トリアージ・ブラックタグのありふれた日常(後)

 消えた電灯を見上げたままセオが言う。


「……え、停電?」


「んな訳あるかよ。送電ケーブル地下だぞ。風くらいで切れるか」


「もしかして、共和国滅んだのかなっ」


「……や、あのねクレナ。嬉しそうだけどその場合俺達も道連れだかんね」


 とか言いつつダイヤも明らかに楽しげだ。幼い頃に強制収容所に押し込められ、戦闘に次ぐ戦闘というある意味単調な日々を強いられるプロセッサーは、イベントの類に飢えている。大嵐も停電も、滅多にないというその一点だけで彼らにとっては心浮き立つ一大イベントだ。


 面白がって心霊現象だの新型〈レギオン〉の攻撃だの宇宙人の襲来だの、停電の原因をあれこれ類推するざわめきの中、ふっと足音もなく静かな気配が立ち上がって出ていって、唐突にぱっと明かりが戻った。


「お、」


「あ、」


 安堵したような残念そうな声があちこちで漏れ、ややあってやはり足音もなくシンが戻ってきた。


「ブレーカー」


「なんだつまんね、」


 言いかけた途端にばちんっ、とすごい音がしてまた電灯が消えた。


「……」


 全員なんとなく黙って消えた電灯を見上げる。今度はシンも動かなかった。


 突然知覚同調パラレイドが起動して、『音声通信サウンド・オンリー』のホロウィンドウの向こうで神経質そうな若い男の声が言った。


『ハンドラー・ワンよりスピアヘッド戦隊。今すぐ無駄な電力消費をやめろ。メディカルユニットのメンテナンスができない』


 グラン・ミュールの向こう、共和国八五区内の国軍本部にいる指揮管制官ハンドラーの声だ。ご大層な肩書と尊大な態度に反して所詮は単なる家畜の見張り番に過ぎない、何の役にも立たない名ばかりの指揮官。


 ブレーカーが落ちたのはそのせいかと、クジョーは顔をしかめる。


 メディカルユニットは各前線基地に軍医の代わりに配置された医療機械で、傷病の種類と程度を自動判定して適切な治療を行う、白ブタども曰くの画期的な戦場医療システムだ。


 ただし治療選別トリアージ基準は大分頭のおかしい設定がされていて、治療すればすぐに戦線復帰できる程度の負傷までしか治療してくれない。しばらく動けないような重傷は、それが手当てをすれば充分助かる傷でも『救命不可』と判定して見捨てるのである。戦力にならないプロセッサーに無駄な餌をやりたくない、共和国の価値観が露骨に現れた設定だ。


 当然、プロセッサーからは役立たずの冷血機械と大層嫌われている。


 嘆息してシンが口を開く。ハンドラーとの交信は、基本的に戦隊長の彼が担当している。


「ハンドラー・ワン。昼間の補給の遅れで、〈ジャガーノート〉の整備作業が完了していません。緊急性の低いメディカルユニットのメンテナンスは後にしてください」


『知ったことか。早くしろ、メンテナンススケジュールが終わらないと俺が帰れない』


 全員が聞えよがしにため息をついた。まるで使いものにならないメディカルユニットのメンテナンスなどを〈ジャガーノート〉の整備より優先されてはたまったものではない。ましてやハンドラーの残業など果てしなくどうでもいい。


