第8話 2日目②

「御紋さん、ココア、お願いします。」

「私も。双葉ちゃんは?」

「いる。」

「じゃあ、私のも含めて四人分ね。」いつのまにか、お盆の上にココアの入ったカップが四つのっている。

 朝ごはんを食べながら、今日の予定について話し合う。

「体が白くて、耳だけ黒いうさぎが鍵を持っているだよね。」椎名さんが言う。

「そうですね。とりあえず、そのうさぎは一匹だけらしいけど、見つけるしかないですね。」僕が言う。

「じゃあ、森を歩き回って、うさぎ探しだね。」と御紋さん。

「この椅子とかは、どうするの?」三谷さん。

「私が黒魔術で、一時的にドールハウスぐらいに小さくして持ち運ぶつもり。」黒魔女が答える。

「ドールハウスって。」御紋さん。

「人形サイズの小さな家のおもちゃみたいなやつですね。」答えておく。

「じゃあ、家具とか片付けて、うさぎ探しって感じ?」三谷さんがまとめる。

「そのまえに、飲み水だけ確保したいですね。」僕が言う。

「あそこまで、また行くの?」御紋さんが前、食料と水をとりに行った、『始まりの大地』の端にある、森を指さす。

「いや、『さまよえる森』にも川ぐらいはあるはずです。そこでいいかなと。」

「じゃあ、家具とかキッチンとか片付けて、川に行って、水汲んで、そのあと、うさぎ探しだね。」椎名さんがまとめる。

「そうなりますね。」僕が言う。

「OK。」三谷さん。

「ふぉっふぇー。」御紋さん。

「初ちゃん。口に食べ物入れたまましゃべらない。」椎名さんの注意。

「ふぁい。」

「だから。」そういえば、御紋さんは食べるのが遅いんだった。僕が速くて、椎名さんと三谷さんは普通ぐらいだろう。

「織屋くん、うさぎ、辞書に載ってると思う?」全知全能の持ち主が僕に聞いてくる。

「別に、魔界だけの亜種とかではないと思いますから、載ってるんじゃないですか。」答える。

「うん。『Animals』の項目かな。『Rabbits』だよね。あとは、写真で探すしかないかな。」パラパラと、ページをめくりつつ、話す。ところどころ、英語を僕に聞いてくる。かわいい。

「このうさぎかわいい。『Hares』って書いてある。読めない。双葉ちゃん分かる?」椎名さんが訊く。あなたもかわいいとか言うんですね。心の中で感想を呟く。

「分かんない。織屋くん。」そう呼びかける、三谷さんの横から、御紋さんが図鑑をのぞき込んでいる。見たいけど、まだ食べ終わってないから遠慮しているという感じだ。

「御紋さん、無理して食べなくていいですよ。」そういうと、

「おいしいし、無理してないよ。」そう返ってきた。おいしいといわれるのうれしい。

「なんて書いてあるんですか。」食器を洗いつつ訊くと、

「発音もわかんないけど、えいち、えー、あーる、いー、えすって書いてある。」

「たぶんそれは、Haresハーズですね。野うさぎですね。茶色っぽい毛並みですかね。」

「そう。すごいね。織屋。」椎名さんに言われる。

「それほどでも。御紋さん、食べ終わりましたか。」

「うん。ごちそうさまでした。」こっちにお皿を持ってきてくれる。

「耳だけ黒いのが見つからない。」三谷さんが不満げに言う。

「まだこっちも続いてるよ。『Rabbits』ラビッツの項目。」御紋さんがページをめくる。

「何気なく、発音いい。」椎名さんが言う。

「あっ、これじゃない。なんて読むの?」三谷さん。

「これは、ローマ字と一緒じゃない?多分シベリアンだよ。ねぇ、織屋。」こっちに視線を向ける。

「ちょっと待ってくださいね。」

「うん。『Siberian Rabbits』で、シベリアン種のうさぎってことですね。」

「じゃあ、探すのはシベリアン種か。」椎名さん。キッチンを小さくしながら。

「はい、次、家具の番。行くよ。」

 パン。

 家具がちっちゃくなる。

「よし、これで荷物は、、、。」椎名さんが言い終わる前に。

「あっ。あれ川だね。すぐ、左手にあったよ。」もう、御紋さんが『さまよえる森』に入って声を上げている。本当にさまよわれたら、大変だ。入口の方へ走る。他の二人も走っている。

「じゃあ、行くよ。」御紋さんが、バスガイドのように先頭を切る。

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