第69話 おっさ(略 ですが疑問が次から次へとわいてきました
俺は放心していた。普通にやったら勝てるとは到底思えないっていうのはああいうのいうんだろう。最悪クリスもアランも(ノーライフロードはまぁ死なねえだろうけど)喪う事になりかねんかった。速さはそこまでに感じなかったが、防御面が絶望的すぎる。しかも下手に近づくとノーライフロードのように真っ二つだ。
しかし……距離をとっていたせいか、攻撃してくることはあまりなかったな。原理面も気になる。空間をゆがめるなんてのは、巨大な重力が必要になる。しかしあのロリ巨乳がブラックホールのような潮汐力を持っているとも思えない。どういうからくりだ?
クリスも茫然としている。無理もない、あんな怪物を相手に生きているだけで丸儲けだ。アランが全身をしきりと確認しているのは手足が飛んでないか気にしているんだろうな。たしかに人間の手足生えないからなぁ普通。
「みんな、生きてたな」
「えっと、なんていうか……勝てる気がしませんでした……」
そりゃな。人間は空間とか自在に操れる訳ではないし、そういう超自然存在相手に勝てるとは到底思えなくて普通だろ。問題はここにはほぼ人類最強が二人もいて、しかも勝てる気が全くしないってところだ。
「魔王のがよほどマシだろ、なんなんだあいつは!」
『全くだな。両断されたのが私でよかったぞ』
アランもノーライフロードも心が折れている。ノーライフロードは物理的に真っ二つだったからなぁ……折れるわそりゃ。折れちゃダメだ折れちゃダメだ折れちゃダメだ。
「みんな悪い。心が折れているところ申し訳ないが、これからどうする」
「どうするって……」
うん、どうしようもないわ。と言って終わりにしたらそこで試合終了なんだよな。あと、俺には気になることがあった。
「いくつか気になることがある。まず、あのロリ巨乳が言ってた、ドラゴンってどういうことだ?」
『我では無いのだな……我はトカゲ呼ばわりされた……トカゲて……』
心だけが折れて地面に丸を描き始めたドラゴンはともかく、勇者のことをドラゴンとか言っていたわけだ。
「しかも覚醒だとかなんとか言っていたな。これもどういうことだ?そもそもそんな思わせぶりなことをいう意味は?」
「……ハカセ、俺の頭が悪いのか全く理解できん」
「安心しろアラン、俺も全く理解できていない。あとはあいつ、空間を操作するなら遠隔攻撃とか得意かと思ったんだが、何にもしてこなかったろ?」
「あっ、そういえばそうですね。でもなんで……」
意味がわからなすぎる。あっさりと俺たちを両断出来るはずのアポカリプスは、ちょっと俺たちと
「それから謎の声だ。アレはなんなんだ?アイオーンか?」
『ヒラガ、アイオーンが人間の言葉で話すってどういうことだ?』
「それだノーライフロード。おかしいんだ。四騎士もそうだが、アポカリプスも、いや、アイオーンすらホンモノってわけじゃないってことか?」
ホンモノでないとしたってだ、ハンパない桁違いの戦闘力には違いないので。戦闘力の根源をどうにかできないと勝てると思えない。月に大穴開けるような怪物だぞ!?
「ヤツのDNAとか入手できたらよかったんだが、残念なことにアポカリプスは凍結されたものがなかった」
「対策も……できないってことか」
「あぁ。だが、そもそも論としてな。誰かがアポカリプスも作ったんだとするだろ?」
「えっと、それは四騎士と同じですか?」
そう。怪物を山ほど作ってる帝国の反乱分子の連中、それこそが鍵なのではないか。
「あぁ。そういえばそういう怪物作ってきた反乱分子は今どうなってるんだ?全然話聞かないが」
「ある時を境に急に目立たなくなったな」
まさか反乱分子、アポカリプスあたり作ったはいいが制御しきれなかったとか?それで飼い犬に手を噛まれたか?
『アポカリプスをどうこうできるとしたら、勇者の覚醒?とかいうヤツなのでは?頼むクリス、目覚めてくれ!!』
「えっ、えっ?そんなこと急に言われても……」
ノーライフロードに肩を掴まれ、無茶振りされてクリスが手と首を横に振りまくってる。無茶振りすんなよ。
「ふむ、そういえば聞いたことがある」
『知っているのかアラン』
「勇者の覚醒には、愛する者の死が必要になると」
「なんだそれは。嫌すぎるだろ」
ノーライフロードがアランの発言にアゴをずらしている。聖剣も変な色に光っている。彼らでなくても、そんなので覚醒とかナメてんのかと言いたくはなるな。
「えっと、でもそれだとわたし覚醒できませんよね?そんな相手いないし」
『とりあえずクリスの場合、ヒラガ殺してみたらどうだろう。安心しろ、アンデッドにはするから』
おいノーライフロードいい加減にしろよ、お前俺の命軽く扱いすぎるなよ。
「えっと……なんかそれ覚醒できなかったらヒロシ無駄死にですし、覚醒できてもなんだか微妙に認めたくないというか」
『確かに従業員以上恋人未満ではそんなもんだな』
なんでそれで微妙に顔赤くしてんだよクリス。にしてもお前らなぁ、人の命をなんだと思ってんだよ。そんな実験に使われたくないぞ流石に。どうせ命使うなら自分で実験させろ。
「にしてもアラン、なんだよその微妙にイヤな設定は。そんなんで俺殺されたくないぞ」
「俺に言われても困る。教会の勇者教育で宗主たちに聞いたんだ」
「勇者教育……こうなったらアラン、クリス。教会の連中に色々と吐かせるしかねぇな。俺死にたくないぞ、そんな変な理屈で」
「えっと、とすると教会に向かいますか?」
「行くっきゃないだろ!アイオーン始末する前に味方に殺されそうとか洒落になってねぇからな!」
『我も行くぞ!ドラゴンなのにトカゲでないとかどういうことだ!!』
アイデンティティを傷つけられているドラゴンが、気の代わりに火を吐いている。
『私も行くのか……?』
「お前は待ってたらいいと思うさすがに。教会にターンアンデッドされても戦力足らなくなるし」
ほんとこの戦い終わるまで、仲間同士で潰し合いはやめてほしい。どう考えても怪物相手なのに、仲間減らしてどうする。ひとまずまだもがいている蒼騎士をビニールで包んで、俺たちはドラゴンの背に乗ることにした。目指すは王国の教会だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます