宇宙の海を走るヨット

 7月24日、アメリカ惑星協会(Planetary Society)の「ライトセール2(LightSail 2)」が、軌道上での帆の展開に成功しました。


惑星協会のライトセール紹介ページ

http://www.planetary.org/explore/projects/lightsail-solar-sailing/


 ライトセール2は、いわゆる「ソーラーセイル」「宇宙ヨット」と呼ばれる宇宙船です。日本だと、JAXAの「IKAROS」と同じ。太陽からの光子が帆に当たることで推進力を得ます。IKAROSについては、このエッセイの「宇宙の海を進むため(https://kakuyomu.jp/works/1177354054885557884/episodes/1177354054885657498)」で、少しだけ触れています。

 ライトセール2は、11.3×11.3×48.7センチのキューブサットですが、広げた帆は一辺が5.6メートルの大きさになります。IKAROSの帆は14メートルなので、かなり小さいものです。というのも、ライトセール2の目的が、光の力で「軌道遷移できるか(上の軌道に移動できるか)」の実証なので、サイズは関係ない、というか、小さい方が圧力を受ける面積が小さい分、大変ともいえます。

 IKAROSとの違いはもうひとつ、帆の展開方法です。ライトセール2はブーム(張り出し棒、支持架)を伸ばして帆を張ります。一方、IKAROSは機体を回転させて生まれた遠心力で帆を広げます。それぞれの方式には一長一短があり、ライトセール2のブーム方式は確実に展開できますが、ブームの分重く大きくなってしまい、IKAROSのスピン方式は軽くできますが、ブーム方式より確実性は劣りますし常に回転を維持する必要があります。


 ソーラーセイルの利点は、何といっても燃料が必要ないことです(IKAROSは姿勢制御用にスラスタも搭載しています)。また、ヨットの帆が、角度を変えることで自在に進行方向を変えられるように、ソーラーセイルも変えられます。ただし、太陽からの風は非常に弱いので、加速はゆっくりですし到達距離も限りがあります。JAXAが構想している50メートル級ソーラーセイル機でも、木星軌道程度までが限界と考えられています。


 それ以上遠くへ行くには、何か後押しする方法が必要で、巨大なレーザー発振器で加速するアイディアなどが考えられています。

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