第18話 3日目④
残った野菜と水で作ったスープを皿に入れこの子たちにあげる。
「うまかった。ありがとう。」アルミの子がしゃべる。
かっさかさかさ。ふるふる。とんとんとんと。他の三匹もお礼を言ってくれていそうだ。
「で、あなたたちは何者なの。」椎名さんが単刀直入に訊く。
「この人、話し方、怖い。この人に話す。」そう言って三谷さんの方を向くこの子。椎名さんは若干傷ついたみたいだが、慣れてるという顔つきになった。
「僕たちは魔物といえば魔物。でも悪さをするわけでもなく、みんなで、レナさんのお手伝いをしていたの。掃除したりね。」
「へぇ。みんなってこの四匹?」三谷さんが訊く。
「いや、20匹ぐらいかな。そうだよ。その子たちも弱ってるから、スープのませたい。僕たちと同じように運んできて。ここに。お願い。」と魔物。
「分かった。じゃあ、続きはあっち行きながら。織屋くん、いくよ。二人は待ってて。」三谷さんの指示。
「いや、私はもう一人でも大丈夫。京華ちゃんも行ってきたら。」御紋さん。
「分かった。行こう。」椎名さんが答える。御紋さんには残りの三匹を見ててもらう。僕たちは歩き始める。
「僕たちは、これ元の姿で、さっきまでの邪悪な雰囲気は魔王の魔法のせいなんだ。」
「じゃあ、魔王は一人一人に魔法をかけたの。」椎名さんが恐る恐る尋ねる。
「いや、その魔法はマリット教会にかかってて、だからはあそこから出た僕たち元の姿に戻ったんだ。」
「え、それならまた入ったら、戻るってこと?」三谷さん。
「もう大丈夫。さっきまでは体力がなくて魔法に対抗できなかったけど、今は大丈夫。だから、みんなにも飲んでほしいんだよ。」なるほど、そういうことだったのかと思いながら歩く。ちょうど教会に入ったところだ。三人の視線が注がれた魔物は変身しなかった。安堵の息が漏れる。
「よし。じゃあ、どんどん行こう。」椎名さんの声。
「そうですね。」これは僕。そう言いながら、上に進む。
ドルドルドル。ふぁぐふぁぐふぁぐ。ぼーん、ぼーん。ぞろろ。どすどす。ぽろぽろぽろ。ふっじゅふじゅ。いろんな声が重なってる。
「ぱわぱわぱわわん。ぱわぱ。ぱわわわ。」この子もなんか言っている。みんなで音の方へ行き魔物たちを抱える。二階も三階も思ってたより広い。途中、みんなで持てなくなると椎名さんが、梅を干すみたいな竹のざるを出した。これで百人力。魔物も感心したようで、椎名さんは少しうれしそうだ。これが黒魔術とさえ言っていた。もう三階の魔物も全部救出したかと思われたころ、鐘をならせる小部屋を見つけた三谷さんが、魔物を置いて扉を開けに行こうとした。が、
「どのみち開けたって、鐘は神に仕えるものしか鳴らせられないんだ。レナさんもきみたちには無理って言ってたもん。」そう魔物に言われて、階段を下りて行った。帰る途中に、あの鐘を鳴らせば神の御加護が一瞬強くなり、魔法も解けるのではないかと教えてもらっていた。
再び花壇に戻ると、三匹にやたらとなつかれた御紋さんが楽しそうに座っていた。頭に松ぼっくりの子がのっている。
「ただいま。」椎名さんと三谷さんがそう言って御紋さんが、
「おかえり。」「ふさふっささ。」「ふるる。」「とんとんと。」三匹と一緒に言っている時も、僕はスープを取り分ける。アルミの子が手伝ってくれる。
ドルドル。ふぁぐっぐ。ぼんーぼーん。どすどす。ぞろろ。ぽろろろ。ふっじゅふじゅ。ごどごど。れしれし。とるんとるんと。おくおく。わっとるわっとる。るみるみるみ。聞いたことのない鳴き声も聞こえて来た。段々元気になったのだろう。
「鐘は神に仕える者、いわゆる修道士や修道女しか鳴らせないみたいなの。」三谷さんが言っている。
「じゃあ、私が行かなきゃね。」今じゃすっかり元気になった御紋さん。
「でもこの子たち見とかないと。」そう椎名さんが言うと、
「子ども扱いするな。僕は人間でいえば、1206歳だぞ。僕がみんなをまとめとく。四人で行ってきたらいいよ。」椎名さん含め人間全員が、驚きつつ、ありがとうと言う。四人は、花壇を離れ、教会に向かう。
雲の動きが速くなる。
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