第30話
「技術指導?」 聞き返すと、ライは歩きながらこちらに視線を向けた。
「俺は――さっきの飛行機に乗ってここに来た。それはだいたい想像がついてるだろう」
「ああ」
「生き延びたのは俺だけだった。三ヶ月ほどをあの野営地で過ごして――過ごしながら天体の運行を調べて、
「調べてみてわかったが、この世界に飛ばされてきたのは俺たちの飛行機だけじゃなかった。アメリカ軍兵士四人の乗った
「共通点は、いずれもなんらかの乗り物に乗ったまま移動してきたことだ――おまえたちのバスもそうだったが、ほとんどの場合はそのせいで木にぶつかって重傷を負い、それが原因で死んでた」
「あんたはどうして生き延びた?」
「偶然の――偶然と必然が混じりあった結果だな。偶然は俺があの機体の前部、へし折れた部分の一番後ろの席にいたこと――そのおかげで、さらに後ろからはずれた座席ごと押し寄せてきた乗客に押し潰されずに済んだ」
通常の胴体着陸なら、後部から押し寄せてきた座席に巻き込まれないから最後列がいいんだがな――そう続けるライに、康太郎はこう尋ね返した。
「必然は?」
「うちの親父が教えてくれたことを、実行したからだ――胴体着陸を試みる状況で内臓を守る方法、頭を守る方法、脚を守る方法。実行したから俺だけが生き延びた」 一応ほかの奴らにも教えたが、彼らが実行する時間は無かったがな――ライはそう続けてくる。
「あんたの親父さんは、危機管理関係の仕事でも――否、特殊部隊員だって昨日言ってたな」
「ああ――俺が生まれたときにはもう退職してたがな。子供のころからいろいろ訓練を受けてきたよ――うちの家は四百年間続く弓術家でもあるから、憶えることが山ほどあって大変だったが」 なにを思い出しているのか皮肉気に唇をゆがめながらそう返事をして、ライは話題をもとに戻した。
「俺が意識を取り戻したときには、すべて終わったあとだった――俺と同じ機体前部に乗り合わせてた者たちははずれた座席に挟まれて脚を切断されたり、骨を粉砕されて瀕死の状態だった。せめて苦痛を和らげてやれればと思って麻酔薬を探したが、見つかる前に死んだ」 ライは抑えた口調でそう言ってから、少し眼差しを厳しくして先を続けた。
「機体の後部に乗ってた乗客は機体が折れた断面から投げ出されて、地面に叩きつけられてた。ほとんどがその衝撃で死んだあと――生き残りは何人かいたが、助けられる状態じゃなかった。俺にしてやれるのは、とどめを刺してやることだけだった」
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