第30話 伝説級の武器
アンダーゲートの要塞化に着手した魔王軍と並行して別途活動しているスピーディ一行の話に戻そう。
ペガサスとひかりのたまの入手に成功して、対空戦闘や魔法防御対策で効果を期待できそうだ。
しかし、現時点では一方的に不利な状況が改善した程度で、まだ人族が優位に立てた訳ではない。
特に、四天王や魔王と対峙していくためには、伝説級の武器が必要になるだろう。
いわゆる、聖剣とか神剣と呼ばれるクラスの武器を入手したいところだ。
ちなみに、以前お使いクエスト中にアイテム複製した『
普段使いにしてしまうと、効果がバレてしまう可能性が高いので、
これとは別に魔族に対して戦闘を優位に進めることのできる武器が欲しい。
「ほじゃねー。リーブクラウドの山奥にヤマタノオロチが住み着いとるっちゅう噂を聞いたことあるのう」
どうやら、ヤマタノオロチと呼ばれる8つの頭と尾を持つ大蛇が山奥に住み着いているらしいと、ガーネットから情報をもらう。
ヤマタノオロチは知性を持っていて、無闇な殺生はしないものの毎年生贄を求めて集落まで降りてくることがあるようだ。
生贄を避けるため、過去に何度かヤマタノオロチの討伐を目論んで挑戦したものがいるが、討伐に成功したことはなく五体満足なまま戻った者はいないという噂だ。
過去、ヤマタノオロチに挑戦した勇者や冒険者が使っていた武具等をどこかに隠し持っている可能性が高い。
「なるほど。ヤマタノオロチを退治することで、伝説級の武器を手に入れられるかもしれないのね。まずはリーブクラウドの集落へ向かって、情報収集をしましょう!」
マヤ達スピーディ一行は、リーブクラウドへ向かうこととした。
――――
リーブクラウドの集落に到着したスピーディ一行だが、まずは集落の長と思われる屋敷へと訪問して情報収集を開始する。
まさに、次の子供が生贄になることが予想されている状況なのか、悲痛な状況が見てうかがえる。
「私達には8人の子供がいるのですが、年に一度ヤマタノオロチが生贄を求め
集落まで下りてくるのです。既に7人が生贄となり、最後の一人がいなくなって
しまっては、もはや生計が成り立たないのです…どうにかしないと…」
「おいたわしい…。7人はヤマタノオロチに食べられてしまったのですね?」
念のため状況を確認したつもりだったのだが、予想外の答えが返ってきた。
「いえ、生きてはいるのです。しかし、心が折れてしまい、もはやまともな労働につくことができない状態なのです…」
あれ、マヤが知っているヤマタノオロチの伝説とはなんか違うようだ…。
あらためて詳細を聞いてみよう。
「生贄にされた者達は、リーブクラウドの山奥にあるヤマタノオロチの住処に連れていかれ、過酷な労働が課されるのです。不規則な勤務体系で満足な休養が与えられず、一年持たずして心が折れてしまうことが続出しているのです」
確かに、8つも頭や尾があれば、自分自身の手入れは大変だろう。
そして、生贄として食べてしまえば一年と言わず次の生贄が必要になってしまう。
身の回りの世話や、食料確保などのため労働力として使うという考えはある意味知性が感じられる。
しかし、補充可能な労働力と考えて十分な人数を確保せず、劣悪な労働環境を容認しているのはいろいろとまずい。
現在の日本であれば、36協定によって休日勤務などの条件や時間外労働をさせる場合の限度時間などが定められている。
仮に特別な事情があり36協定を逸脱する場合であっても限度時間を定め、
条件を労使間で書面による合意を取ることになっている。
そして、限度時間を超えることのできる回数についても、一年のうち半分を超えないよう定められている。
ここは異世界なので、当然このような取り決めや制約などは存在せず、
ヤマタノオロチによるかなりの搾取が行われているのだろう。
このままの形でヤマタノオロチを生かしておくのは、人族にとってはマイナスで、何とかすべき状況と理解した。
集落の長は、あらためてスピーディ一行に対して協力を要請する。
「この通りお願い申し上げます。どうか、ヤマタノオロチ討伐にご協力いただけないでしょうか?」
このまま、不幸な生贄を増産し続けるのはよくないと考えたスピーディ一行は、二つ返事で依頼を受けることとした。
「わかったわ。討伐の件は私達スピーディに任せて。報酬はヤマタノオロチの住処にある武具など財宝の権利で考えているけど、問題ないかしら?」
「もちろん問題ございません。今の状況で集落から提供できるものはわずかで悩んでいたのですが、ヤマタノオロチが所有するものでしたら遠慮なくお持ちいただいて結構です」
両者の利害が一致したようだ。それでは、ヤマタノオロチの討伐方法を検討することにしよう。
マヤは、集落の長に一つお願いをする。
「そうね。準備したいものがあるのだけれど…協力をお願いできるかしら?」
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