こぼれ話

『穢谷&春夏秋冬のちょこっと会話Part2』

 一二つまびらの援交証拠音声を入手した葬哉そうや朱々しゅしゅの二人。一二から逃げるように走り去った後、静まり返った夜道を歩いていた。


「それにしても、リアルにレイプするようなヤツいるのね。驚きだわ」


 ついさっきの出来事を思い返して言う朱々。


「ま、そんだけ一二の身体が忘れられなかったんじゃねぇの?」

「うわ何それ。あんた童貞だからわかんないでしょそういうこと」

「うるせぇなぁ!! てめぇが色々奢らせたりしなけりゃ今頃俺も一二に金払ってヤれてたかもしれねぇんだぞ!?」


 葬哉は声を荒げて朱々に言い返す。若干……というより普通にキレているようだ。


「はぁ? ついさっきあんた一二に金無しでオッケーって言われてたじゃない。それなのにあんたは私を呼んでチャンスを自分から逃したんでしょ? 私のせいにするのやめてくんない?」

「チッ……………………レイプされて人生ドン底に落ちろ」

「おい、あんた今ボソッとなんつった?!」


 煩わしいほどの地獄耳を持つ朱々に余計腹立たしくなった葬哉だった。




 △▼△▼△




 不正行為で一番合戦いちまかせに300点以上を取らせようということになった後、葬哉と朱々は二人、帰路を辿っていた。


「はぁ~あ! それにしてもアイツマジで腹立つわ。脳筋にもほどがあるわよ」


 朱々が大きなため息と共に、一番合戦の文句を漏らした。


「マジで学校辞めてどっか就職してくんないかな」

「あんだけバカだったらどこも雇ってくれねぇだろ」

「穢谷、それ特大ブーメランになってること理解してる?」

「うるせぇな。んなことわかってんだよ」


 投げやりに言い返す葬哉。しかし朱々の言葉は止まらず。


「そもそも穢谷は顔付きがダメよね。目付き悪いし人のこと信用してないし無能だしバカだしゴミだしカスだしクズだし」

「おいお前、後半悪口言いたいだけだろ。語彙力ねぇ小学生みたいになってんぞ」




 △▼△▼△




 たたりみやびの一件が終了し、葬哉と朱々は自宅の方向が別である雅と別れ、駅で帰りの電車を待っていた。


「それにしても……祟の胸、デカかったな……」

「ちょっと、聞こえてるんですけど」


 葬哉のボソっと呟いた独り言に反応する朱々。


「だってお前はおろか一二以上だったぞあれは!」

「キモい死ね。あんた私にだったら何言ってもいいと思ってる?」

「まぁ、そうだな。お前に引かれようが何されようがどうでもいいし」


 朱々は葬哉の物言いにはぁとため息を吐く。


「あんたも大きい胸が好きなその辺の男と一緒なのね」

「いや、俺的には程良いサイズが一番好きだけどなー」

「程良いサイズ?」

「うん。ちょうど俺の手に収まるサイズの程良い感じ」

「なによそれ。童貞のクセに変なこだわり持ってんのね」

「……」


 葬哉の視線が自分の胸に注がれていることなど露知らず、朱々は憎まれ口を叩くのだった。




 △▼△▼△




 月見つきみうさぎの娘、月見よもぎのベビーシッターを課せられた日。葬哉と朱々は乱子、雅と別れ、徒歩で駅まで向かっていた。


「あー疲れた……」

「疲れたって……お前今日何もしてないだろ。よもぎにビビってただけじゃねぇか」


 子供が苦手な朱々は、今日ずっとよもぎから逃げているだけだったのだ。


「それが疲れたって言ってるの! 私がどれだけガキに苦手意識があるか知らないでしょ」

「苦手意識っつうか、じんましん出ちゃってる時点でアレルギーだしな」

「そうなのよ、マジで今も痒い……」


 そう言って首元をポリポリかく朱々。


「お前、将来自分の子供とかどうする気なんだよ」

「いらないわよ子供とか。嫌いなもの一々作るバカいないでしょ」

「……旦那の方が欲しいって言ったら?」

「旦那に全部育児させる」

「春夏秋冬、お前絶対結婚するなよ」


 将来の旦那を不憫に思う葬哉なのであった。




【Part3に続く】

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