嘘を知っていた女の思念

 孝行。私ね、知っていました。


 本当は私を愛していない事。私は「彼女」の代替品に過ぎない事。


 何もかも壊した私を、とても憎んでいる事。


 全部、知っていました。


 私は孝行をずっと見て来ました。遠くから、近くからずっと。分かりたくなくても、分かっちゃうんです。


 女ですもの。男性の嘘には敏感なんですよ。


 だからね、貴方が時々、本心から私を気遣ってくれた時、泣きそうなぐらい嬉しかったんです。


 本当に嬉しかった。


 きっと貴方は、私を赦す事は無いでしょう?


 良いんです、赦されようなんて思いません。


 孝行に相応しいのは、私じゃなくって、やっぱりキティーナさんです。


 こればかりは、幾ら考えても分からなかったけれど。でも、私じゃない。


 今までごめんなさい。


 もう貴方を追い掛ける事はしませんから、お願いを聴いてくれますか?


 それはキユリの事です。


 嘘だらけの私達でも、キユリだけは「真実」です。


 私のような女が産んだとしても、キユリは貴方の血が半分流れています。


 お願いします。あの子を嫌う事だけはしないで。


 せめて、あの子の半分だけでも愛してあげて。


 あちらの世界で、どうか娘と認めてあげて。


 あの子に罪は無い。恨みは全て、私が頂きます。


 孝行。


 最期に――妻の「振り」をして、あの子を護っても良いですか?

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