第38話 6日目②
さっきまでのマグマが嘘のように、辺りは暗くなった。気のせいか匂いも変わった気がする。どこか湿ったような、暗いような。いつのまにか、道も人が一人ぎりぎり通れるぐらいになっている。よって、隊列は正真正銘の縦一列だ。前から、御紋さん、僕、椎名さん、三谷さんだ。しりとりの時と並びが若干変わってる。
「なんか狭いね。」御紋さんが言う。
「うん。」三谷さん。
「怖いね。」椎名さん。
「みなさん、狭いところとか大丈夫ですか。」僕。
「私は、まあ、大丈夫。」と御紋さん。
「私も。織屋は大丈夫そう。双葉ちゃんは。」椎名さん。
「大丈夫そうって。間違ってないですけど。三谷さんは嫌ですか。狭いの。」僕。なんとなく、嫌いそうだ。
「織屋、勝手に決めないの。」御紋さんから怒られる。
「で、どうなの。双葉ちゃん。」結局御紋さんも訊いている。
「無視しないでよ。」お怒りの様子だ。でも、三谷さんの声がしない。ごめんごめん、とかすぐ言いそうなのに。何気なく後ろを向く。通ってきた道がふわふわっと見える。って、おかしいな。三谷さんは。
「あの。三谷さん、いないんですけど。」声に出すのが、怖いが、言ってみた。言った後の虚無感がすごい。
「え、織屋。おもしろくないよ。」椎名さん。
「え。」いっつも、織屋は面白くないよと言おうとした御紋さんも驚く。そう、いつのまにか後ろにいるはずの三谷さんがいないのだ。ずっと前しか見てないから気づかなかった。
「どうしますか。」僕がうろたえながら言うと、
「その辺にいるかも。」と御紋さんが大声で呼び始める。が声が洞窟に吸われるだけだ。いつもの三谷さんの役割である冷静なポジションをする、椎名さんが、
「でも、いなくなって、双葉ちゃんも自分で、はぐれようと思ってなかっただろうから、どこかに脇道があったことだろうね。気づかなかったけど。」と言う。
「たしかに。」知らずのうちに呟いている。
「でも、怖いよ。これ以上、はぐれたくないよ。」御紋さんが言う。
「そうですよね。私もあなたの背中を追っときますね。」ちょっとやばい奴っぽい発言だが、今はそんなことを言ってる場合ではない。
「そうしてよ。私一人だけになるのは嫌だ。」御紋さんが言う。
「ですよね。椎名さん。」とりあえず、椎名さんに同意を求める。
、、、。
声が帰ってこない。代わりに帰ってきたのは、御紋さんの怯えた声だけだ。
「ねぇ、織屋まさか、京華ちゃんもいないとかないよね。」
「はい、そのまさかです、、、。」空虚が声に、にじみ出る。
「じゃあ、もう二人だけ?どうする。」御紋さん。
「どうしましょう。とりあえず合流できることを期待して、進むしかないですかね。」僕のその声を聞いて、御紋さんが走り出す。
「下、岩ですから、危ないですよ。」僕の注意が届かないほどの俊足だ。でも、何とか追いつかねば。
わき道から、小さな女の子が、入って来た。なにやら、尋常じゃない雰囲気だ。なぜだろう。でも、ひたすら前を見ている。まるで、前に誰かいるように。一度立ち止まり、そして、誰もいないことに気づいて、また歩き出した。なんだろう、とりあえず、前に進もうという、意思が小さな体からひしひしと感じられる。
わき道から、というかあちらから見ればこちらがわき道かもしれないが、少女が入って来た。というか、降り立ってたきた感じがした。この少女は、普通に前に進んでいく。自信があるようだ。前に誰もいないのだが、それをわかってる雰囲気はしない。歩くテンポも乱れない。足音が洞窟に響く。すこしした後、少女は自分の響く足音を聞いて、なにかに気づいたようだ。自分の足音しかなっていないことにでも気づいたのだろうか。それは、この道に入ってからずっとだったのだが。
こちらは二人が走っている。この二人が一番怯えているようだ。勢いの良いフォームやペースとは裏腹に、二人のまとう雰囲気は、陰鬱だ。でも、それも、もう晴れるだろう。ほら、やはり。
「着いたー、織屋!」
不安の雲が晴れたようだ。太陽が出たのか、雨雲が覆いかぶさってきたのかは知らないが。
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