あとがき

※致命的なネタバレを含むため、あとがきの先読みはおすすめしません。最終話を読まずに先にここへいらっしゃった方がおられましたらお気をつけください。







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 視界が白くかすんでいる。目は開いているようだがよく見えない。

 あれ? 死んでない。

 ぼんやりした頭でおかしいなぁと思う。確かに勇者の剣は胸を貫いたのに。

 体は思うように動かず、胸が激しく痛む。でも、どうなっているか、分からない。

 身をよじろうとすると、生暖かいものが口いっぱいに溢れた。遅れて血の臭いが広がる。

 息が苦しい。息をするたびに体の中で嫌な音がする。その音を聞きながら、目を閉じて眠ってしまいたかった。

 けど。彼方はどうなっただろう。ちゃんと帰っただろうか。それだけが気になって、全力で目蓋が落ちるのに抗う。

「お、気がついたか」

 黒い影が目の前に揺れる。たぶん彼方なのだろう。顔を覗きこんでいるらしい。焦点が合わず、どんな顔をしているのかは、分からない。

「ムリに動こうとするなよ? お前、胸に穿あいてんだから」

 そんなことになってるのか。我がことながらすげー。

「魔王の力は全然使ってなかっただろ、お前。あんまり癒着してなかったからな、邪晶石だけ破壊してみたが」

 うっすら像を結んだ彼方の顔はどこか沈鬱だった。せっかく世界を救った勇者なのに。

「正直、助かるかは分からん。……俺がしてやれるのは、ここまでだ」

 大きく息をつき、感傷を振り払う。険しい顔で厳しい声を出す。

「どっちにしろ、俺も時間が無ぇ。そのうち送還されるだろう。その前に、お前に聞かなきゃいけねぇことがある。……分かるよな?」

 微かに頷いてみせると、彼方も「よし」と破顔した。

 でも声出るだろうか。痛みを堪えて息を深く吸い、吐く。

「――ふ」

 壊れた圧縮ポンプみたいな音なら出るようだった。血混じりのつばを飲みくだし、もう一度息を吸う。

「――は。……魔王、倒した報酬、が。冷蔵庫に、生ハムたくさん、あるから。持ってって」

「え! 生ハム!? まじか、やった! ……って、違うだろッ! 俺が聞きたいのは黒幕の情報だろッ!」

 耳慣れた彼方のノリツッコミに思わず笑いがこぼれる。胸の傷がずきりと痛んだ。




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最後までお付きあいいただきありがとうございました!


まじのあとがきはこちら

https://kakuyomu.jp/users/takapashied/news/1177354054885882650

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かっぱの彼方さん たかぱし かげる @takapashied

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