守護聖獣5

 そこには闇があった。

 いや、正確には“闇しかなかった”というべきだろう。光あるところに闇は存在するが、闇あるところに必ずしも光は必要ではない。


 暗闇の中に一つの存在が浮かび上がった。鋭く、怒りに燃える存在だ。


 ――か。ああ、わかってる。


 意識が言葉となって流れる。しかし、闇の中には彼しかいない。彼は誰と話しているのだろうか?


 ――そろそろ始める頃合いだろ? わかってる。ああ、大丈夫だとも。


 彼は苛立つ。だが、彼はそれを必死で押さえようとしている。それは、彼の方が立場が下だからなのだろうか? いや、そうではない。少なくとも彼はそう思っていた。


 ――あんたに教わったやり方でいいんだろう? なら、問題ない。計算違いはあるが、想定の範囲内だ。


 彼はにやりと笑う。闇の中で表情は見えない――そもそも、顔があるのかすらわからない――が、彼は確かに笑った。


 ――人選は済んでいる。ああ。思ったよりも優秀な人材が見つかった。これで計画通り――いや、計画以上のスピードでことを進めることができる。


 しばらくの静寂、そして闇が揺らいだ。彼はそこを立ち去ろうとして、何かを思い出したかのようにつぶやいた。


 ――もう少しだ。待ってろよ、


 再び闇が揺らぐ。

 ――

 ――

 ――

 ――

 ――


 すでに意識ここにはない。闇に訪れたのは永遠の静寂。

 そこには闇だけが残された。他には何もない。

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