第6話 1日目~2日目
黒が基調だが、全体的には女子らしいデザインのベッド、いや四段ベッドの一番下でいま僕は寝ている。このデザインは黒魔女であり、これをつくった椎名さんの好みだろう。魔界に来てこんなことになるとは、と思いながら、今までのことを思い出す。
結局、四段ベッドにすることが決まった後、椎名さんが四段ベッドをつくりだし、まず、だれが何段目かを決めた。
「私は何でもいいですよ。高いのも平気ですし。」僕の発言を受けて、
「じゃあ、私、一番上。」と御紋さん。この展開を予想してたのか、
「私、上から二番目。」と椎名さん。
「じゃあ、私、下から二番目。」と三谷さん。
「私は、一番下で。」とあっという間に決まった。僕は一番下だ。
そのあとは、みんなで一緒に晩ご飯づくり。魚のムニエルと、ニョッキみたいなもの、野菜の副菜と魔界とは思えないしっかりとした献立ができた。御紋さんも三谷さんもできない、と言いつつ手伝っててくれた。それのおかげもあって、陽が完全に落ちるまでに食事となった。
「このムニエルおいしい。京華ちゃんが作ったの?」と御紋さん。
「いや、織屋の言うとおりにしただけ。」
「へぇ。織屋、ジョブなくても、役に立つね。」
「初ちゃん、その言い方はないでしょ。でも、良いよね、料理できる人がいると。」と椎名さん。
「ね。私の、全知全能は英語だし、役に立ちづらいよね。」
「いつか、日本語になるかもよ。」御紋さんが言った。
「そうだと良いけどね。」と三谷さん。こんな感じで会話をしながら、食事を楽しんだ。この四人で食卓を囲むなんて初めてだし、想像もしてなかったけど、とても心地よい。その思いが通じたのか、
「このメンバーだと安心するね。」と御紋さんが言った。
「うん。良い感じだよね。」と椎名さん。
「落ち着くね。」と三谷さん。
「そうですね。」と僕。
「そういえばさあ、この後あれで寝るんだよね。」黒魔女製の大きな四段ベッドに視線を向けながら、御紋さんが言う。
「うん。何時に起きる?」と三谷さん。
「あっ。」と自分の言葉に言葉を重ねる三谷さん。
「時計もないし、時刻と言う概念もここにはないよね。」椎名さんが続ける。
「じゃあ、どうする。誰かが起こす?」と御紋さん。
「その分担もどうかな。」と僕。
「たしかに。一番早く目覚めた人がその時にみんなを起こすってことでいい?」と御紋さんの提案。
「いいんじゃない。私そんな早く目覚めないし、だれか起こして。」と椎名さん。
「うん。私もいいよ。一番にはなりそうにないし。」と三谷さん。
「織屋が起きんの早そうだもんね。はい、決定。」と御紋さん。
「そうしましょう。」僕の一言で起きるときどうするの件の話し合いは終了した。
そう決めたから、ぐっすり寝ておきたいのだけど、眠れない。だから、頭の中で、今日のとても一日の出来事とは思えないことを振り返っていた。この上で、あの三人が寝ているのかと思うと、複雑な気持ちになった。まず、驚き。そして、後ろめたさ。クラスを超えて、学年の美少女と騒がれるレベルの女子三人と同じベッドで、段違いだが、一緒に寝ているのだ。ばれたらとやかく言われそうだ。あとは、などと思っていると、
―カタッ。
何か音がした。魔界だから、物騒な想像をしたけど、ベッドの梯子から人が下りて来ただけだった。
「あれ、織屋くん、ごめん起こしちゃった?」
「いや、眠れなかったんです。三谷さんはどうしたんですか。」
「私も眠れなくてね。星を見ようかと。」
「いいですね。よく見えそうです。街灯とかもないし。」
「でしょ。はい、こっち座って。」
「あ、はい。」
「ほら、辞書持ってきたの。星座がわかるかも。読んで。」
「魔界の星座は地球から見えるのと同じなんですかね。」
「あっ、たしかに。」
「でも、あれは夏の大三角、一緒ですね。」
「そう。良かった。ねぇ、織屋くん、あの星は?」
「あれは、さそり座のアンタレス、赤く光るんです、、、。」
寝れなくてよかった、なんて思いつつ、星座の解説をする。
「ねぇ、あの星は、織屋くん。」
「あれは、、、。」
星の輝く夜は続く。
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