第37話 中間テスト2
翌日、朝のホームルームにて…。
「それじゃあ、昨日のテストを全部返すぞー」
その言葉にクラス中がざわつき出す。
担任の大井先生によるテスト返却が始まる。
この学校はとにかくテストの返却が早い。
普通なら各科目の次の授業で返却するのだろうが、この学校ではテスト翌日のホームルームで全科目のテストが返却されるらしい。
「順番に呼んで行くから取りに来い!――朝岡!――飯田――」
先生により次々と名前が呼ばれていき、テストが返却されていく。
「マジかよ!まさかの英語70点越えだ!」
「嘘…。私社会自信あったのに…」
そして、返却されるテストに各々一喜一憂している。
「――習志野――」
そして、習志野が呼ばれ、緊張した様子でテストを受け取りに行く。
習志野は自分の席まで戻ると、そっとテストを見る。
「!!」
――習志野がフリーズした…。
全ての点数を見た習志野はその現実に一瞬固まり…そして、次の瞬間一気に顔が真っ青になっていた。
(やっぱり良くなかったか…。あわよくばと思ってたが、そう簡単にはいかなかったか…?)
「氷室――」
俺がそんなことを考えていると遂に自分の名前が呼ばれた。
まっすぐ先生の下へ行き、テストを受け取る。
「今回もまぁまぁだったな」
先生は不敵な笑顔でテストを手渡す。――笑顔は怖いが、まぁ褒められて光栄と思っておこう…。
自分の席に戻るとそっと自分の点数を覗く。
ある程度できたと思っていても、やはり結果を見る時はドキドキする。
「――まぁ、これなら問題ないな」
思っていたのとほぼ変わらない点数が目の前に広がり、一先ず胸を撫で下ろす。
「結果が悪かった奴は…覚悟しとけよ?――まぁ、四半期が終わるまでにはあと一カ月残ってるから、自分が危険だと思う連中はせいぜい残りの時間であがけ。―――ホームルームは以上だ」
先生はそんな脅しのようで本気の言葉を残してさっさと教室を出て行ってしまった。
そんな先生の言葉の後、教室はどこかどんよりとした空気に包まれる。
周りを見渡すと、中には泣いている生徒もチラホラ散見される。
――そう。この学校において、中間テストとはそれだけ大きな出来事だったのだ…。特に現在クラス下位の生徒達にとっては…。
そして、それは現在クラストップの俺にとっても言えることである…。
「やぁ、氷室君。結果はどうだい?」
声のする方に目をやると、東海と浮島がいた。
東海の表情を見る限り、結果は上々のようだ。
「別に今言わなくてもすぐに分かるだろ?」
「…まぁ、そうだね。――尤も、既に結果は見えてるみたいだけどね」
東海はそう言って、自分の席で俯いている習志野に目を向ける。
「そう思いたいならそう思えばいいんじゃねぇの?」
「フン、まぁいいさ。――勝負は今日の放課後。忘れるなよ」
東海は鋭い目付きでそう言い残すと、浮島と一緒に去っていった。
「たっくん…」
すると入れ替わるように暗い表情の習志野が現れる。
そして、俺は習志野が握っていた彼女のテストを手に取り、点数を確認する。
「…なるほど」
――微妙だな…。正直勝率は五分五分ってところか……。
俺はテストを見て、冷静にそんなことを考える。
そして、習志野に目を向けると、彼女の頭をクシャっと撫で、
「お前は十分よくやってくれた。あとは俺に任せろ」
「たっくん…」
「ここからは俺の領分だ」
俺は敢えて自信満々にニヤリと笑って見せた。
「はい。お願いします!」
その表情を見て安心してくれたのか、習志野は少しほっとした表情で微笑んだ。
俺は彼女の頬笑みを胸に刻み、覚悟を決めた。
(習志野は十分やってくれた。――あとは俺次第だ…!)
そして、俺は一人呟く。
「――さぁ、駆け引きの時間だ…!!」
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