった」
要約すればこんな感じの会話をまるで砂糖がデコレーションされて層を成したケーキみたいに甘い言葉で遠回しに表現しながら食べたのだった。
食べ終わった後、片付けてから行くから先にお風呂に入っててと言われてお風呂に向かう。正直ご飯を食べてる時からものすごい緊張をしていて、今も脱衣所で口から出てきそうな心臓を抑えていた。
そうして緊張しながら入ったお風呂で、襲撃を受けた。
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