第31話 5日目③
「ねえ、やっぱり私たち水着の必要ないよね。」椎名 京華が三谷 双葉に愚痴をこぼす。
「でも仕方ないじゃん。京華ちゃんが分かったって言ったんでしょ。でも、もう恥ずかしくないでしょ。」
「たしかに慣れたけど、、、。」
「慣れたけど?」
「水の中でもないのに水着、着ててそれを織屋に見られるってのも、なんかね。恥ずかしいよね。」
「たしかに。」
「まあ、そんなこと言ってないで、宝箱、探すか。このレーダーはね、、、。」切り替えが早いのも椎名 京華の特徴の一つであろう。
『そういえば、水の中だと話せないから、これで話すんだよね?』僕が打った文字が画面に映る。コミュニケーションをとるためだけの、打って表示するだけのスマホみたいなものだ。とても便利だけど、一日二日で、壊れるらしい。椎名さんによると、ちゃんとつくろうとするのは、なんせ大変らしい。まあ、これで十分だろう。
『あたりまえでしょ。織屋もそれ分かって、これ使ってんでしょ。』御紋さんが画面を突き出してくる。はい、バカなこと訊きました。そう思いつつ、大きくうなずく。
『あと、潜水艦からの情報もこれに来るよ。』そう御紋さんの画面に表示されている。そんな説明あったっけと思って、
『そんな機能あったっけ?』と打つと、
『ごめん、私のだけだった』示した画面がこちらに向けられた。
『じゃあ、よろしく。』と返すと、
『仕方ないな~。(*´∀`*)ノ』と返ってきた。顔文字も駆使されている。なんかバカにされてるような。なんて思ったら、御紋さんの顔つきが変わった。
『重要!宝箱候補だって、地図、次ページ。』と見せてきた。さっきまでのは重要じゃなかったんだ、とも思いつつ、地図を待つ。この先をある程度まっすぐ行って、右手だ。
『ありがと。潜水艦にとりあえずついていくか。』と打って、見せて、泳ぎだす。クマノミも泳ぐ。僕たちより小さいのに置いていかれないということは、相当泳ぐのが速いんだろう。
「えっと、この真ん中の交差してるところが現在地で、こういう、光ってるまる印が宝箱候補って仕組み。って、宝箱候補っ?双葉ちゃん、とりあえず、宝箱候補っていう文面と、地図、初ちゃんに送っといて。私は操縦する。」そう言われた三谷 双葉はてきぱきと動く。この二人、中々コンビネーションが良い。
「これって、どうやって宝箱候補を探してるの?」まっとうな疑問。
「一応、レーザー出して、それの跳ね返ってきかたで区別してる。」理解をあきらめたのか、三谷 双葉が話題を切り替える。
「二人と一匹ついてきてるかな。ちゃんと。」右の窓から海を眺める、三谷 双葉。
「あっ来たよ。ほら。」左の窓の方を通ったようだ。
「そんなこと言ってるうちに宝箱のとこまで来た。その辺で探してみてって送って。」
「はーい。」
『この辺らしい。探すよっ。』この文字を見て、僕も泳ぎまわる。クマノミも雰囲気を察したのか文字が読めるのか、うろうろし始める。なんとなく、この岩の形が分かったという頃、御紋さんが利き手でない左手に持った画面を高く上げている。いつもは利き手の右手で画面を持ってるから、なんか見つかったのかなと思ったら、そのようだ。
『っぽいものを発見。ほらこっち来て。』とある。向かうと、潜水艦に近づいて箱のふたを開ける。出て来た海水がすぐ周りの海水と混じる。ただそれだけだった。御紋さんががっかりという顔とともに、箱を投げ捨てる。すぐ、次の候補地の地図が来たようだ。
『さすがに一発では当たらないか。次はこれ。』とある。
『そうですね。さぁ、次行きましょう。』そう返す。次は、いまのところから見て左奥。大分、拠点から離れてる気がする。拠点の位置、分かる?と訊くと、分かんない。二人は分かってるんじゃない、と来た。なるほど。
ひたすら、泳ぐこと七、八分。候補地に着いたようだ。大量のサンゴ礁が目の前にある。幻想的な紫だ。クマノミも感傷に浸ってるように、見える。中の二人からも見えるだろうか。そんなことを頭に思い浮かべながら、サンゴ礁の周りを回る。
なにかが日光に反射した。
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