「エロい水着で悩殺してほしいですか?」

「うちの社長が福岡県出身で、ここはお気に入りの場所らしいんだ。CM撮影の時にオレも連れて行ってもらったんだけど、こんなに綺麗なのに人も少なくて、穴場的ないい場所なんだよ。

近くのホテルは南欧っぽい作りでお洒落だし、お泊まりさえできるんだったら、ここに連れていってあげたいんだけどな」

「そうですね… 一泊くらいなら、なんとかなると思います」

「ほんとに? じゃあ行こう。前は仕事だったけど、今度はぜひプライベートで、大好きな人と行きたいと思ってたんだ。

この海で凛子ちゃんを撮りたい。

きっと素敵だと思うし、凛子ちゃんも気に入ってくれるよ」

「それは嬉しいですけど… でもさすがに、山口は遠くないですか?」

「沖縄よりは近いよ」

「そうだけど… わたしは高校生だし。都内くらいで綺麗な海って、ないですか?」

「だったら新島くらいかなぁ」

「それって、伊豆諸島じゃないですか?」

「一応東京都だよ」

「伊豆とかはどうですか? 下田あたりまで行くと綺麗だって、聞いたことがありますけど」

「まあ、綺麗なのは確かだけど…

基本的に海の色が違うし、今の時期はまだ人も多いしな。新島は交通が不便で、泊まりじゃないと日程組みにくいし。結局、山口の方が安くて、人も少なくて、行きやすいんだよな」


どうやらヨシキさんは、山口の海にこだわっているみたい。

どうせなら、わたしもヨシキさんお薦めの場所の方がいいし、旅費や宿泊費は貯金を下ろせばなんとかなるだろう。


「わかりました。わたしもその、山口の海に行きたいです」

「やった!」

「あの… 旅費とかは、いくらくらいかかりそうですか?」

「ああ、それは心配しないで。費用はオレが出すから」

「そんな。悪いです」

「いいんだよ」

「そんなわけにはいきません」

「凛子ちゃんは高校生で、バイトとかもしてないだろ?」

「それはそうですけど…」

「いっしょに綺麗な海に行けるんだったら、そのくらいなんてことないよ。ほんとに」

「そ、そうですか?」

「任せてよ」

「では… わたしに他になにか、できることはないですか?」

「そうだな。エロい水着で、オレを悩殺してくれればいいよ」

「ええっ?!」

「ははは、冗談」


ヨシキさんは茶目っ気たっぷりに笑った。


海か…


ヨシキさんと海に行けるのは嬉しいのだけど、お泊まりでというのは、まだちょっぴり恥ずかしい。

そりゃ、昨日はヨシキさんの部屋に泊まり込んだのだし、今さらという気もするけど、こうやって改めてふたりで旅行となると、それはそれで緊張してしまう。

お泊まりの件は、また優花さんにアリバイをお願いするとして、問題は水着。

ダサい競泳用とスクール水着しか持っていないし、なんとかしなきゃ。



 陽が西に大きく傾くまで、海ほたるのカフェでアイスティーを飲みながら、わたしたちはバカンスの計画を話し合った。ヨシキさんは、飛行機の時間や料金を手際よくネットで調べて、いろんな案を出してくれる。

話し合った結果、わたしの家を7時頃出て、羽田から北九州空港まで飛び、そこでレンタカーを借りることにした。

そうすれば昼頃に、目的地の山口の角島というところに着くらしい。

その日は海で一日過ごし、近くのリゾートホテルで泊まって、翌日は夕方の4時くらいに出発すれば、門限前には家に帰り着けるとのことだった。

スマホでいろいろと検索していたヨシキさんは、嬉しそうに声をあげた。


「おっ。ホテルの方はまだ空きがあるみたいだ。

宿泊と往復航空券がパックになったプランもあるし、マイレージを使えば、新島に行くより安くすみそうだよ」

「すみません。本当に、お言葉に甘えてしまっていいんですか?」

「いいっていいって。じゃあ日にちは8月30、31日ってことで、ポチるからな」

「お願いします」

「夏休み終了ぎりぎりだな。それまでに宿題は終わるよな。リゾートホテルで宿題の追い込みとか、そんなギャグ漫画みたいなのはゴメンだから」

「大丈夫です」

「はは。凛子ちゃんのことだから、それは心配してないけどな。そろそろ行こうか」


そう言ってテーブルのレシートを手にとり、ヨシキさんは立ち上がった。

クルマに戻ると、助手席のドアを開けてくれる。

なんだかお姫様のように丁寧に扱われているようで、そういう心遣いが嬉しい。

旅行の件といい、ヨシキさんから『尽されている』という満足感で、幸せが満ちあふれてくる。

海ほたるの駐車場を出る前に、ヨシキさんはわたしに軽いキスをしてくれた。

東京湾アクアラインの長いトンネルを抜け、首都高速を走っているあいだも、ヨシキさんはわたしの手を握って、指を絡めてくれていた。


じんわりと、気持ちが熱くなってくる。

スキンシップが、こんなに心を満たしてくれるものだなんて。

セックスって、こうして会って話して、手を繋いでいるときから、もうはじまっているのかもしれない。


その夜も、家まで送ってもらう前に、ヨシキさんのマンションに寄った。

部屋に入るとすぐに、わたしたちは抱き合う。


「凛子ちゃんのここ、もうすっかり潤ってて、準備できてるじゃないか」


ワンピースを捲り上げて、ショーツのなかに指を忍ばせてきたヨシキさんは、耳元でいやらしくささやく。


「だって… ヨシキさんったらずっと、手を握っているから」

「そのくらいでこんなに濡れるのかい? 凛子ちゃんはいやらしいな」

「もうっ。そんな風にいわないでくだ… あっ」


有無をいわせぬように、ヨシキさんはショーツのなかで指をうごめかし、いちばん敏感な突起をこすりあげる。


「あっ、あっ。いい、です… ヨシキさん…」


指のリズムにあわせて、思わず声が漏れ、わたしはヨシキさんの首にしがみついた。

そのままの姿勢でベッドに倒れこみ、怒涛のような愛撫に身を任せる。


「凛子ちゃんの脚、すらりと長くて細くて、綺麗だよ」


ワンピースからはだけた脚を大きく開き、愛おしそうにキスをしながら、ヨシキさんの唇は少しずつ、秘密の場所へ近づいていく。


「きっ、汚いです。そんなとこ。洗ってからに… あああっ…」


いずみから溢れる熱い蜜を存分にすすったあと、ヨシキさんは猛った自分のものを、埋め込んでいった。

ヨシキさんから愛撫されるのは気持ちいい。

でも、本当のことを言うと、挿入されるのはそんなによくないし、むしろまだ痛いくらい。

だけど、充実感っていうのだろうか。

ヨシキさんと繋がっているということを、からだで感じられるのが嬉しい。

だからわたしは、いつでもヨシキさんを受け入れたくなる。


つづく

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