『聞こえているぞ豚ども。上官への礼儀くらい弁えたらどうだ』


 豚が礼儀正しくお喋りすると思っている馬鹿に払う敬意など最初から持ち合わせていない。


 全員から無視されて、ハンドラーは苛々と息を吐く。


『この、無礼な色つきどもが……まあいい。貴様らエイティシックスなどとつきあわねばならんのもこれが最後だろうからな。精々必死に〈レギオン〉と戦って、とっとと死ね』


 ああ、とシンが無関心な声を出す。


「そういえば、退役するそうですね。他に仕事がないから軍に入ったそうですが、次の就職先は見つかったんですか」


 ハンドラーはぎょっと口を噤んだ。


『……誰から聞いた』


 酔っぱらったお前からだよとは全員が思ったが、答えてはやらなかった。ハンドラーは薄気味悪そうな声になる。


『まったく、油断も隙もないな“死神”……忌々しい死霊憑きの化物め』


 むっとクレナが顔をしかめ、セオが冷ややかに目を細めたが、当の本人は気にした風もない。


 結局ハンドラーの方が沈黙に負けた。


『……なんだ。生き汚い家畜としては、次のハンドラーご主人様が気になるのか?』


「興味ありません」


 きっぱりとシンは言い切ったが、ハンドラーは聞いていない。


 なぜか得意満面に話を続けた。


『まだ本人には話はいっていないらしいがな。お嬢ちゃんだ。元貴族の、飛び級で大学を出たエリート様だとさ。ま、そんな世間知らずのお嬢様にまともな指揮なんか取れるわけがない。貴様らを無駄死にさせるのが関の山だろうよ。……エイティシックスには相応しい末路だな、ざまを見ろ』


「……」


 黙っているのは心底どうでもいいからだろうなと、無言のシンにクジョーは思う。プロセッサーは、ハンドラーなど信用しないしあてにしない。いてもいなくても大差がない……変に無駄吠えされない分、いない方がいいくらいだ。だから、どうでもいい。


 それを寂しい考え方だと思う感性も、多分、とうの昔に捨ててしまって。


 結局くだんの後任様の話はまるきり無視して話を戻した。


「どうせ辞めるのですから、スケジュールなど気にせず帰ればいいのでは?」


 むしろとっとと帰れと言いたげな口調だった。


『馬鹿を言うな。命令違反などすれば俺の評価が下がる。ただでさえ一匹無駄死にされて迷惑を蒙っているというのに、この上そんな――』


 シンは思い切り舌打ちした。ハンドラーは露骨にびくっとなった。


 そう――どんなにいきがっても、こいつは本来使うべき知覚同調パラレイドさえ、シンに対して出来ない程度の。


『と、とにかくこれは命令だ。格納庫の作業が中断できないなら隊舎の電灯でも消せ。いいな。貴様らの役目は共和国市民の代わりに死ぬことであって、こんな夜に遊びほうけることじゃないんだ』


 言い終わるなりハンドラーは逃げるように知覚同調パラレイドを切った。シンを含め、全員がもう一度盛大にため息をついた。




 バカの言うとおりにするのは業腹だが、まさか生命線である〈ジャガーノート〉の整備を後回しにするわけにもいかない。


 そういう訳でとうとう食堂の電灯も消し、放棄された軍基地から持ち出した化学照明灯ライトスティック一つを吊るした暗闇の中、それはそれで面白がる空気が醸成されるのだからプロセッサーというのは本当に図太い。


 整備の騒音と小石をぶちまけるような雨音と女の悲鳴じみた風の叫喚をよそに、塔の形に積み上げた木片を抜いて上に積んでいくゲームを手元が暗いのにあえてやってみたり、怪談話で盛り上がったり、ラベルの見えない長期保存の飲料缶の中身を適当に混ぜた液体を回し飲みしてみたり。シンもこの暗がりでまで読書にいそしむ気はないらしく、ライデンが持ちかけたチェスに応じていた。


「……しかし、女のハンドラーってのは珍しいな」


 進める前のクイーンを片手で器用にくるくる回して考えながら、ふとライデンが言った。


 市民の平等、先進国家を標榜する割に、共和国正規軍は旧態依然とした男社会だ。加えて明らかに失業者の受け皿と化している節があり、若い女性、それも大学出の良家のご令嬢がわざわざ入るような組織ではないはずだが。


