第41話 おっさ(略 ですが天使インザスカイウィズダイヤモンドです
ドラゴンの背に乗り、俺たちは教会を目指す。宗主が何を考えてるのかわからんが、いや宗主が何に乗っ取られてるかわからんが、この分だと死闘待った無しである。
魔王は秒殺だった(というよりイベント戦闘だよなあれ)が、天使を敵に回すほうが戦いとしてはハードかもしれない。光速の攻撃とか言ってんだけど、光速ってことは多分アレだろうアレ。天使自体が光速で動くってわけじゃなかろう。ドラゴンの最高速でたどり着いた教会の前には、とんでもない光景が広がっていた。天使も教会の騎士も傷つき横たわっているじゃないか。戦場になっとるやんけおい。
「おう、大丈夫かお前ら」
「……誰かと思ったら……」
いつぞやの兵士もいるではないか。ポーション渡しながら話を聞くことにする。
「何があったんだよこの惨状」
「……突然教会の大天使様6名がご乱心され、反旗を翻して天使様や我々を追い出されたのです」
なんでだよ。行動も意味不明すぎて気持ち悪いな。
「追い出して何をしようとしてんだ?」
「申し訳ありません。そこまでは……」
別の天使が呻き声を上げている。こいつにもポーションを渡してやりながら話しかける。
「それにしても大天使ってそんなに強いのか」
「あぁ。天使の中でも最も強い存在だとされている」
「……アイオーンとやらは関係ないのか?」
天使の顔色が青くなる。
「教えてくれ、アイオーンが復活したらどうなるんだ」
「……この世の終わりだ。アイオーンが目指しているのは自らの手での世界構築、そしてその前の破壊」
実質それ魔王やんけ。使うか?使うしかないのか?核を?
「やっぱり使うしかないな」
『使うな!!核だろ!使うな!』
「やめろぉ!!」
ノーライフロードとマックスウェルにゼロカウントで突っ込まれた。確かに考えなしに核を使うのはどうかと思うが、かといって放置してたら世界滅ぶ相手に使わないのもどうなんだよ。
「わかった、今日のところは勘弁してやろう」
「お前が勘弁してほしい」
「核を使わないとなると倒しきるのは難しいかもしれないぞ」
『倒す気か……それより早くクリスたちを助けろよ』
そうだった、そっちの方が先だった。思わず目的を忘れるところだったではないか。しかし、大天使たちを殺さずなんとか洗脳から解放するというのは中々にホネだぞ。
「そうだな、そのためには……俺に考えがある」
『聞こう』
「……大天使様たちを助けられるなら、不倶戴天の間柄のこいつやヒラガとも組まざるを得んな」
「本気かマックスウェル!?」
教会の兵士がギョッとした表情でこちらを見つめる。天使たちも愕然としているな。気持ちはわかる。
「俺の考えを聞かせる。他にいい案があるなら教えてくれ」
俺は考えを天使たちや教会の兵士、王国の部隊に話す。天使の一人が何か恐ろしいものを見る風に俺を見ながら聞いてくる。
「……本気か?いや、敢えて聞かせろ。正気か」
「そのくらいの覚悟がないと取り返せない」
「……わかった。もしうまくいかないなら、そのまま教会ごと封じ込めをしろと」
「おう。マックスウェルには悪いが天使様は取り返せないかもしれなくなるぞ、その時はな」
マックスウェルは無言で頷く。覚悟は決まったようだな。
「ノーライフロード、抜かりはないな」
『連絡はきっちりしたぞ。そちらこそミスるなよ』
「よっしゃ行くぞぉ!」
「「「『おおおぉぉぉ!!!』」」」
俺たちは教会の中に突入し、俺だけが大広間を駆け抜け、大天使たちがいる部屋のドアを開けた。
「……妙な格好をしたふとましい下賎な人間が、我等に何用だ?」
「てめぇに用はねぇ三下の寄生虫ども!大人しく大天使たちから出て行け!」
「……知っている?……一体の人間……?危険度は高くはない」
「だが、それを知るものであれば排除あるのみ」
想定通り一気に天使の「眼」が数百は開いた。生体レーザー発振器か!高出力なら人間程度余裕だろうな!想定通りといえばだ、言ってやりたいことが1つある。
「寄生虫ども。次のお前らのセリフを一度だけ予測してやろう」
「なんだと?」
「関係ない。一気に仕留めろ」
六体の天使がレーザーを発射しようとする。俺は叫ぶようにそのセリフをいう。
