「はしたない超絶美少女がお好みですか?」

愛と憎しみの振幅。


その揺れ幅はあまりに大きくて、バトルの度にヨシキさんもわたしも、気力体力ともにすり減らしていった。

わたしたち、どうしてこうなってしまったんだろう。

これがヨシキさんのいう、フィフティ・フィフティーな恋愛?

それとも、いつか優花さんの言ってた、モテ男とつきあう代償?


この2ヶ月間で、愛と憎しみは隣り合わせだってのは痛いほど思い知ったし、その感情はなかなかコントロールできないことも、身をもって思い知らされた。

だけど、、、

正直言って、疲れた。

なにも知らず、無邪気にヨシキさんと恋のステップを登ってた頃が、懐かしい。

もうあの頃には、戻れないんだろうか…



 ひとしきり窓辺で愛撫したあと、ヨシキさんはわたしをベッドにいざない、横たえる。

ヨシキさんのしなやかな指先が、首筋から胸、おなか、腰、ふとももをなぞっていき、熱い蜜をたたえた泉へと吸い込まれていく。

敏感な突起を優しく撫でて、わたしを快感の海へといざなっていく。

硬くなったヨシキさんのモノに、わたしの形はすっかり馴染み、まるでぴったりと重なる鍵の様に、ヨシキさんはわたしのからだを開き、快感の宝石を取り出してくれる。

何度も何度も、まばゆい光で目の前がきらめき、わたしは絶頂エクスタシーに酔いしれた。

つかの間の幸せ。

今度こそ。

この平和がいつまでも続いてくれますように…



「凛子ちゃん、いきなりブレイクしたな」


 ベッドに横たわって寄り添うわたしに腕枕しながら、二ヶ月前にわたしが出演したCMの件を、ヨシキさんは話しはじめた。


「例のポスター大人気じゃん。凛子ちゃんが薙刀を上段に構えてこっち睨んでるやつ」

「ええ。結構盗まれてるらしくて。でも、代理店の方は喜んでましたけど?」

「変な話だけど、それはある意味ステイタスなんだよ。盗りたくなるほど魅力的ってことで」

「そうなんですか」

「CMも見たけど、さすが全国なぎなた選手権大会6位だけあって、迫力あるよ。おまけにすっごい美少女に撮れてるし。もう別の仕事のオファーがいくつも来てるんだって?」

「ええ」

「このまま一気に、トップモデルに駆け上がりそうだな。そうなったらオレなんかが撮らせてもらえなくなるかも」

「そうですね」

「はは。そこ、否定しろよ。凛子ちゃんを一番綺麗に撮れるのは、このオレなんだから」

「ヨシキさんは今でも言えます?」

「なにを?」

「はじめてスタジオで写真を撮ってもらったとき、川島社長に言ってたじゃないですか。

『どんどん人気出て、トップモデルになれば』って。

そして、『みんながどんなに凛子ちゃんを望んでも、抱けるのはオレだけなんて、快感』だって」

「そうだったな。それもすぐに現実になりそうだな。

ぶっちゃけ、こんな短期間にここまでブレイクするなんて、やっぱり凛子ちゃんはオレの見込んだとおりだった。そんな凛子ちゃんを抱けるオレは、幸せもんだよ」


そう言いながら、ヨシキさんはベッド脇に置いてあったカメラを手にとり、わたしに向けた。

お互いまだ服を着ていない。

ヌードをヨシキさんに撮られるのはもう慣れたけど、わたしはわざとシーツにくるまって、からだを隠した。


「ダメ。撮らせない」

「え。どうして?」

「わたしはそんなに安っぽくないんだから」

「へ~。いいなそれ。お高くとまったモデルみたいで」

「それに、事務所からきつく言われてるんです。『清純なお嬢様のイメージを崩すようなことをしないように』って」

「ははは。大丈夫だよ。オレのセキュリティは完璧だよ。凛子ちゃんのプライベート画像を、ネットなんかに流出させるわけないだろ。

たとえ別れたとしても、リベンジポルノみたいな情けない仕返しはしないよ。絶対」

「それは、信用してますけど」

「だけど凛子ちゃんも、とんだ詐欺師だよな。本性はこんなに淫乱で露出狂なのに、『清純なお嬢様』だなんて」

「違うって言いたいんですか?」

「ま。『お嬢様』は嘘じゃないけど」

「清純は嘘だとでも?」

「だって、こんなにエッチが好きで、一晩中できるくらいタフで、海でも温泉でも神社でも、ところ構わず脚を開く凛子ちゃんが、今さら清純だなんてさ」

「ひどいっ。それは、相手がヨシキさんだからです。ヨシキさんにしかこんなはしたない姿、見せませんっ。絶対!」

「はは。わかってるよ。光栄だよ」

「ほんとにそう思ってますか?」

「ああ。凛子ちゃんはすごいよ」

「すごい?」

「こんなにはしたない超絶美少女なんて、最高だよ」

「それって、褒めてますか?」

「最高に褒めてるよ」

「じゃあ、もっと褒めて下さい」

「淫らでいやらしいくせに、だれよりも綺麗で清純そうな凛子ちゃんが、オレは大好きだよ」

「もっと」

「凛子ちゃんはオレの女神だよ。凛子ちゃんに出会えて、エッチできて、こうしてお互いを共有して、人生の一部を共に歩むことができて、オレは最高に幸せだよ」

「ふふ…」


含み笑いをしながら、わたしはヨシキさんを押し倒し、胸に唇を這わせ、下腹部に手を伸ばす。

わたしの指のあいだでもてあそばれた彼のモノが、むくむくと頭をもたげてくる。

ヨシキさんにまたがったわたしは、再びたけったモノを、自分のなかに埋め込んでいった。


「もっと、もっと共有したいです。ヨシキさんのなにもかもを」

「凛子ちゃん…」

「もっと、もっと見て。はしたないわたしを…」

「ああ。見てる。最高に淫らで綺麗だよ。凛子は」

「あぁ。もっと…」


熱く昂まったモノを秘部に収めながら、わたしはヨシキさんをベッドに押さえつけ、最初はゆっくりと、そして淫らに大きく、腰の動きを速めてく。

わたしの両脚の間で、ヨシキさんは切なげな、それでいてうっとりと満ち足りた瞳で、わたしを見上げてる。

その表情がいやらしくて愛おしくて、わたしは快感と欲望のおもむくまま、激しく腰を打ちつけていった。


愛と憎しみの振幅。


針は今、『愛』に大きく傾いている。


つづく

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る