「それもお嬢様だってな。見たことねーよなそんなの」


 夜目にも飲んじゃ駄目と一目でわかるとんでもない色彩の混合液体を噎せこみながら飲み下して、ダイヤが受ける。若干顔色の悪いハルトにグラスを回してから続けた。


「どんなんだろな。やっぱあれかな、すっげー美人! のお姫様かな!」


 思い切りふざけた口調に、察した仲間達が悪ノリする。


「決まってるだろ。……すっげー美人のお姫様のブタだ」


「それもボインだ。何しろブタだからな」


「白ブタだもの。当然よね」


 こんな感じ? と絵の得意なセオがさらさらとスケッチブックに何か書きつけ、回された仲間達が次々噴き出す。クジョーも受け取って大笑いした。フリルたっぷりのドレスで着飾った、縦ロールの白い仔ブタが、気取って取り澄ましたウィンクをこちらに送っていた。


「うわー、なんか、ピンクの薔薇とか背負ってそう」


「もう、これはあれね。語尾は『ですわ』で一人称は『わたくし』ね。絶対そう」


「なら、挨拶は『ごきげんよう』で許可は『よくてよ』か。……流石のシンも三日くらいで切れそうだな」


「んじゃ、セオなら初日かな」


「何言ってんのハルト。一言目だよ決まってるだろ」


「いやいやわかんねーぞ。刺繍針より重いものを持ったことのない、病弱な深窓の御令嬢かも」


「雨風強い日差しにあたると死んじゃいまーす、的な」


「ねえ、それ軍人?」


「そんで気弱で臆病で小さい声で自信なさげにぽそぽそ喋って、か。……その方がよっぽどイライラすんな」


「諸君、落ち着け、冷静になれ。単に行き遅れの不細工の厄介払いだ。そうに決まってる」


「何言ってんだよ女神だよ女神。慈悲深くも哀れなる我らエイティシックスを救い給わんと穢れた現世に降臨した女神の化身……それこそが次のハンドラーであらせられるわけだよ」


 新任のハンドラーを即興の連想ゲームのお題にして好き勝手言い合う仲間達に……ふと、クジョーは目を細めた。


「……そうだな、」


 女神ではないとしても。優しいお姫様ではないとしても。


「いい奴ならいいよな」


 その程度の夢でも、せめてひととき、見ていられれば。


 その程度の救いでもなければ、守りたかった奴ももういないのに、こんな馬鹿げた戦場でなんて、本当は。


 視線を向けた先、スケッチブックを片手に苦笑していたシンが肩をすくめた。プロセッサーの評価として、善良なハンドラーというのはえてして無能の同義語だ。むしろ無能ですめばいい方で、平時の倫理を戦場にも振りかざす類の『善人』は、無駄に犠牲者を増やすという点で害悪にすらなりかねない。


 ハンドラーは何もかも現場に丸投げの、職務放棄の馬鹿が最良だというのが、プロセッサーの共通した意見である。


 むぅ、とクジョーは口を引き結ぶ。それはそうなのだが、そう割り切ってはいられない時だって――。


 不意にシンの纏う空気が冷えた。


 呼び声を耳にした猟犬のようにぴくりと顔をあげ、ついで視線が遥か東方に――〈レギオン〉支配域の方角に向けられる。


 その意味を知る全員が息を詰めて見守る。ややあってわずかに鋭利を増した冷徹な紅い双眸に、ライデンが目を眇めた。


「……出撃か」


「ああ。第二戦隊以下の連中で対処できる数じゃない」


 夜間の戦闘は原則として同じ第一戦区所属の第二から第四戦隊の管轄だが、彼らから救援要請が出た場合は第一戦隊であるスピアヘッド戦隊も出撃することとなる。


 戦隊間の直接連絡は禁じられているため必ずハンドラーを介さざるを得ない救援要請は、特にハンドラーが帰宅して不在の夜間は、致命的に遅れがちだけれど。


 スケッチブックを叩きおいてセオが立ち上がる。スピアヘッド戦隊配属以前からシンの指揮下で戦ってきた連中は、慣れている分対応が早い。


「整備班に知らせてくる。猶予どれくらい?」


「最大でも三時間。準備ができ次第、救援要請を待たずに出撃する」


「わかった」


 夜目の利く猫さながら、暗闇の中を格納庫へとセオが駆けていく。その後ろ姿は一顧だにせず、シンは残った隊員達を見回した。見返す、既に笑みも私語の一つもなく、緊迫と戦意にぴんと張りつめて鋭い二十対の瞳。


「各自、今のうちに仮眠を取っておけ。状況次第では夜を徹しての戦闘になる。作戦開始後は休息はとれないものと考えていろ」


「了解」


 血赤の双眸は、けれど、戦意でも覚悟でもなくただ常のとおりの淡々とした静謐さで、クジョーはふと、ぞっとなる。


 恐れていない。圧倒的に不利な〈レギオン〉との戦闘も、その果ての誰かの死も、――おそらくは自分自身の死でさえも。


 ただ、静謐で冷徹な。


 その――異質。


「〈ジャガーノート〉の準備が整うまで、こちらは動けない。相当数の死傷者が出ているだろうが、あくまで〈レギオン〉の掃討を優先しろ。……戦場で人を助けようなどと、甘いことは考えるな」




『――戦隊各位。貴方がたのハンドラーが不在のため、代理で連絡しています。同戦区の第四戦隊より、救援要請が出ています。対応をお願いします』


「了解、ハンドラー。……親切に、ありがとうございます」




 迎撃に出た友軍はシンの予測どおり〈レギオン〉の大群に抗しきれず、作戦域である放棄された都市の廃墟はやはりシンの予測どおり、大量の死体と瓦礫と擱座した〈ジャガーノート〉の残骸が転がっていた。


 友軍を蹂躙していた〈レギオン〉部隊は、今は逆に側面からの急襲をかけたスピアヘッド戦隊によって隊伍をずたずたに寸断され、廃都市の各所で各個に撃破されている。


 その文字通りの先頭に立つ、首の無い骸骨のパーソナルマークを負った〈ジャガーノート〉に目を留め、クジョーはそのまましばし目を奪われる。〈アンダーテイカー〉。シンの機体。


 強い。


 おそろしく強い。あらゆる性能において〈ジャガーノート〉を凌駕する〈レギオン〉を、培った技量と勘で圧倒するその無二の戦闘能力。最も損耗率の高い前衛ポイントマンを、それも近接戦闘に特化した〈アンダーテイカー〉で務めながら敵弾の一発、敵刃の一撃も喰らわず、悪夢じみた姿をした機械の魔物どもを次々に屠るその姿は、雨をも圧して揺らめく焔と夜闇の中で、何か神話のおそるべき怪物のようだ。


 そう、シンは強い。


 それはただ戦闘に長けているというだけでなく、精神こころの面でもそうなのだろうとクジョーは思う。


 シンは、笑わなくても苦境に負けない。夢など見なくても、絶望に屈しない。


 誰より死の近くに在るくせに、……自分のように、死の恐怖に押し潰されそうな中で必死に笑って、空元気で誤魔化して、仲間を縋るよすがにしていなくても、己の在り様を保っていられる。


 周りの誰もが死んでいなくなったとしても、シンはきっと、一人きりでも戦い抜くのだろう。


 それを羨ましいと思わなくもないが、同時にそれは、ひどく寂しい。


 だってそれは、人の生き方ではない。それは氷刃ひょうじんの生き方だ。何かを斬り捨てる、ただそのために研がれ磨かれ、目的を果たした後はそのまま折れ砕ける――それ以外に何も持たぬ、一振りの剣の在り様だ。


 それはきっと、ひどく寂しい。


 だからせめて、何か――誰か。何でもいい、目的の他に心を留める何かが――誰かが。


 在ってくれればいいのだけれど――。


 夢物語とさえ言えない、儚い願望だとはわかっている。地の果ての戦場に閉じ込められた彼らに新しく関わる人間はもうハンドラーくらいしかいず、それも大抵はどうしようもないろくでなしだ。救いなど今更、この戦場の誰にも訪れるわけがない。


 ああ、でも、さっきのあいつはまだ良かったな。


 先刻聞いた、銀の鈴を振るような少女の声を思い出してクジョーは口元を緩めた。出撃直前、自分の管轄の戦隊でもないのに救援要請が入っていることを知らせてくれた、どこかの戦隊のハンドラー。


 同調対象設定がないから知覚同調パラレイドが使えなくて基地の無線機に連絡してきて、小隊長以上の全員は作戦会議でいなかったからクジョーが応じた。話したのはごく事務的な連絡にすぎなかったけれど、それでも善良さと真摯さが如実に滲む、澄んだ、優しい響きの声だった。


 例えばあんな、誰かであれば、あるいは。


 裂帛の声が思考を破る。


クジョーシリウス、何をしている! 足を止めると死ぬぞ!』


「っ、悪い、カイエキルシュブリューテ!」


 彼の所属小隊の小隊長であるカイエの叱責に、慌てて機首を巡らした。機体下部の光学センサの映像が、断片的にスクリーンに映る。燃える瓦礫。吹き飛んだ〈ジャガーノート〉の脚部とキャノピ。その傍らで炎を上げる、相打ちになったらしい近接猟兵型グラウヴォルフの巨体――。


 聴音センサが、か細い声を捉えた。



『――たすけて』



 息を呑んで振り返った先。降りしきる雨と踊り狂う赤黒い焔の狭間に、確かに動いてこちらに手を伸ばす、野戦服の人影。生存者! 脱出していたのだ!


 ミナの死にざまが脳裏をよぎった。実際には見てはいない、けれど幸い、長くは苦しまなくてすんだろう親友。けれどこのプロセッサーは放置すれば苦しんで死ぬ。そして何もしてやれなかったミナとは違い……まだ助けることができる!


 キャノピの開閉レバーに手をかけた。〈ジャガーノート〉には何かを掴めるようなマニピュレーターはない。引っ張り出してやるには、自分の手でやるしかない。


 一瞬――何故か、出撃前のシンの警告が脳裏をよぎった。


 ――戦場で人を助けようなどと、甘いことは。


 頭を振り、レバーを引いた。圧縮空気が抜け、砲身ごとキャノピが跳ね上がる。篠突く雨が体を叩く。


「――おい、大丈夫か!?」


 そして。




 管制室の扉を叩きつける大音響に、ハンドラー共用のオフィスで残った仕事を片づけていたハンドラーの少女は驚いて顔を上げた。


「くそっ、なんで今になってこう立て続けに……! 俺の評価を下げやがって……!」


 吐き捨てた同僚が苛々と歩み去るのを唖然と見送る。仮にも職場という公の場に、およそ相応しからぬ感情的な振舞で言動だ。


 神経質そうな細面の横顔には覚えがあって、先程不在の間に救援要請のメッセージウィンドウが情報端末に明滅していて、それで代わりに連絡を入れた戦隊のハンドラーだ。勤務中にも関わらず何処かで酒でも飲んでいたのか、管制のために呼び戻すのも一苦労で。


 担当する戦区と戦隊はハンドラー同士でも開示はされないから、彼がどの戦区のどの戦隊を担当していたのかはわからない。けれど今の様子からして、……戦闘の結果は、芳しいものではなかったようだ。


 でも、それで真っ先に出るのが、自分の評価の心配と恨み言。


 文字通り人を人とも思わぬ、共和国市民と共和国の現状に、今更ながら少女は顔を曇らせた。先程救援要請の連絡で少しだけ話した、知らない戦区の、その防衛戦隊のプロセッサー。


 少し年上らしい青年の声だった。少し哀しげな、人恋しい響きの潜む声音の人だった。


 その、彼らが人間ではないなんて――そんなことはないのに。


 思って、少女――第九戦区第三戦隊指揮管制官ハンドラー、ヴラディレーナ・ミリーゼは、どことも知れぬ遠い戦場で、祖国から悼まれもせずに散った誰かのために、そっと目を伏せて祈りを捧げた。



◆かくて、ここではレーナとシンたちの運命は、近づきつつも、すれ違ったまま――彼らの物語が気になる皆様は、『86―エイティシックス―』を読もう!◆


◆そして来週からは、ついに「あの日」に至るまでのエピソード『86―フラグメンタル・ネオテニー―(仮)』がスタート!。21日(土)更新予定!◆

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