「次のお前らのセリフは、『やったか!?』だ!」
レーザーが発射される。その瞬間、大量の煙が発生した。爆発でも起きたかのようである。
「やったか!?」
「……言ったな」
煙の正体は、水蒸気である。マントの下の水袋が数個吹き飛んだ。大量の湯気が爆煙のように見えたことだろう。あっぶね、こんなもん直撃したら死ぬわ。むっちゃ蒸し暑くなったわ。
「なん……だとぉ!?」
「バカな!?脆弱な人間ごときが何故我々の攻撃を!?」
そういうとこだぞ、と思いながらマントを脱ぎ捨てた俺は背を向けて扉に向かって走っていく。大天使たちも飛びながら俺を追いかけて大広間に突入してくる。六体が大広間に入った瞬間、俺は手に持っていたそいつを天使たちに投げつけた。
「喰らえっ!スタン・グレネードだっ!」
光速の攻撃を使えるのはてめぇらだけじゃねぇぞ大天使(の中の寄生虫)!閃光と轟音で目がくらみ耳を抑える大天使たち。だが、それだけでは事は済まない。スタン・グレネードの閃光と爆音を合図に、眼と耳を防護していた天使、兵士、王国の兵士たちが大天使に飛びかかって、そして押さえ込みに成功した。簀巻きにした大天使たちを連行する。
「くっ、こんなくだらない手に引っかかるとは……大天使とかいう割には使えん肉体だ……」
「ちげぇよバカ、てめぇらが低脳だからだ寄生虫」
天使の中の寄生虫がなんかほざいてるので、暴言で返す。そうこうしているうちにロメリオ商店から依頼の品が届いた。大きなたるにお湯を張ってある。天使たちをお湯に叩き込み、頭を出させる。
「なっ……何をする気だ?」
「寄生虫を駆除しようと思ってな。寄生虫駆除なら抗生物質の投与をしたいところだが、どうも引っかかるんだ」
「なんだと?」
「そもそもお前らは普通に生物なのか?」
「そうでなければなんだというのだ」
「まあどっちでもいいや。操っている以上、天使たちの神経系は使っているわけだよな。ということでだ」
俺はおもむろに注射器を取りだした。
「安心しろ。滅菌消毒はバッチリだ」
「かけらも安心できないんだが、何をする気だ?」
「各種向精神薬物」
「そういうとこだぞ」
合流したアランが、会うなり挨拶にもほどがある発言をする。聞き流しつつ大天使たちに薬物を投与する。無表情だった大天使たち(の中の寄生虫たち)が恐怖の表情を浮かべた。
「な、何をする貴様あっ!」
「さあ、実験を始めようか」
大天使の頭の静脈にぷすぷすと薬物をぶち込む。色々とこう試さないといけないからな。表情がぐるぐる変わる中で、一体の天使がなにかを吐いた。吐いたものもなんか蠢いている。天使は絶叫しているな。バッドトリップしてしまったようだ。
「うわあああぁぁぁ!!!じゃ、じゃし……来るな!来るなぁ!!」
投与したのはあれだった。リゼルグ酸ジエチルアミド、そうLSDだ。麦角アルカロイドをふざけて抽出してたのが役に立った。サイケな光景が寄生虫にも効果があったようだな。蜘蛛にLSDを投与すると、サイケな蜘蛛の巣を張る状態になるという話もある。なら天使各位にLSDを投与しよう、そうしよう。
「や、やめろ!やめろぉ!」
「何考えてんだこいつ!」
寄生虫にガタガタ言われる筋合いはねぇよ。さっさと出て行けやクソ寄生虫どもが。次々と注射をしていくうちに、絶叫が樽の中から上がる。天使を出した後樽の中に捕まえた寄生虫どもに電極をつける。電流を流して寄生虫を悶絶させる。死ねばいいのに。邪神?だかなんだか言っているようにも思えるが気のせいだろ。思ったよりあっさり解決できそうだ。
「さてと、あとはクリスと宗主だな」
「ちょ……ちょっと何やってるんですか?」
天使レミリアがマックスウェルに助けられながらこちらに来るなり突っ込んできた。あなたは休んでなさい。
「見ての通りLSDを投与して寄生虫を追い出しているところだが」
「マックス、今ならあなたの気持ちがよくわかります。もうやだこの人ぉ!」
叫ぶなりレミリアは体育座りで顔を隠してしまい、マックスウェルはほとほと疲れた顔をしている。色んなことがあったから仕方がないな。だが、これからが本番だ。待ってろアイオーン。そしてクリス。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます